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2007年 10月 10日
![]() 今日の副題 「百尺竿頭進一歩」 ※大吟醸 ジャンル:離島伝奇モノ(?) プレイ時間:三時間~ その他:選択肢無し、一本道 道玄斎です、こんばんは。 使用しているマシンの調子が非常に悪く、こんな時間になってしまいました。 しょうがないので、パソコンは買い換えます。作り替えるのも手なのですが、今非常に忙しい時期でパーツを選んだりとかそういう事が非常に煩わしい為、もう購入する事にしました。 さて、今回は「里見しば」さんの『送電塔のミメイ』です。 あの名作『TRUE REMEMBRANCE』の作者の最新作という事になります。 実は、リリースされるや否やプレイしたのですが、一回プレイするだけじゃ少し分かりづらい所もある作品だったので、今回こうして二度目のプレイをして(まだ)朧気ながら全体像が掴めてきた気がします。 では、いつものように。 良かった点 こんな所です、ストーリーはサイトの方のURLを張っておくとしましょう。こちらからどうぞ。 さて、あの『TRUE REMEMBRANCE』という傑作をリリースした作者が、次にどんな作品を創るか?こうしたフリーサウンドノベル愛好家は、結構気になっていただろうと思われます。私もそんな一人でした。 その分、 作者様には相当のプレッシャーが掛かった事、想像に難くないのですが見事にそれをはねのけて凄い傑作をまたしても生み出したと思います。 一読して分かるのは、キャラクターの魅力が存分に出ているという事。 ヒロインのミメイは、ふんわりとしていて透明感のある非常に魅力的な少女として描かれています。さりげない言葉遣いや、立ち振る舞いなどからもそうした魅力を見て取る事が出来ます。 一方でちょっとぶっきらぼうで居て、尚かつ本当は誰よりも優しい心を持つ夜刀の方も、前作の「黒目」とかなり被る所はあるのですが、やはり魅力的なキャラクターです。 主人公格のキャラクターが魅力的、というのは当然としても、特筆すべきは離島の住人達です。脇役として出てくる総一郎や京子、アトリさんやナギさんやハナちゃん……。様々なキャラクターが、物語世界で「存在している」リアリティがあるんですよね。 往々にして、良い作品を支えているのは、こうした脇役であり、名もないキャラだったりするのです。 世界を見せる為には、主人公達だけでは不十分で、その世界の構成員たる脇役がその世界に根ざして存在しているという事、そういうものを上手くメインのストーリーと絡めていくと、作品に広がりや厚みが出てきます。 その意味で、本作も脇役の使い方が非常に上手だな、と感心しました。 又、細かい所に凝っていますよね。 例えば、アイキャッチみたいな、場面が変わる時に背景には『秘伝千羽鶴折形』の書物が透けて見えます。こういうちょっとした所に作品の雰囲気づくりの妙を感じさせます。 又、「金打」なんて懐かしい儀式を持ってきたり……、泣かせてくれます。 金打は、私の場合は刀の鍔と鍔でやった記憶がありますねぇ。本作では刃でやっていましたが、人や流派(?)によってやり方が異なるのかしら?刃こぼれしないかしら?と少し心配になったりしたのですがw ちなみに、こういう細かい点が本編と離れて存在しているのではなくて、伏線になっていたりと物語そのものに絡む形だったのが又良い所です。 何よりも、一番今回のプレイで感じたのは、「一歩進めている」という事です。 例えば、他のゲームならここらへんで収束に向かうだろう、という辺りでさらに一歩、ストーリーを進めエピソードを入れていく。この繰り返しで作品自体が随分と厚みのあるものとなっている印象です。 ただ、少し作品自体が長くなってしまって、ダレる感じはなくもないんですよね。 良い作品である事はそれはそれとして、少し、特に中盤~後半にかけて冗長さを感じる所もありました。 気になった点は、少し分かりづらい所がある、という所でしょうか。 いや、単に私が暗愚なだけで、皆様はきっと一発で理解出来るとは思うのですが、後半部物語が収束していく過程で、あれ?あれ?と考えながら読まないとついていけない部分が私にはあったんです。 それは、「コゴリ」と「コゴリ鬼」という二つの語の不分明さだったりするわけですが、流石に二度目のプレイでは何とかついていく事が出来ました。 そういえば、ゆったりと多数のエピソードを入れて語られた前半部に比して、後半部、特に最後の章が予想以上の急展開を見せるというか、少し前半部とのテンポの雰囲気が違うので、そこは気になりました。 今回、二度目のプレイをしてみると、妙に本作が『TRUE REMEMBRANCE』に似ている事に気が付きました。割と最近リメイクの方もレビューしたしね。 気付いていなかったのは私だけだったりして……。 一点は、閉鎖された空間が舞台であるという点。前作は「封士の街」という閉鎖された街で、今回は「廃墟離島」というやはり閉鎖された空間で物語が語られていきます。 もう一点は、ヒロインの立ち位置というか持っている属性というか。「本当はこの娘が~だった」的な結末はやはりどこか似たものを感じさせます。 そして、最後に一点目として挙げた閉鎖された空間から「外」へ出て行く、という終わり方。 閉じた世界から、広がる世界へ。これが実は二つの作品を結ぶキーワードなのかもしれません。 敢えて批判を承知でいうならば、『TRUE REMEMBRANCE』を更に押し進めた完成型が『送電塔のミメイ』なのかもしれません。 だからといって、本作が焼き直しであるとか、そういう事を言いたいわけじゃないんですよ。似たような設定を持っているというだけで、別個の作品ですからね。 私が滔々と述べてきた事も全部実は「ハズして」いるのかもしれませんし(その公算高しw)。 兎にも角にも、素晴らしい作品だったと思います。 大吟醸は久しぶりですね。今回プレイするに当たって、一回目プレイした時を思い出していたのですが、その時の感触を思い出しながら評価を付けてみると「吟醸」だったような気がします。 二度目にプレイしてみると、全開のプレイでは分からなかった場所、気付かなかった所に気付くことが出来て、少しは作品の深い所に触れる事が出来たような気がしております。 最近無くなられた某著名古典文学研究者が、某著名古典文学作品の研究に「二度目の読み」なる概念を提唱していて、二度目に読むと見えなかった部分が見えてくる、と非常に乱暴に言ってしまえばそういう事なんですが、それによって物語の仕掛けに気付くと、そういう事を言っているわけです。すっげぇ乱暴に纏めてますよ?しかも素人の戯言ですから、さらっと聞き流してくだされば……。 で、本作にも少なからず「二度読み」を意識させるものがあるような気がするんですよ。 二度目に読むと、何気ない会話や何気ない動作の一つ一つに意味が見えてくる、みたいな。そういう意味でも非常に深い物語だった気がします。 そうやって考えてみると、しっかりとした世界や、それを支えるやはり世界にしっかりと住んでいる脇役達、魅力的なストーリー、細かい設定や雰囲気作りの妙、二度目の読み返しが出来る程の懐の深さ……。 これは大吟醸だろうな、と二度目のプレイ後に思いこういう評価にしました。 特に、印象的で素晴らしいと感じたのは、先にも述べた更に一歩ストーリーを進めていく姿勢です。これは、前作には(あまり)見られなかったもので、ゲームの制作者にとっても参考になるのではないかと思っています。 是非、秋の夜長にプレイして貰いたい作品です。 一度既にプレイされた方も、是非二週目にチャレンジして欲しいです。思わぬ気づきがあるかもしれませんね。
by s-kuzumi
| 2007-10-10 04:18
| サウンドノベル
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