2007年 12月 22日
今日の副題 「雪が降るまで待ってて」 ジャンル:SF恋愛アドベンチャー(?) プレイ時間:一時間半くらい その他:選択肢有り。バッドエンドも。 システム:Nscripter 道玄斎です、こんばんは。 たまには、昔懐かしのゲームを、という事でフォルダを漁ってプレイし直しました。 というわけで、今回は「TMS」さんの『FLOOD OF TEARS』です。 良かった点 大体、もう七年くらい前の作品になりますね。 初期の名作の一つに数えられるような作品だと思います。しかし、時間が経っても作品の良さは喪われる事はないですし、逆に今プレイするからこそ見えてくるものなんかもあるような気がしますね。ストーリーは今回は私が纏めておきましょう。 なんてこと無い日々を過ごす高校生の主人公。 と、まぁこんな感じ。 説明能力が低すぎて、「またいつものパターンか」と思わないで下さいw いや、中々説明が難しいんですよ。個別のルートに入る前は殆ど普通の日常場面ばっかりなので。。 全体を大雑把に見てみると、やはり七年近く前の作品ですから多少の垢抜けなさのようなものは感じますし、日常シーンなんかは陳腐に思えてしまいます。 けれども、作品のキモみたいな所はしっかりとその良さをそのまま保っています。 本作がリリースされてからの時間の流れを考えても、やっぱり良い作品だな、と素直に思える。それは本作が所謂「恋愛の成就」を最終目的とした作品ではないからではないかと思います。 勿論、恋愛的な要素は本作でも重要なパートを担っていますし、逆に恋愛の要素がないと本作が成立しないわけです。 それでも、単純な恋愛だけを描くのではなく、その先にあるものを描こうとした、そういう所が本作を名作の一つにしている要因ではないかと。 敢えて批判覚悟で述べるならば、Keyとかのゲームに近い手触りがあるのです。 恋愛が密接に絡みながらも、それだけに留まらない感動を描いている。またもや批判覚悟で言えば「泣きゲー」と呼べるような作品に仕上がっています。 ルートは基本的に二つ。 雛ルートと宇海ルート。選択肢が多いのでバッドエンドに遭遇する事もあるかもしれません。ちなみにバッドエンドも複数種類用意されています。 良いな、と思えるのはどのルートを選択しても作品の密度は変わらないという点です。 メインのルート以外は割とグダグダなんていう事は商業作品でもありますよね。本作の場合は、どのルートも等しい密度を持っていると思います。そういう丁寧な作品作りは大いに評価したいところ。 イラストも可愛らしくて、尚かつ親しみがもてるタイプの画で良かったと思います。 昨今の主流の画とはちょっと違うけれども、十分魅力的。 ただ、難点を挙げるとすれば「核心の設定」が十分に描写されないんですよね。 どのルートを選択しても、主人公とヒロインは別離を経験しなければならない。その別離というのは、ヒロイン達が「この世界の住人ではない」という所から来るわけで、SFチックな設定が入り込んでいます。それ自体は全く問題ないものの、「何故、記憶が封印されていたのか?」「何故、他の世界(?)に帰らねばならないのか?」という大問題が未解決のままエンディングを迎えてしまうのです。 敢えて「語らない」のりしろの部分を持っている、と言えなくもないのですが、ちょっと消化不良な所があるんですよね。 例えば、宇海ルートだけをプレイすると、結局最後に何が起こったのか全然分からないという。 どちらかと言うと、私は宇海ルートの方が好みなのですが(というか宇海みたいな子が好みの女性です)、途中まで物凄く良いストーリーが展開していくも、やっぱり先に述べた点が未解決のままなので最後の最後でちょっと肩透かしを食らってしまう。 一応、フォローしておくと、宇海ルートでは、過去のやりとりを現在の主人公達が再現しながら会話する、という場面があるのですがこれは非常に良い。じわぁっと感動が染み渡っていく瞬間です。こういう手法は現在でも十分に通用する描写だと思いますね。 そういえば、木曜日の夜はテレビアニメ「Clannad」を見ているのですが(いい歳こいてアニメかよ、と言う勿れw)、現在は「ことみ」ルートの話が展開していきます。 そこで、名作SF短編の「たんぽぽ娘」の一節がことみと朋也を繋ぐものとして機能しているんですよね。幼い頃に共有していたこの作品の一節を、年を経てことみが何もかも忘れてしまっている朋也に語りかける。 本作の場面もこれに似ているように思えます。 二人を繋いでいる言葉を再生させていく事で、二人の距離も再度昔に近づけていくという。 或いは、こういう手法はなんてこと無いポピュラーなものなのかもしれないのですが、私にとっては本当にじんわりと来る良い描写だと思えるのです。 私は個人的に、こういう言葉を使ったギミックが大好きです。 先にも少し触れましたが、本作はSFの影響が結構強いですよね。 どうやら、宇海と雛は宇宙人みたいだし、宇海の台詞の中に「高度に発達した科学は魔法と区別が付かない」というものがあるのですが、これはアーサー・C・クラークの「クラークの三法則」の中の三番目です(私がアーサー・C・クラークの短編が大好きだという事はちょくちょく書いてますよね)。 このSF的な設定が十分明かされないまま、エンディングを迎えるという欠点があるものの、テイストとしては好きなタイプです。 あと気になる点といえば、やはりバックログが使えないという点でしょうか。 ただ、これもかなり前の作品ですから見て見ぬふりをするのが良いのかもしれませんがw 実は、これを書くに当たってちょこっと調べてみたのですが、本作のファンページも存在しているようです。ふりーむでは、まだ感想BBSに感想が書き込まれたりしており、長い間愛され続けた作品である事が分かります。 是非プレイして貰いたい作品の一つです。 思いっきり後半からの感動に浸りましょう。
by s-kuzumi
| 2007-12-22 22:33
| サウンドノベル
|
Comments(2)
これは懐かしい作品ですね。私も、レビューを書き始めたばかりのごく初期に取り上げた覚えがあります。というより、この作品を始めとする、当時の優良作品が私に、「レビューを書いてみよう」と思わせたというのが、正直なところかも知れません。
記事を読んで懐かしくなったので、私も久々にプレイしてみようと思います。 なお、24日のインターネットラジオではお待ちしています。その後、「ノベルゲームの事ばかりしゃべるネットラジオ」も放送してみようと思ってますが、このBlogの読者の皆さんを始めとして、「聴いてみたい」という方、いらっしゃいます? トークが異様に濃くなりそうで怖いですけど(笑)。
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s-kuzumi at 2007-12-23 18:10
>>NaGISAさん
最近少し弾切れだと思いきや、フォルダを漁ったらまだまだ取り上げたいな、と思う作品があったので、久々にプレイし直してみました。 決して「昔は良かった……」的なものはないのですが、昔の作品は何故かゆかしいものがあるように感じますね。しかも今プレイしてみると又評価も違ってくるようです。 明日のラジオ、すっごい楽しみにしています。実はリクエスト曲までこっそり考えているくらいですからw 私の場合クラシックのCDはせいぜい100枚そこそこしか持っていないので、トーシロ丸出しの選曲になってしまうのですが……。 ノベルゲームのラジオ、最高ですね。 多分、私がDJをやったら完全にコケるけれども、NaGISAさんがおやりになれば、面白くならないわけがない。是非是非そちらもやっていただけたらと思います。思いっきり濃いトークを期待しつつw |
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