2007年 07月 20日
今日の副題 「エンターテイメントを越えて」 お勧め指数(五段階評価): 五 俺です。 サウンドノベルのレビュー、第一弾は「すてーじ☆なな」さんの『ナルキッソス2』です。 説明不要の名作ですので、ご存知の方も多いかと思います。 敢えて周辺的な情報から述べさせて貰いますと、先ず声優が豪華です。 後藤邑子さん、能登麻美子さんといった方々が参加されています。 あと、NScripterの使い方が本当に上手いです。 「こういう見せ方があるんだ」と気付かされるくらいに、デザインとして、とても洗練されたインターフェースとなっています。 文章は、イラスト部分の下に、1~2行づつ表示されるのですが、これは好き嫌いが別れる所かもしれませんね。 さて、本題に入ると、この『ナルキッソス2』はエンターテイメントでありながらエンターテイメントを越えている、と言えるのではないでしょうか? サウンドノベルの中には、「演出としての死」を作品に取り込むものが割と存在していると思います。が、安直な死の描写ではなく、「生きる事/死ぬこと」に非常に真剣に取り組んだ作品が、本作なのだと思います。過去・現在・未来の生と死を場面場面で描写していく力は凄いです。 その分、全体的なトーンは暗めで、一気に読むと少し辛いものがありますが。 けど、文章の読みやすさ、音楽のチョイスの確かさ、背景の絶妙な切り替わりが、暗さの中に、一種幻想的な雰囲気を出し、暗さを和らげている感じです。 妙な説教臭さも無く、確かにエンターテイメントであるのです。けれどもそれ以上の何か、が存在しているのです。 前作『ナルキッソス』では、確かに凄い作品だ、と感じさせるものがありました。 ただ、消化不良というか、咀嚼しきれない部分が存在していたのも事実です。それは「つまり何を伝えたいのか?」というのが明確に作品に込められていなかった(あるいは伝わりにくかった)せいだと感じました。 『ナルキッソス』では、この消化不良感も一つのウリで、作品構成の重要な要素となっていたのは事実です。そのつかみ所の無さ、が逆にこの作品の素晴らしい面でもありました。 しかし、『ナルキッソス2』では、ボリュームが増えた為か前作にあった消化不良感は無く、姫子とセツミの関係を丁寧に追っていく事で、より強いメッセージ性が増えたと言えるのではないでしょうか?いや、「じゃあ、何を伝えたかったか説明してよ」って言われても説明出来ないのですが……。 単純な娯楽というのとは違う、その先にある何か。 それがこの作品のキモです。 ちなみに、音楽などの演出も秀逸ですね。 よくぞこのタイミングで、このBGMを!と思わずうなってしまうくらいに、文章と背景と音楽が見事にマッチして世界観を構成しています。 割と、サウンドノベルを沢山プレイしていると、「またこういうシーンでこの曲かい」と思う事が多いのですが、それはやはり、同じフリーの音楽素材を使用している、という事ではなくて、あまりにも文章や場面が類似し過ぎている所に、更にそうした場面でおなじみの音楽が登場してしまう事に起因する問題だと思います。 如何に自分の作品にオリジナリティを出せるか、という問題ですね。 文章や場面にきらりと光るものがあれば、おなじみの音楽でも多分気にならない筈です。 ちょっとべた褒めしすぎて、妙にこの『ナルキッソス2』に肩入れしてしまっているのですが、気になった点が、いくつかあります。 ・セーブの問題 『ナルキッソス2』ではいつでもセーブが可能です。 ただ、ロードを行うと、その章の最初まで戻されてしまうようなのです。 ある章を後半まで読み進め、そこでセーブをしても、ロード時には章の最初まで戻されてしまいます。 ・既読スキップの不備 「セーブの問題」とも絡むのですが、既読スキップが存在していないのは、少々辛いものがあります。ロードした際に章の始めまで戻ってしまった時、既読スキップがあればスムーズに目的の位置まで移動する事が出来ます。非常に惜しい点です。 まぁ、普通に「Ctrl」を使ってスキップをしてもいいのですが、機能として備わっていた方がベターでしょう。 と、敢えて欠点も述べてみましたが、そんな欠点を吹き飛ばす程のインパクトがこの作品にはあります。 少々テーマが重たいので、俺は一気にプレイする事が出来ませんでした。割と小刻みにちょこちょこと。 兎に角、この作品は万人にお勧め出来る作品です。 今までサウンドノベルをプレイした事の無い人にも是非ともお勧めしたい一本です。
by s-kuzumi
| 2007-07-20 03:17
| サウンドノベル
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