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2019年 12月 15日

フリーノベルゲームレビュー 番外編 『虹のくじら』

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道玄斎です、こんばんは。
何となく、「ノベルゲームをプレイしたいなぁ」と思ったので、今日は久しぶりに更新を。
プレイ時間は15分程度でしたので、例によって番外編で。
というわけで、今回は「晴れ時々グラタン」さんの『虹のくじら』です。


前回レビューをしたのが『マーシフルガール』だったと記憶しているのですが、そこから約一年くらい経ったのかな。
本当にノベルゲームのプレイ頻度が落ち、いはんやレビューをや、という状況ですが、今日は久しぶりのノベルゲームにふさわしい作品を選べたのではないか、と思っています。


「晴れ時々グラタン」さんの作品は、過去にも何度も取り上げたことがあります。
ちょっと目に力のあるイラストを描かれる方で、クールで芯の強い女性が主人公、というのが基本路線という印象ですね。


本作もまた、その例にもれず、クールな「小杉さん」が視点人物として登場しています。
主要人物としては小杉さんの他に、不思議ちゃん的な属性を持った「佐々木さん」がいる、という「私と彼女型」の作品です。


こうした「私とあなた」のような、一対一の人間関係やそれに付随する物語を描く作品というのは、過去を遡ってみても、コンテストのようなレギュレーションのある作品に多いのですが、本作も「ティラノゲームフェス2016」に出品されたもののようです。
といっても、何かレギュレーションがあるコンテストではないみたいなんですけれどもね。


さて、肝心の中身ですが、心の中では「どこかへ逃げ出したい」と思っているクールな小杉さんと、「虹のくじら」なる謎のワードを口にし、小杉さんにまとわりついてくる佐々木さんの物語、と簡単にまとめることは出来ましょう。
ところで「どこかへ逃げ出したい」と、そういう気分になることってありますよね。特に学生時代にはそうした思いを抱くことも多いでしょう。青春を描くような作品にはよく取り上げられるテーマとも言えます。


それはともかく問題は佐々木さんなんです。
不思議ちゃん……と言ってしまうと何か大切なエッセンスが抜けてしまうような気もしますが、分かりやすさを優先してそう呼びましょう。
で、佐々木さんは、そういう不思議な言動で周囲、というかクラス全体に迷惑をかけ、疎まれている存在なんです。


けれども、佐々木さんが本当に「迷惑行為」をしているのかどうか、はかなり怪しいのです。
謎の鼻歌を歌う。プリントにちょっと幼稚な(?)落書きをする……といったことは作中でも描かれますが、それってそんなに迷惑なことなのでしょうか?
クラスメイトが佐々木さんに浴びせる罵声やいじめに、本当に根拠はあるのでしょうか?


私は、この辺りのことが凄くプレイしていて気になってしまいました。
また、それは作中後半で小杉さんが感じたものと通じているんじゃないかと思うのです。


これは「学校」という空間だから起こることではなく、大人になっても、会社などの組織に入っても起こることです。
「変わっているから責めていい」、「変なヤツだからいじめてもいい」という空気感は、実はどこにいってもそれなりに存在しています。
そうしたところに、「いや、なんか変だぞ」と思えるかどうか。


実は私は、ノベルゲームの制作者や受け手(プレイヤー)ってそういうところに問題意識を持てるんじゃないかと思っているんです。
でなければ、こうした作品は出てきませんからね(本作に限らず、そうした造形のキャラクターやそれ故に疎まれるキャラクターを見たことがありますでしょう?)。
そうした意味でちょっと考えさせられる作品でもありました。


さて、佐々木さんがこだわっていて、「自由にしてくれる」という「虹のくじら」を見て、彼女が自由になれたのかどうか。
あるいは小杉さんは? そうした部分はふわりとはぐらかされ作品は少し切ない雰囲気でエンドを迎えます。
それは、「最後はどうだったのか、それはプレイヤーの受け取り方次第だよ」ということなんですが、一本の短編としてキッチリとまとまっていると思います。


「虹のくじら」を軸にした「雰囲気」を味わう系統の作品ですが、土台がしっかりとしているので単なる「雰囲気ゲー」になっていないのはさすがです。
「これ以上説明を省いたら分からなくなる」というギリギリまで、説明を削ぎ落しつつも、必要なことは作中で上手く表現されており、それゆえのまとまりだと言ってよいかと思います。


久しぶりのノベルゲームでした。
なんか、こういう作品をプレイするとまた、頻度を上げてプレイしたくなりますね。
ともあれ、今日はこのへんで。


それでは、また。



by s-kuzumi | 2019-12-15 20:20 | サウンドノベル


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