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久住女中本舗

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2007年 12月 25日

フリーサウンドノベルレビュー 『Silence ~涙をふいて』

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今日の副題 「ずっと一緒に……」

ジャンル:恋愛ノベル作品(?)
プレイ時間:二時間半~三時間くらい
その他:選択肢はあれど基本的に一本道。バッドエンドもあり。実妹との恋愛描写があり苦手な人は注意。
システム:Hyper Novel System



道玄斎です、こんばんは。
クリスマスになりました。少しだけ感傷的になって昔プレイしたものを探していたところ、「いつか取り上げよう」と思っていた作品を思い出してプレイしてみました。
もうこれで通算三回か四回くらいプレイしていますね。しかもセーブデータに刻まれていた最終プレイは2007年の一月一日でしたw なんかこの季節になるとプレイしているみたいなんですよね。
というわけで、今回は「Circle Mebius」さん(でいいのかな?)の『Silence ~涙をふいて』です。いまだに根強いファンがいる名作の一つですね。
良かった点

・伏線の張り方やストーリーの運び方が上手い。

・可愛らしい一葉や瑞穂のイラストは、今現在の主流の絵ではないが、魅力的。

・「泣きゲー」と評しても良いくらいに、泣かせるシナリオ。感動出来ます。


気になった点

・もう少し、音楽にヴァリエーションがあっても良かったかも。

・実妹との恋愛という事で、意外と人を選ぶテーマ。

ストーリーはVectorの紹介文から引用しておきましょう。
妹の一葉と一緒に暮らす主人公の悠次。
何気ない日常‥‥それがずっと続くと思っていた。
やがて、、二人の距離は縮まっていく。
そして奴に束縛されていたという、二人の辛い過去とは?

同人サークル『Circle Mebius』が製作された、
あの感動系同人ゲームをシステムを入れ替えて完全フリー版で公開。
切ない感動を、どうか感じて欲しい。

こんな感じ。
今回、プレイしたHNS版は移植版でして、もしかしたら作者は上の紹介文をお書きになっている「北本」さんとするのが良いのかも。ちょっと判断に迷う所です。

それはさておき、有名な名作ですよね。
ご存じの方も多くいらっしゃるのではないかと思います。
しかも、実妹との恋愛という非常に扱いにくいテーマでありながら、感動的なシナリオが現出しているという。
そういえば何年か前に『恋風』というやはり、実妹との恋愛をかなりリアルに捉えた漫画がありましたが、「妹モノ」ならぬ「実妹モノ」は明確に好き/嫌いが分かれますよね。
一応、三等親以内の婚姻は禁じられていますし、自分自身に当てはめてみても自分の妹と恋愛をする、というのは非常に気持ち悪いw 俗に言う「妹モノ」は妹は妹でも実の妹がヒロインである事の方が少ないんじゃないかしら?大抵は義理の妹だったり、或いは「妹的存在」とかね。

ちょっと脱線していいですか?
最近、シナリオ制作関係の本を読んだのですが、プロがキャラクターの設定の段階で「絶対に避けなきゃいけない」ものがあるそうです。それはネーミングで「ヒロインがプレイヤーの母親と同じ名前になること」だそうですw 確かにそれは萎えますねぇ……w 美少女ゲームに特徴的な名前のヒロインが多いのはこういう事情に拠るものだそうです。

話を戻すと、ヒロインが自分の姉や妹、或いは伯母さんとか祖母とかね、そういう人と同じ名前だったらやっぱり萎えるんですよね。
つまり、このように妹が居る人に、実妹と恋愛するゲームがプレイ出来、且つ感動まで持って行けるのか?というかなり厳しい問題を本作は潜在的に抱え込んでいる事になります。

本来はこの作品は、十八禁のゲームだったわけで身も蓋もない言い方をすれば近親相姦が描かれていたのです。今回プレイしたのは通常版という位置づけで、そういったシーンはカットされています。念のため。

ま、こういう事情があるので、ちょっと調べてみただけでも意外と賛否両論ある作品なんですよね。私自身は妹がいるのですが、それでも本作はしっかりプレイ出来ましたし、結構感動してしまいました。そんなにドロドロとしたものが描かれるわけではないので、あまり先入観を持たずにプレイしてみて欲しいな、と一プレイヤーとして思います。


さて、良いなと思ったのは伏線の張り方とストーリーの運び方です。
前半は、主人公とその妹の一葉のなんてことない日常がコメディタッチで描かれていく。そこに見えるのはささやかな幸せの日々。
だけれども、彼らに「親」というか「保護者」の影が見えない。或いはそういう日々の描写のなかにちょこんちょこんと示される、その幸せに対する不安が読者に「?」を感じさせ引きつけていきます。

そして少しづつ、何故「親」が不在なのか、この二人に何があったのか?という問題が明かされていきます。あんまり「?」ばかり突きつけられても読者は困るのですが、プレイを勧めていくと適度に謎が解けていくような、そういうストーリーの運び方は上手いな、と思います。

中盤くらいからぐんぐんと感動の伏線みたいなものが張られていくわけですが、これまた凄く私好み仕掛けがありました。
一葉が自分と兄を仮託した「男の子と女の子のお話」をするんですよね。凄い大げさな言い方をすれば物語内物語みたいなね。
で、ちょっと事件があった後、主人公が一葉の気持ちに答える形で、そのお話に男の子の視点からシナリオを追加して一葉に語っていく。二人で自分たちを仮託したお話を紡いでいくこの描写は素晴らしいです。
こういうギミック、好きなんですよねぇ。

ラスト近くでは、畳み掛けるように安心と不安を交互に演出し、ラストに向けてストーリーが進んでいきます。この辺りは緊張感があってかなりグーなんですが、やや、くどさを感じる人もいるかもな、とも思いましたね。どんでん返しの多い大島弓子の「詩子とよんでもう一度」みたいな感じって言えば分かるかしら? 若い人は大島弓子なんて知らないのかもw どうでもいいんですが私は大島弓子の中で「好きな作品は?」と聞かれてぱっと思いつくのが「ミモザ館でつかまえて」です。ベタベタなのかもしれないけれども、この手合い、大好きです。

気になって点では、最初に挙げてありますが、少し補足しておくと、ツールの使い勝手があまり良くなかったかなと。しかし、もうかなり昔の作品ですからツール云々を言うのは的外れですな。
もう一点。ラスト付近で、元々の十八禁版では病院にいる一葉と主人公が性交渉を持つと思しいのですが、そのシーンをカットしてしまった為、少しその辺りのつじつまが合わなくなっている所がありました。
つじつまが合わないといえば、ラストシーンもそういう所が。あれじゃ完全に一葉が死んでると思うよ、とw あの周囲の反応はどうなんだ?とw


人を選ぶ作品ではあると思うのですが、先ずは先入観なくプレイしてみて欲しいと思います。
これが本当に生々しい世界の描写だったらもう少し、プレイしにくいかもしれないのですが、猫がしゃべったり(ギャラリーのオーナーをやってる)する、ほんの少しファンタジックな世界が舞台。
名作と呼ばれるだけのクオリティは保証します。

by s-kuzumi | 2007-12-25 20:06 | サウンドノベル | Comments(0)
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