人気ブログランキング | 話題のタグを見る

久住女中本舗

kuzumi.exblog.jp
ブログトップ
2007年 07月 09日

『思考の整理学』 外山滋比古著 ちくま文庫

こんばんは、久住です。

今日は『思考の整理学』という本を読みました。
著者の外山さんの本は『異本論』・『古典論』などを過去に読んでいます。
軽妙な語り口と、含蓄深い面白い内容が外山氏の本の一つのウリです。

この『思考の整理学』という本は、もう20年も前の本なのですが、なぜか再版がかかっていて、近所の本屋さんで、ポップつきで紹介されていたので、つい買ってしまいました。

本屋さんの良し悪しは、実は店員さんがてづくりするポップに表れている側面があると思います。
この本のポップのあおり文句は

「もっと昔によめば良かった……」

です。この文句が大きく書いてあり、内容・感想が小文字で書いてあるポップでした。
ポップがある、というのは店員さんがこの本を読んだからであって、「読書好き」な店員さんがいる書店は、やはり本のチョイスや見せ方に一工夫を感じます。
近所の書店は、ごくごく普通の書店なのですが、文庫本のコーナーだけは妙にこだわっていて、のぞくたびに面白そうな本が見つかります。
面白そうな本のナビゲーターが、実はポップなのです。

ただ単に品揃えが良いとかとは違う、書店のあり方がこのポップからみてとれる気がします。
他のコーナーはむしろ品揃えは悪いくらいで、雑誌がメインの本屋さんですが、何故かすみっこの文庫本コーナーは、ポップがたくさんあって、他の書店の品揃えとは一線を画しているのです。こういう書店はいがいと貴重なのかもしれませんね。ぜひ、この文庫コーナーだけは、このままの路線でいって欲しいと思っています。


さて、肝心の本の中身ですが、簡単にいってしまえば「想像的思考の為のハウツー本」みたいな感じですね。
わりとたくさんある「論文の書き方」みたいな感じです。
ただ、あまり「~して、~する」みたいな具体的な作業について、というよりも、心構えやスタンスに関する記述が多い感じです。

何か書こうとする時、テーマは一つだけでなく、三つ程度揃えておいた方が良い、と言った実践的なアドバイスや、アイデアやテーマを人に話す時の注意点、そして「ほめる」ことの効能なんて、話が面白かったです。

大学の教師は、学生が持ってきたアイデアやテーマを頭ごなしに否定せずに、そこからモノになりそうなものを見出して、示唆してあげる事が必要になるわけです。先生に否定されてしまって、せっかく潜在的に良いアイデアを持っていたのに、アイデアが「死んで」しまうケースも多々あるようで、安易にまだアイデアが固まる前に先生や先輩に、内容を話す事を戒めたりしていました。

ただ、実際の大学生・大学院生は、それでも発表の持ち回りや卒業論文など具体的な〆切の存在する中で、活動しているわけですから完全にアイデアが固まってから、話す、というのは実際問題として難しいようです。

あと、先生との相性なんかも大きなポイントとなりますよね。
わたし以外にここで、記事を書いてくれてる人は、某大学の大学院生という肩書きなのですが、絶望的なまでに先生にいじめられていて、どうしようもないそうです。

何か発表の場があって、そこで自分の思い付いたアイデアを元に発表してみる。すると「まだ練り込みが甘いけれども、~の部分は面白い。~を深く掘り下げていってみてはどうか?」というような、親身のアドバイスが先輩方からは貰えるそうです。
先輩といっても、同じ大学院生から、その道で生活をしているプロまで様々な人たちで、概ね厳しくも好意的な意見をもらうそうなのですが、それが担当の先生に見せると一変して「相手にされない」「何もアドバイスや具体的指導がないにも関わらず否定のみされる」というようなことが、日常的におきるそうです。

彼の話だと、彼の担当の先生は指導を行う人間を選別している、とのこと。
つまり同じ学費を払っているのにも関わらず、指導を受けられる学生と、受けられない学生がいるらしいのです。
従順であるか、或いは男であるか女であるか、といった観点から明確な差別が行われているそうで(先生は女性がお好きなので、研究室は彼のハーレムだそうで、数少ない男である知り合いは、邪魔者扱いみたいです)、この話が本当だとしたら本当に嘆かわしいことです。


ともあれ、この『思考の整理学』は、こうした個々の特殊事例にこそ対応はしていませんが、何かアイデアを生み出したい、アイデアを形にしたい、という人は、一度読んでみると面白いかもしれません。
ページ数もそんなに厚くなく、移動時間に気軽に読むことが出来るのでお勧めです。
アイデアを出す、勉強をする、というのは頭の良し悪しというよりも、実は技術的な要素が強い事が良く分かりますし、ちょっとやる気が湧いてくる、そんな本です。

こうしたわたしの読書感想文が、本屋さんでのポップのような効果がもてたら、とても嬉しいですね。

by s-kuzumi | 2007-07-09 22:28 | 読書 一般図書 | Comments(0)
名前
URL
削除用パスワード


<< 「らき☆すた」14話 閲覧記録。      ソフト紹介 「小町文庫」 >>