2007年 08月 14日
![]() 今日の副題 「在り続ける世界」 お勧め指数(五段階評価):五 ジャンル:夏・少女・成長(?) プレイ時間:三十分程度 道玄斎です、こんばんは。 今回は、今が盛りの夏にぴったりの作品を扱いたいと思います。 彩藤神楽さんの『夏の日のレザナンス』です。 良かった点 ・商業レベルの美麗なイラスト。キャラが瞬きするなどこだわりも。 ・すっきりと纏まったストーリー。 ・独特な物語世界。 気になった点 ・人によっては物足りないラスト。 ・佳澄側からだけでなく、みなもや樹側からの視点があっても良かったかも。 有名な作品ですので、ご存知の方も多いかもしれませんね。 もう5年も前にリリースされた作品ですが、今改めてプレイしてもその魅力は色あせる事はありません。私も久々にプレイしましたが、素直に「凄い作品だなぁ」と感心しました。割と小粒で美味しい作品が、私は好みみたいです。いや、長編も大好きなんですけれどもね。 ストーリーは、 高校一年生の佳澄は、ある日携帯電話を壊してしまう。しかし、壊れた筈の携帯電話から女の子を映したホログラムが出て…… と、私の拙い文章力では、ストーリーの魅力をちっとも紹介出来ないのですが……。 兎に角、主人公佳澄は、携帯電話から出るホログラムで女の子とコンタクト出来る、という「ありえない」状況になるわけです。 そこで、みなも・樹という二人の高校生の女の子と知り合います。佳澄はおっとりしていて、尚かつ美しい樹に恋をするように……。 何て言うのかな。萌え属性の一つとして「百合」を持ち出しているっていう感じじゃないんですよ。初期の『マリみて』が持っていた、女性が感じる女性への淡い憧れみたいな、そういう雰囲気。 この雰囲気は非常に巧みに描写されていると思います。安直な萌えを指向するのではなく、極々自然に少女に訪れる一つの階梯としての、女性への恋。それがこの作品には存在しています。 こういう事を書くと誤解されそうなので、アレなんですが、思春期のある時期って割と多くの人が同性への憧れを持つみたいです。思春期なんて私にはとうに昔の事なんですが、私にも覚えがないわけじゃありません。年上のお兄ちゃん的存在の人が居て、恋とかとは違うけれども、その人に週一回くらいのペースだったのですが、逢うのを楽しみにしていました。 こういう、同性への憧れを描いた、名作小説がありますよね。 福永武彦の『草の花』です。新潮文庫に入っている筈なので(私は福永武彦全集と文庫と二つ持っています)、一度手にとってみては如何でしょう。 百合とは逆に、BLとかの文脈でこの『草の花』は引用されたり、或いは考察の対象になったりするのかしら? ……今、Googleで単純に「草の花」と入力してみたところ、関連検索として「BL 草の花 汐見」が出てきました……。やっぱり知っている人は知っているんですね。 これは、女性にも同じ事が言えるようです。 恋に近い感情で、同性である女性に向ける気持ち。女子校出身者の友達の話を聞くと、たまにそういうエピソードを聞くことが出来ます。 これは人格形成とかそういうステップで生じる自然な感情なんでしょうか。 さて、本作では、どうも佳澄とみなも・樹が住む世界はパラレルワールドのようです。 が、西暦・年月・総理大臣の名前まで符合しているんですよね。だけれども時間が七分ずれていたり、県の数が違ったり、向こうの世界には四季がなかったりと差異が生じています。 結局、「こちら」に対して「むこう」がどのような世界なのか、決定的な結論は出てきません。 佳澄とみなも達は出逢うことなく物語は終わってしまうのですが、だからこそ、この物語が素晴らしいのだと感じます。 一人の少女の成長、という物語の大枠を考えてみると、先程つらつらと書いたように、同性への憧れを経て、少女は大人の女性になるわけで、逆に言うと女性同士でそこで結ばれてしまう事は、成長への停滞なのかもしれません。 いや、同性愛者を否定するわけじゃないですよ?そこは誤解無きよう。。 同性への想いを経て、また一つ成長していく。 そんな佳澄の一夏の成長記録。そこが本作のメインテーマだと思います。 短時間でプレイ出来ますので、是非是非美麗なイラストを楽しみつつ、尚かつ青春について思いを馳せながらプレイしてみて貰いたい作品です。 青春時代なんてものが過去になってしまった人にも、そして今まさに青春まっさかりの人にもお勧めです。特に女性に勧めたい作品ですね。 ※追記。クリア後に出てくる番号をつかって、ほにゃららすると、オマケが見れます。
by s-kuzumi
| 2007-08-14 20:57
| サウンドノベル
|
Comments(0)
|
アバウト
カレンダー
メモ帳。らしきもの。
■レビューリストを作りました。随時更新予定です。こちらからどうぞ。
■ノベルゲームのコミュニティと素材ポータル始めました 制作者の方とプレイヤーを繋ぐような、そんなコミュニティを作りました。 こちらからどうぞ。 そして、ゲーム制作に利用出来る素材ポータルサイトも作りました。 こちらからどうぞ。 どちらも、是非ご覧になってみて下さい。そして、ご参加/ご利用頂ければ幸いで御座います。 フリーのノベルゲーム/サウンドノベルをレビューをやっております。たまに私のどうでもいい日々之記録が入る事がありますが、ご了承下さいませ。 ・“引用”としてスクリーンショットやストーリーの概略などの文章を使わせていただいております。問題が御座いましたらご連絡下さい。対処いたします。 連絡先はkazenitsurenaki あっとまーく gmail.com です。 ・レビューは「甘口~中辛」くらいです。 ・評価は完全に私個人の主観に基づいています。評価は「大吟醸」「吟醸」「無印(=純米)」の三段階となっております。参考までに。 で、実は、 こちらが本館です。ブログは別館的な位置づけなのですが、何故かこちらがメインになってしまっています……。バナーなんかもあるので、リンクを張って下さる方はご利用下さいませ。 リンクに関しては、お好きにやっちゃって下さい。許可なんかは一切要りませんので。 本館の方では、謎の音楽制作などをやっております。こっそり更新している事もありますので、たまに見てやって下さると嬉しいです。 カテゴリ
以前の記事
2025年 02月 2024年 12月 2024年 11月 2024年 05月 2023年 07月 2020年 08月 2020年 05月 2020年 01月 2019年 12月 2018年 09月 2017年 09月 2016年 12月 2016年 06月 2016年 04月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 10月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 検索
タグ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||