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久住女中本舗

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2007年 08月 08日

フリーサウンドノベルレビュー 『ほしのの。』

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今日の副題「ほしのふるばしょで」


お勧め指数(五段階評価):四
ジャンル:田舎での生活と従姉との関係(?)
プレイ時間:一時間半~二時間くらい

※特記事項:フラッシュ作品・全四話




道玄斎です。おはようございます。

今日もまた一本、プレイ致しましたのでレビューをお届けしようかと思います。
今回は、あの『星のない空の下で』や『ごがつのそら。』で有名な、「むきりょくかん」さんの『ほしのの。』です。



良かった点

・文章が良い。特に田舎の描写は都会に住む人からすれば、興味深く、ギャグテキストの文章も嫌味がない。

・しっかりとストーリーが纏まっており、内容も良く練られている。

・一つ一つのエピソードをちゃんと活かしており、基本に忠実な作り。

・各章が四季を意識した作りで、季節感が上手に演出されている。


気になった点

・なんと言っても、フラッシュ作品なので読みにくさがある。

・第一話では、背景は画像だったが、段々と加工写真に変化していった。気にならない人は全く気にならないが、最初は少し戸惑うかもしれない。




さて、先ずストーリーをざっと概観しておきましょう。


両親の死がきっかけで、従姉の住む「星野」の親戚に引き取られる事となった、結城。
従姉の榛名は、そんな結城の「良い姉」になろうと決意し、明るく、姉として結城を引っ張っていく。そんな田舎での生活……。



こんな感じですね。
いいな、と思ったのが結城が死んだ両親の事を思い出したりする場面があるのですが、田舎の生活になじみ始めてからも、時々両親の事を思いだし、沈んでしまうという描写です。
ストーリー全体として、両親の死と田舎へ引き取られる事になった、というのは導入の部分です。が、結城の最初にあった「田舎へのなじめなさ」「榛名を含めた親戚へのうち解けられない」事の理由の一つとして両親との別離があるわけです。
田舎の生活に随分となじんできてからも、時々両親の事を思い出す、というのはやはりリアリティがあります。

割と、こういう両親との別離を導入部分としながらも、ストーリーの中でその別離が忘れ去られてしまっているような作品も多く見受けられるかと思います。
そういう意味で、丁寧な作品作りを象徴する描写となっていますね。
又、田舎になじみ、榛名との距離が縮まるにつれて、両親の事を思い出す事が少なくなってきます。こういう心情の動きをテキストで上手に表現していました。

丁寧な描写が本作の長所の一つだと思います。
第二話は、第一話から二年後の世界です。
第二話では、結城は田舎の生活に大分慣れてしまっていますが、第一話のラストでああいう形で、榛名との交流があったからこそ、二年後の田舎に、そして榛名になじんだ姿が違和感なく受け止められるのです。上手く言えないのですが、空白の時間を描写する力があるんですよね。


脇役達も、なかなか魅せてくれます。
『ごがつのそら。』のヒロイン「みのり」も出てきますし、学級委員長で結城の友人(?)のエキセントリックなw 存在は読者にちょっとした息抜きを与えてくれます。


ただ、「みのり」からの電話が掛かってくるエピソードは、もう少し使用しても良かったのではないでしょうか?
病気になった榛名の身を案じて、電話を掛けてきてくれたみのりですが、「また電話するね」と言っておきつつ、その後電話の描写がありませんでした。
どこかに一つでも、みのりからの電話の場面や描写があった方がいいかもしれません。


そうそう。
携帯電話の使い方が、上手いなと思いました。
壁一枚を隔てて、榛名と結城がチャットメールをする場面です。
榛名は声が出せないし、尚かつ結城と顔を合わせたくない。けれども、結城と繋がっていたい。その思いの結果として、二人は壁一枚を隔ててたわいないチャットを携帯で行います。
ちゃんと「チャットメールをする」必然性がある為に、とても良い場面になっていて印象的です。


何と言っても惜しいのが、フラッシュ作品だという事。
いや、『ごがつのそら。』も元々はフラッシュだったからねぇ……。
文章の読み返しがしづらいのが辛かったです。俺は割と早く文章を送っていってしまうタチなので、読み返しを使う事が屡々あります。
一応、読み返し機能はあるのですが、やはり使いにくい……。


田舎を舞台にして、成長と青春の物語。これはお勧めです。
ちなみに、従姉との恋愛という所は、気にしては駄目ですよw 『源氏物語』にも雲居雁と夕霧という例もありますし(いとこ同士の結婚は外聞が悪いと言われていましたが)、『Kanon』での祐一と名雪の例もありますから……。

多少の読みにくさはありますが、お勧めの作品です。
『ごがつのそら。』が好きな人は、プレイする価値が大です。
恐らく、人気が出れば又、「NScripter」版とかが出るかな??

※8日午前九時半頃、画像サイズの変更。

by s-kuzumi | 2007-08-08 07:07 | サウンドノベル | Comments(0)
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