2017年 09月 10日
※大吟醸 ジャンル:自殺がフィーチャーされる雰囲気もの(?)のノベルゲーム プレイ時間:1時間と少し その他:選択肢なし、一本道 システム:Nscripter 制作年:2017/8/14(?) 容量(圧縮時):44.2MB 道玄斎です、こんばんは。 ずいぶん……そう年単位で更新が滞っていました。 皆様はいかがお過ごしでしたでしょうか? 私は何とか生きています。 そうそう、このブログを始めたのが2007年だったと記憶していますから、本年2017年は丁度10年目に当たります。つまり、私もこのブログを書き始めたころから10歳年をとってしまった、というわけです。 私自身……白髪が出てきた! とかいろんなことがありますが、まぁ、ぼちぼち成長して……いるといいなぁ、なんて思ってますねぇ。 さて、今日は本当に久々のノベルゲームレビュー。 「mint wings」さんの『私は今日ここで死にます。』です。 こんなところでしょうか。 ストーリーですが、作者さんのサイトから引用させて頂きましょう。 人が自殺しようとしているのを目撃した場合、どうするか。
いやぁ、いい作品でした。 引き締まった尺(ただし若干駆け足気味のところはあるかも)、骨太のテーマ、本来の意味での「雰囲気」を活かした作品で、これはお勧め出来る作品です。 テーマは若干重めで、「自死」「自殺」です。 何度も書いている気がしますが、この手の「自殺」をテーマにした作品って、かなり増えたんですよね。本作もちょっと「ドキッ」とするタイトルですよね。 そうした作品を私も何度も取り上げてきましたし、取り上げていないものも含めればかなりの数を読んできました。 また、本作の作者さんも、同様のテーマを作品の中で積み重ねてきているわけですが、行きつくところまで来てしまったな、という感じ。ええ、もちろんいい意味で、です。 本当に自殺を描いた作品には、「なんとなく死んでしまう」、「自死が理想的で、また美しく描かれる」なんてものもあったりして、それはそれで面白いものもあるんですが、「死」あるいはその裏返しの「生」というテーマにそれが真向かいしているのか? と問われれば、また答えにくいものがあるはず。 一方、本作は「雰囲気ゲー」と作者さんご自身がおっしゃってますが、全然そんなことはありません。 いや、正統な「雰囲気ゲー」だと言えると思うのです。 というのも、雰囲気というのは相当描くのは難しいんです。 なんとなくうすぼんやりとした理由で誰かが死んで、音楽もそれっぽい感じにしても、それはどこかうわっ滑りなものになってしまうわけです。 本当の意味で「雰囲気」を出して、それを作品に活かすためには、シッカリとした設定や描写が絶対に必要になってきます。 丁寧でしっかりとした物語があって、はじめて「雰囲気」が出てくる、と私は思っています。 その意味で、本作は比較的オーソドックスな設定(自殺を使用としていた女の子を、どこか無気力な青年が助けて~)を持ってはいますが、丁寧なキャラクター描写、舞台やエピソードの積み上げによって、結果暖かく、優しい雰囲気が十分に出ていました。 個人的にとっても惹かれたのが、主人公京介のモノローグやそれと同化する形での地の文。 いわゆる「少し冷めた感じの青年」ではあるんですが、そのモノローグ(何か大事なことを言いかけるような、そういうモノローグ)によって、彼の心にも何かわだかまりや、葛藤があること、上手に表現されていました。 物語前半部分では、「死」にある種のあこがれを持つヒロイン由香が描かれるのですが、そのリアリティを垣間見て、彼女の想いもまた変わります。 「死を単純に美化」するのではなく、深く死を見つめていった時に感じる怖さ、その怖さによって逆に触発される「生」への想い。この辺りの描写は物凄くよかったです。 また、本作屈指の名シーンは、今挙げたシーンもそうなんですが、年上であるはずの京介が年下のヒロイン由香に泣きつく……っていうと語弊があるか……。つまり、誰にも言えずに抱え込んでいた想いを吐露していくシーン。 これはもう、本当にいいシーンなんですよ。 そういえば、本作はサンドウィッチ的な構造もとっています。 エピローグで分かるんですが、こういうサンドウィッチ構造って私好きなんですよね。物語に厚みが出ますからね。 手前みそで恐縮なんですが、私もちょいと関わった『Ghost Write』という作品にも、年下の女の子の胸で泣いたり、実はサンドウィッチ構造だった、なんて仕掛けも出てきます(ただし、クオリティは本作のほうが全然上だわ……)。 閑話休題。 死をただただ美化するのではなく、それをしっかりと見つめること。そして生へ転換していくこと。 それが無理なく、無駄なく描かれていたというのが本作の最大のグッドポイントでしょうね。ね? 私も10年経って、ちょっと成長したでしょう? 尺はおおよそ1時間くらい。 スッキリと読めるのに、深みがある。とっても素晴らしい作品です。ぜひぜひ、このページをさっさと閉じて作品をDLしてプレイすることをお勧めします! それでは、また。
by s-kuzumi
| 2017-09-10 20:42
| サウンドノベル
|
Comments(4)
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西日本
at 2017-09-17 19:11
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御無沙汰しています。
更新はどうしたのだろう…と心配していた西日本です。 安心のクオリティの解説文と「白髪」という単語を拝見して、 まさに「実家に帰って親戚と談笑している様な安心感」をうけてしまいました(笑)。 フリゲレビューを謳い文句としている「正当派」、そして十年という長い単位で実績を積まれたサイトも、 最近では珍しい存在となりつつあります…。 だからこそ、道玄斎さんには更にカミソリの様に鋭いレビューをどんどん掲載していただきたいものです。 締りの無い内容となってしまいましたが、今後とも御壮健でいてくださいね。 それでは、次の記事も楽しみに待っています。
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s-kuzumi at 2017-09-18 16:09
>>西日本さん
ご無沙汰しております。 コメントどうもありがとうございました。 色々私生活での変化もあったりで、ゲーム……もそうですし、このブログに手をかける時間がないまま、時が流れてしまったようです。 ただ、「辞めます!」とは一言も言っていないので、こうやってしれっと、戻ってこれるのはよかったですw また、更新がない日々が続いたり、心のよゆうがない時なんかも出てきたりするんでしょうけれども、ま、マイペースに書きたい時に書く、ことが出来ればいいな、と思っています。
初めまして。嘘です。てへぺろ。
お元気ですか。私は、ノベルゲームはやってませんが、それなりに元気です。この作品は、プレイ時間も長くないようですし、ちょっとやってみたいですね。 ちなみに今、久々に自作「ゆめいろの空へ」を読んでいました。我ながらこれは、燃え尽きるまで書いた作品で、よくできていたなあと自画自賛しています(笑)。 機会があれば、またお会いしたいものですね。
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s-kuzumi at 2017-09-24 15:16
>>NaGISAさん
てへぺろ、なんて使う人だったかなぁ?w 私もそれなりに元気ですw ここ数年やたら忙しかったりしたのがひと段落ついたので、ぼちぼちゲームをプレイして……という感じですね。 「辞める!」とは言ってないので、いつでも復帰できるという予防線を張っておいてよかったな、と思ってますw 是非、また東京にでもおいでくださいまし。 また飲みましょう(私は飲めませんがw)。 |
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