2007年 08月 11日
今日の副題 「きっと僕は君を照らすよ」 ※大吟醸 ジャンル:恋愛(?) プレイ時間:三十分~四十分くらい その他:選択肢なし、一本道。 システム:NScripter 製作年:2007/7/31 容量(圧縮時):92.4MB 道玄斎です。こんばんは。 今日も又、傑作を引き当ててしまいました。ちょっと自分の好みを反映しつつ滅多に出ない(出さない)評価を五にしてみました。 短編といいつつも、なかなかボリュームのある作品です。 「さくらミント」さんの『月照~ツキノテラス~』です。 いや、傑作です。 短編サウンドノベルの中でも白眉の出来映えです。 短編は、上手に纏める事が出来れば一個の作品としての纏まりが生まれやすい反面、描写が不十分になったり、となかなか難しいジャンルです。だからこそ、余計にこの作品に対する評価を上げてしまいました。 では、いつものように……。 良かった点 ・凝ったBGM、オリジナルテーマ曲。そしてボイス付き(マイのみ) ・細やかな設定が可能。 ・恋愛モノでありながら、非常に新鮮な設定。 ・余情感の演出が巧み 気になった点 ・短編にして100M超(解凍時)の容量。 ・効果音のテキスト(鈴虫の声とか、ネックレスのシャラシャラ音とか)にもう少しこだわりが欲しい。 久々に、思わずうなってしまうような短編でした。 けど、これって短編なのかな?w 少し短めではあるものの、世間一般で通用する普通のサウンドノベルくらいのボリュームはあるような……。 軽くストーリーを。 大手広告代理店に就職するも二年半で、止めさせられた主人公は、無気力なまま生活の為になんとなくニューハーフパブ「シャンティ」にボーイとして勤める事に。 そこで、"女の子"として店で働くマイに出逢い、二人は親しくなっていく……。 こんな感じです。 ヒロインが「ニューハーフパブ」で働く「男性」なんて作品、今まで見たことありません。 マイのイラストや言動がまた可愛くて、思わず萌えてしまう事必定です。 かく言う私は、後半部分でかなりドキドキしながらプレイしてしまうという……。 男性が一個の「女性」となる作品は、フリーではありませんが『処女はお姉さまに恋してる』などが近いかもしれませんね。 とはいへ、本作は飽くまで"女の子"としてニューハーフパブで働くマイがヒロインで、本質は全く異なっています。 しかし、本作がイロモノであるかと言えば、全く違います。 作品自体はそこまで長くないのですが、二人が日々交流している事が記述される為、二人の距離が縮まっていく様子が丁寧に描写されていると感じました。 後半部の余韻の持たせ方というか、余情の出し方は非常に巧みで良かったと思います。 アフターストーリーで流れるオリジナルテーマ曲(ボーカル付き)は、場面とマッチしていて鳥肌が立つほどに作品を演出してくれています。 アフターストーリーで、夢を叶えたマイが作ったと思しきアクセサリーが、主人公の目に触れる機会があるのですが、敢えて「マイが作った」と明記しないあたり、余情感が良く出ています。 ただ、敢えて粗を探すならば、主人公はマイが男である事にあまり抵抗感を示さずに、マイに好意を向けるようになるのが少し気になりました。 勿論、作品中で「男でも女とかは関係無い。マイはマイだ」というようなセリフがあり、フォローがなされているのですが、もう少し男性が男性を愛する事への抵抗感のようなものを、二人の交流の中で少し描写しても良かった気がしています。 又、マイの夢の伏線をもう少し描いた方がより説得力が出たかもしれません。デートシーンが一回だけだったのですが、もう一回くらいどこかでデートなりの場面を入れて、マイの夢への伏線を張っておくと良かったかも。 テキストは読みやすいのですが、効果音の記述が少し気になりました。 多分、もの凄く難しい事なのでしょうが、鈴虫の音を「リーリーリー」で済ましてしまっていたりしたので、そこが気になりましたね。 例えばですよ?例えばですけれども「リィィ……リィィ……リィィ……」とかじゃ駄目でしょうかね? 兎に角、斬新な設定と素直で丁寧な描写は、十分評価に値するものです。 そして、安直に二人が結ばれるのではなく、マイは自分の忘れかけていた夢を追いかけていく、という終わり方も良かったと思います。 兎に角、何だかはっきりとは言えないのですが、じんわりとするものがあって、今もクリアー後に出る「オマケ」のテーマ曲をエンドレスで流して聞いています。 「伝えたい事がわかりにくい」というのを、私は割とマイナスの評価として用いる事が多いのですが、「結局何がいいたいんだ?」というのと、そこはかとなく何かを感じる「もののあはれ」的なものは明かに違います。 本作は勿論後者に属する作品です。 ちょっと、作品と絡めつつぐだぐだと思った事を書いてみましょうか。 作中で登場するニューハーフパブ「シャンティ」ですが、これはフランスのお城から採っているのでしょうかね。パリから車ですぐにある「シャンティ城」というお城があります。 森と川に囲まれたお城は小さいながら、とても素敵なお城です。ちなみに生クリームというかホイップクリームの発祥の地としても有名ですよね。フランス語で生クリームはシャンティといいます。 本作のタイトル「月照」ですが、これは何となく「天照大神」の「天照」を連想させます。 「天照」の方は言わずと知れた「太陽神」ですので、日の光です。 一方「月照」は、その名の通り月の光。 月の淡い光というのは、まさにこの作品のイメージですね。 更に言えば「天照大神」には兄妹神がいまして、「素戔嗚尊」と「月讀命」です。 「素戔嗚尊」は有名ですが、「月讀命」はそんなにメジャーではないかもしれませんね。 さて、問題なのは、「月讀命」は男神なのか女神であるのか分からず、諸説存在しています。 男でありながら女性である、マイの両義性みたいなものを「月照」というタイトルが示唆しているのかな?と思いました。いや、深読みのし過ぎかしら? 割と短めのプレイ時間ですので、是非プレイしてみて下さい。自信を持ってお勧めします。 ヒロインが男、という事で抵抗を感じる人もいるかもしれませんが、是非是非。 きっと、プレイして良かった、と思う事請け合いです。
by s-kuzumi
| 2007-08-11 04:24
| サウンドノベル
|
Comments(2)
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甲二
at 2007-08-13 00:24
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>道玄斎様
初めまして、甲二と申します。 今回は弊サークルの作品月照~ツキノテラス~を取り上げてくださり、ありがとうございました。 なかなかこのようなレヴューサイトさんに取り上げられる事もありませんので、正直感動しております。 ゲームの内容につきまして、評価いただいたことは大変嬉しいです。 お言葉を胸に、製作に取り組んでいこうとおもいます。 それでは失礼します。
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s-kuzumi at 2007-08-13 05:01
>>甲二様
コメント有り難う御座いました。 こちらこそ、拙い乍らもレビューを書くことで、フリーのノベルゲーム愛好家の方や、制作者様のお言葉を頂けるのが、何より嬉しく思っております。 本当に拙いレビューですが、何かのお役に立てれば幸いです。 是非、これからも素晴らしいゲームを制作し続けて下さい。 わざわざコメントを残して頂き、本当に有り難う御座いました。 |
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