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2024年 11月 23日

フリーノベルゲームレビュー 『雨音、時々晴れ模様』

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今日の副題:「彼女の笑顔は雨間の光」

道玄斎です、こんにちは。
今日は、短くシンプルながらも手をかけて作られた作品のご紹介。
というわけで、今回は「creative blossoms/クリエイティブブロッサムズ」さんの『雨音、時々晴れ模様』です。


良かった点
・短い作品ながらもOPやED、ボイスがあったりちょっと豪華な作り

・優しい手触りのイラスト。作品の雰囲気にマッチしている


気になった点
・OPムービーで作品の大枠は分かってしまう

・故に、もう少しストーリーに厚みが欲しい


本作はタイトルを見てもらえば分かるように「雨」が一つのテーマになっています。
また、ヒロインの名前も「雨宮」で、これまた「雨」。
作品の舞台設定も「梅雨」と雨づくしなんですよね。


けど、その雨は、「あぁ、雨が降ってきちゃったなぁ」というような嫌な雨ではなく、どこかノスタルジックで優しい雨なんです。
そうした作品の持つ雰囲気と、やはり優しい手触りを持ったイラストがマッチして、作品世界を作り上げている、と言えましょう。


OPムービーにてストーリーの大枠は分かってしまう、と書きましたが、これは恐らく「敢えて」でしょう。
というのも、プレイしていけば普通に気づくように、本作の仕掛けがプレイヤーに提示されるからです。
ですので、作品の持つ「謎」の部分に関しては、そこまで力点はなく、「それを分からせた上で、どう作品の中身を提示していくのか」というところに主眼があるのでしょう。


ちなみに作中、川崎の夢見ヶ崎動物園のような場所が出てくるのですが、そういう過去と現在を繋ぐ場所がしっかりと設定してあるのはとてもいいですよね。
なんとなーく、回想の中にだけ出てくる場所ではなく、ストーリーの中で機能する場所というか。
ある意味で、それは当たり前といっちゃ当たり前なんですけれども、そういう一つ一つのエピソードの積み上げが物語を作っていくのです。


気になった点としては、作中にはもう一つ「謎」が出てきますが、これは未解消なのです。
神様と思しき存在が出てくるんですけれども、彼女(そう、例によって美しい女性なのです)は何者なのか、は作中では明らかになりません。
いうなれば、超自然的な力によって作品が成り立っている、と言ってもいいわけですが、そこはもう少し何か説明が欲しかったな、と。


恐らく、彼女(神様)は、いわゆる全知全能タイプの神様ではなく、日本的な八百万の神様の一柱で、ローカルな性質や力を持っていると思われるのですが、ヒロインがこの神様にお祈りをしていたと思しき描写もあるので、もう少し、その辺り掘り下げられそうですし、ストーリーに厚みを持たせるために使えるんじゃないかな、と思ったり。


例えば、過去にその神様の祠なりが、例の動物園の中にあって、二人を見守っていたとか。
さらに例えば、その神様が「雨の日に力を発揮するタイプ」で、ヒロイン「雨宮」さんの願いを聞き入れやすくなっている、とか(そもそも雨宮姓って、長野の屋代あたりの神社関係者をルーツに持つ苗字なんですよね。これは脱線かな)。
また、作品の冒頭で主人公は、失恋のショックで雨の中打ちひしがれているわけですけれども、ヒロイン雨宮さんが出てきてからは、失恋については綺麗さっぱり忘れてしまうという。


この辺りのエピソードをもう少し補強してあげると、もっと作品に厚みやまとまりが出てくるような気もします。
そうすると、30分程度の尺を超えてしまうわけですけれども、なんとなくノベルゲームコレクションの作品群を見ていると、30分くらいの作品が多いような気がするんですよね。


これってつまり、30分程度で終わるような作品が求められている、ということなのかもなぁ。
もし、元々が「30分程度の作品で!」ということでの作品だったら、私の書いたことは蛇足になるわけですが……。



短いながらも綺麗にまとまった作品です。
シンプルさ故に物足りなさを感じる人もいるかもしれませんが、雰囲気のある作品だと思います。
是非、雨の日にプレイしてみると、ちょっと優しい気持ちになれるかもしれません。


それでは、また。


by s-kuzumi | 2024-11-23 14:47 | サウンドノベル | Comments(0)
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