2007年 09月 10日
今日の副題 「天正十六年のお触れ」 お勧め指数(五段階評価):四 ジャンル:九十九神的伝奇アクション(?) プレイ時間:二時間半~ 特記事項:ヒロイン二人。二ルート。 道玄斎です、こんにちは。 伝奇っぽい作品は嫌いじゃないのですが、何故か今まであまり取り上げる機会がありませんでした。そういえば、「箸休めvol.6」で紹介した、連作モノは三つとも伝奇でしたが。 伝奇作品は、割と好き嫌いがあるかと思います。 又、伝奇というジャンルの区分けの難しさもあるのかなと。ミステリー要素の強い伝奇もありますし、アクション要素の強い伝奇(これがオーソドックス?)やラブコメ指向の強い伝奇……、様々な作品があるかと思います。 今日取り上げる作品が、実は伝奇であるのかないのか、判断は付きにくい所なのですが、一応伝奇としておきます。 というわけで、本日は(実は昨日の夜中にプレイを完了している)「紫苑亭」さんの『ずんばらり』です。 良質な伝奇作品でした。他の伝奇モノには無い「何か」が確かにある感じです。 面白くて優れた伝奇作品がある事は承知の上で、それでもやはり、妙に昔の週刊少年ジャンプ的な無茶な設定が多い作品もあるわけで(例えば、暗殺訓練を受けて闇の世界で生きてきた女子中学生とかw)。 本作にも、そうした要素は少なからずあるのですが、他の伝奇作品が持っていない手触りがあって、非常に新鮮だと思うと同時に、素直に面白くてプレイを楽しむ事が出来ました。 良かった点 こんな感じです。 ストーリーは、サイトの方で確認してみて下さい。 結論から言うと、凄く楽しめた作品でした。 伝奇作品の持つワクワク感に加えて、作品の持つ「手作り感」、結構熱い主人公の行動とか盛りだくさんの内容です。 抑も、私自身が日本刀愛好者ですので、刀が物語の重要な核である、という時点で楽しめる事が約束されていたようなものでして……。 全体的な手触りは「コテコテな伝奇」ではなくて、もっとあっさりとしていて気持ちよくプレイ出来る印象です。かといって内容が薄いとかそういう事もなく、しっかりとした内容を持っていたと思います。 全部で二つのルートがあるのですが、私は「あかりルート」の方が好みですね。 物語の核である妖刀「ずんばらり」の持つ因縁・存在理由みたいなものがしっかり描かれていましたし、主人公刀矢の戦う理由が、もう一方の「静夜ルート」より明確で熱血展開を存分に堪能出来ます。 「静夜ルート」の方では、その代わりに戦闘の描写が「あかりルート」よりも多い印象です。ちょっと凝った演出なんかも見ることが出来てこれはこれで評価すべき所ですね。 ただ、後半から戦闘シーンばっかりになってしまうので、もう少しホッと一息付けるような場面があっても良かったのかな、と。 気になった点ですが、やはり後半から戦闘がメインになってしまうので、少し疲れます。 「あかりルート」の方では、戦闘と戦闘の合間の一コマ(御飯を食べたり)が挿入されているので、その点少し救いがある感じです。 あとは、刀矢が人間を殺してしまう場面があるのですが、最初こそ結構引きづるものの、意外とラストではあっさりとその事実が消化されてしまっているような。そういう所の刀矢の葛藤も上手く取り込んだ上での終わり方があっても良かったのかな、と。 気付かない人は全く気付かないと思うのですが、戦闘の武術描写が意外と本格的でした。 静夜であったり、「ずんばらり」と同化した(?)刀矢の繰り出す技は、恐らく甲野善紀氏の武術を取り入れているものと推測されます。 私も剣術遣いの端くれとして、多少はこういった方面に通じているので分かりました。 「タメを作らない動き」や「動きにロックを掛ける事で別方向から斬り込む」技なんていうのは、氏独特の武術理論の成果(氏によれば古の武術の動きの一端らしいのですが)です。後者の技は確か「影抜き」とか言ったかな?籠手斬りの技ですね。 何気ない描写ではあるのですが、意外としっかりとした根拠に基づいた武術で面白かったです。 オーソドックスな伝奇のスタイルを踏襲しながらも、随所に面白い試みや、丁寧な因果関係の描写があり例の「コテコテな伝奇」とは一線を画した作品になっていたと思います。 それでもやっぱり、ちょっと歳をくってると辛いかな?って感じる所はあるんですけれどもねw 伝奇作品を敬遠していた人にこそ、是非一度プレイしてみて貰いたい作品です。 歴戦の伝奇好きにも勿論お勧め出来ますよ?
by s-kuzumi
| 2007-09-10 17:00
| サウンドノベル
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