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久住女中本舗

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2008年 01月 04日

フリーサウンドノベルレビュー 『TURKEY』

フリーサウンドノベルレビュー 『TURKEY』_b0110969_23261272.jpg

今日の副題 「こいつぁ深い童話だぜ」

ジャンル:ちょいグロ童話(?)
プレイ時間:十分~二十分くらい
その他:選択肢無し。一本道。
システム:Nscripter


道玄斎です、こんばんは。
もう年も明けて、すっかり新春な訳ですが、時計の針をちょっと戻してクリスマスムード全開の作品をご紹介いたします。
というわけで「ぱんけーき」さんの『TURKEY』です。元々クリスマス特別企画としてリリースされていた作品ですね。

「ぱんけーき」さんといえば、『歪ミ回廊』も以前取り上げた事がありましたね。ちょっとグロテスクな部分があるけれども、丁寧な描写と何やら深い含意がありそうな、そんな独特な魅力に溢れた作風が持ち味なのではないかと。
良かった点

・良くできた童話の絵本のような手触り。尤も大人向けなんだろうけれどもw

・音楽や背景のチョイスも上々。


気になった点

・オチがちょっと分かりづらい。ハッピーエンドなのか、それとも……?

ストーリーは、サイトのURLを張っておきます。こちらからどうぞ。

なんか、本当に不思議な手触りの作品です。
一見すると、実在していそうな童話に思える。けれども少しづつ進んでいくストーリーは、その設定と相俟って緊張感を孕んだものとなっています。

一ページ分のテキストを読み終え、次の文章を表示させる瞬間。
いつ、この或る意味でほのぼのとした世界が壊れていくのか?と読者に適度な緊張感を与える作りは良いですね。
これが長編だったら、気を持たせすぎっていう事にもなりかねないんですが、短編として本当に完成度の高いものだと思います。

こういう独特の雰囲気を持った作品、私は大好きです。
文体も、淡々と事実を記述していくようで、その実ちゃんと「語り手」が文章の背後に透けて見えるような、そういう雰囲気です。
以前取り上げさせて頂いた『歪ミ回廊』もそうなんですが、或る意味で猟奇的な世界が描かれるんだけれども、その中から「美しいもの」をすくい上げようとするような、そういう印象。

CGは全部で二枚かな?
結構病んでる感じの絵がついていますw 狂気の世界というか、そういうのが本当に上手な作者様ですよね。


で、一つどうしても分からなかったのが、本作がハッピーエンドなのか、はたまたバッドエンドの後味が悪いものなのか?という事です。
本作に選択肢はありませんよ?
けれども、最後の最後の文章を読むと、ハッピーエンドとしても読めるし、深読みすれば物凄い狂気の世界が現出しているようにも思える。

最後のあの一文が本当に無邪気な発話なのか、それとも狂気に犯されたものの狂った発話なのか。
もしかすると、そこらへんの判断も読者にゆだねられているのかもしれませんね。
そういう深さを含めて、大人のための童話という位置づけで私は本作を捉えています。

ストーリー自体は童話調でシンプルだからこそ、深みがあり、読み手の創造力を試すようなそういう余地を持った作品だと思うのです。

プレイ時間は短いので、是非さくっとプレイしてみて欲しいです。ちょっと季節外れだけどもね。
皆様は本作にどんな感想を持たれますか?

by s-kuzumi | 2008-01-04 23:26 | サウンドノベル | Comments(0)
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