2007年 09月 23日
今日の副題 「目にはさやかに見えねども」 ※評価の見直しを検討中です。もうちょっと良い(評価の)名前を思い付くまで待っていて下さい……。それまでは従来通りで……。 お勧め指数:四 ジャンル:感動系(?) プレイ時間:一時間半程度 その他:或る場面で選択肢があるが、一本道。 道玄斎です、こんばんは。 今週は風邪を引いたりと体調不良が続き、あまりレビューを書けませんでした。申し訳ないです。 ただ、言い訳じゃないですけれども、何か食指が動く新作が少なかった、というのも理由の一つですかねぇ。毎日のように情報サイトを見ているのですが、なかなか好みにあったものが無くて。 最近、毎回言っているのですが、是非是非お勧めの作品、取り上げて欲しい作品があれば、コメント欄にでも書いて下さい。お願いします。 さて、今日はそんな日々にふと気になってプレイした「P.o.l.c」さんの『秋人 -AKIBITO-』です。 「P.o.l.c」さんの作品は、過去に『透明な優しさ』を取り上げたことがありますね。 じんわりと来る感動系が得意の作風のようです。 では、いつものように……。 良かった点 ストーリーは、サイトの方にリンクを張っておきます。こちらからどうぞ。 じんわりと心に響く。それが本作の大きな魅力です。盛り上げるべきところは盛り上がり、ストーリーの展開も良かったです。 予備校生の広訓が、ひたき、しおん、ききょうという三人の子供達と交流していく、というのが大まかなストーリーラインなんですが、子供と交流していくようなゲームはあまり見たことがないので、新鮮でした。 又、これらのメインキャラが子供だったからこそ、まっすぐな気持ちや、大人が忘れかけている純粋さなんかを思いっきり表現出来ていた気がします。 村の伝承とストーリーが絡み合い、独特のノスタルジックで優しい空間が演出されていたと言いましょうか、何とも心温まるストーリーだったと思います。 そうそう、伝承の木版のイラストは、本当に変体仮名で書かれているんですよ。あれは読む分には意外と簡単なんだけれども、書くのは難しいですよね。そういう意味でも、かなり細部に渉って丁寧に作り込まれた作品でした。ただ、昔のモノとはいえ、普通日本語は「右から左」に文章が進んでいくんですよね。 看板なんかは違いますよ?「さかなや」だったら「やなかさ」とか書くんですが、伝承のような纏まった文章だと「右から左」が原則だと思います。尤もこれは些細な点ですけれどもね(ああいう伝承木版では左から右だったらごめんなさい)。 イラストもちょっと珍しいタイプのものだったと思います。 少し、漫画っぽい感じって言えばいいのかな?適度にデフォルメしつつ細部もしっかり書き込まれている、みたいな。最初は少し違和感を感じていたのですが、後半の一枚絵とかを見ていると、いいイラストだなぁ、と思えてきましたね。 タイトルが象徴しているように、本作の一つのキーワードは「秋」です。 今回の「今日の副題」にもそれっぽいモノを引用してみたのですが、伝わりましたでしょうか? 秋という季節は、どことなくもの悲しいような、そしてそれでいて妙に優しい気持ちになるような不思議な季節だと思います。そんな秋の空気感が作品に良く出ていました。 この秋が延々と続く「高千穂村」と、秋を見守る「秋人」なる存在。「秋人」に関してはちょっとした仕掛けがあって、最後でちょっとびっくりさせられるのですが、こうした伝承と広訓と子供達の交流が上手に結びついていた印象です。 秋は紅葉(こうよう)がありどことなく悲しいわけですが、リアルな視点から見るとそれは悲しい事ではないんですよね。 葉っぱが緑なのはクロロフィルが葉に集まっているからで、秋になると冬を過ごす為、そして春に新緑や花を咲かすためにクロロフィルを根っこに戻すんだそうです。 緑の元であるクロロフィルが根っこに移動してしまう為に、葉の色が変化する。簡単に説明するとこういう仕組みみたいです。尤も、昔そういう英文献を読んだ知識で話しているので、本当にそうかは分かりませんよ?w 詳しい方がいらしたら是非教えて下さい。 ただ、こうした紅葉は、「次の為に力を貯めておく」行為と見ると、実は悲しいものではなくて、寧ろ自然に必要不可欠な力強い、前向きな行為に思えます。 再生の為の準備ってところですかね。 本作でも、「秋」をそのように捉えている感じだったので、私としては興味深く思いました。 結構、こうした「秋」のポジションというか立場というか、そこも本作のポイントですね。何故、「高千穂村」では秋が延々と続いているのか、そしてひたきは一体何者なのか? 読み進めていく中で、ちょこっと上で解説(?)した「紅葉の仕組み」なんかを頭の片隅にでも置いておくと、面白いかもしれません。 キャラクターも魅力的でしたね。 元気いっぱいの「ガキ」であるひたき、おどおどしていながらも内に優しさを秘めたしおん。名家のお嬢様でキリッとしていながら思いやりの気持ちをもっているききょう。 みな魅力的です。 これらの子供達との友情も大きなテーマでありました。 大人が子供に教えられる事って凄く多いんだなぁ、と改めて思いました。子供の方がまっすぐで純粋な視点を持っているのは、まず間違いないですよね。 自分が忘れてしまった、子供の頃に持っていた純粋な気持ち。そんなものを作品を通じて思い起こさせてくれるような、そんな作品だったと思います。 気になって点に関しては、もう少し広訓が過去に何があったのか?という所に補足説明が必要だったような気がしています。 過去に広訓は高千穂村で、いじめられていて転校する事になったわけですが、恐らくそれだけが高千穂村から離れた理由ではないのではないかと。 広訓の担ってしまっていた役割なんかを考えると、もうちょっと深い理由がありそうなんですよねぇ。 村の伝承と絡めて、もう少しそこらへんの描写があっても良かったかな、と。 敢えて言えば、「高千穂村」とはどういう場所で、広訓にとってどのような意味を持つ場所だったのか、というそこの回答が少し不足していたような気がします。 後、ひたきの前世(?)で何があったのか、なんて所にも少し触れて欲しかったな、と。 ただ、後書きを読むと、次回作の構想があるようで、そうした伏線が本作の中にも張ってあるとの事でしたので、そちらの方で上記の点が明かされていくのかもしれません。 兎にも角にも良作だと思います。 気持ち的には4.5くらい付けたい所なんですが、今はまだ五段階評価なので……。 早い内に三段階にシフトしたいなぁ、と思っております。 本作は季節的に、まさに「今プレイすべき作品」なんじゃないでしょうか? あまり、作品内容には深く述べなかったのですが、老若男女幅広い層にお勧めできる作品です。 まだ本調子ではない感じで、筆の切れも鈍く、本作の魅力をちゃんと紹介出来たか不安です。何はともあれ、秋の夜長にプレイしてもらいたい作品です。
by s-kuzumi
| 2007-09-23 00:17
| サウンドノベル
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Comments(2)
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