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久住女中本舗

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2008年 02月 09日

フリーサウンドノベルレビュー 『Project Lavender』

フリーサウンドノベルレビュー 『Project Lavender』_b0110969_0172082.jpg

今日の副題 「ほんの少しのもの悲しさと」

ジャンル:SFアドベンチャー(?)
プレイ時間:一ルート一時間~一時間半くらい。
その他:選択肢有り。ベストエンドやグッドエンド、バッドエンドなど多数。
システム:吉里吉里/KAG


道玄斎です、こんばんは。
今回は、私自身結構好きなSFというジャンルの作品をご紹介致します。
ほんの少しだけ、もの悲しい「何か」が残る作品だったように思えます。
というわけで、「まひるかん」さんのさんの『Project Lavender』です。
良かった点

・ほどよい具合のSF風味。

・神経衰弱などのゲーム性があり、楽しめる。

・ベストエンドで描かれる、ほんの少しだけ悲しい余韻が溜まらない。


気になった点

・ベストエンド到達は、かなりシビア。

・もう少し、盛り上がりがあっても良かったかも。

ストーリーはサイトの方から引用しておきましょう。
「服部エレクトロニクス」。
それは、21世紀中頃から急成長した電気製品製造会社である。
特にコンピューターなどの情報機器においては世界トップクラスで、
技術は世界一とも言われている。
そこが私、小野さゆりの就職先であった。
高卒の私がそんな会社に就職できたことに、周囲は喜んでくれるどころか
ただただ驚くだけで、私も実感のないまま入社の日を迎えた。
奇跡と呼べるこの採用に理由があったとは、知る由もなく……

こんな感じ。

私は、何度も書いていますように、SF作品が好きです。
けれども、あんまりハードなSFは実は苦手で、「スパイス」としてSFの風味が効いているような、そういう作品が好みなのです。アーサー・C・クラークの『白鹿亭奇譚』が私の大好物なので、そこらへんからも分かって貰えるのではないかと。って、『白鹿亭~』は結構「科学」してますね……。

まぁ、それは兎も角、本作くらいのSF風味はプレイしていて心地よいです。
エレクトロニクスの大企業に高卒の女の子が就職試験を受ける、という所から始まる本作は、ツカミ的なものはばっちりです。
しかも、プレイヤーがちゃんと試験を受ける、という形式も良かったですね。全然難しい事はないのですが、この試験問題に答えられないとバッドエンドを迎えてしまうようです。

良くこうしたノベルゲームで、例えば学園モノだったら定期試験だとかそういう「試験の場面」が出てきますよね。実は私は結構それに不満を覚えていたりしたのです。
というのは、プレイヤー(=自分)なら答えられるのになぁ、というちょっとしたもどかしさを覚えてしまうんですよ。まぁ、いちいち自分が解答しなきゃいけないとなると、めんどくさいって事もあるんですが、「テストで強制的に悪い点を取る」みたいなものに対して、反逆精神を刺激されているというw
一応、滅茶苦茶簡単なんですけれども(本作のサークル名を問うたりw)、プレイヤーが実際に試験を受けることが出来る、という仕掛けは私にはちょっとだけ嬉しかったりします。いや、私は凄い馬鹿なんだけどもね……。
ですので、もう最初の数分で、私のフラストレーションが解消されてその後楽しんでプレイが出来ました。

ストーリーにも書いてあるように、主人公のさゆりはエレクトロニクスの大企業に就職し、そこでラベンダープロジェクトの担当者になります。
要するに、仮想空間に生きて(存在して?)いるラベンダーなる少女を育てる役目を与えられるわけです。
このラベンダー育成も、神経衰弱という形で行われるので、楽しんでプレイする事が可能です。失敗するとバッドエンドへの道が開けたりするらしいのですが……。けど、実際プレイしてみた感触では、そんなに難しい事はないと思うのでこうした「ミニゲーム」的なものも楽しんで貰いたいな、と思います。

そうそう、イラストも可愛らしい感じで、好感が持てるタイプのイラストです。
そういえば、後書きを読むと分かるのですが、音楽もオリジナルのものを多く使っているようです。しかもDTMを初めて二ヶ月という方がかなりの曲をお書きになられているのですが、本当に二ヶ月かよ……、と凄い絶望感を味わいましたw
最近、私もシーケンサーの力を借りて、二曲くらいオリジナルのものを作っているのですが、実際に自分でも音楽制作という事をやってみると、ゲームで使用される音楽の見方(聴き方)も変わってきますね。
最近、間違って「同人音楽」みたいなキーワードでうちのサイトの方を訪れてくれる人もいるので、それはちょっと嬉しいんですが。詳細はまだ言えないのですが(←自分で判断が付かない)、音楽の方でちょっと進展があったので、それもいづれお話したいと思います。

本作のもう一つのキモは、「懐かしさ」だと私は思います。
SFなのに懐かしいとはこれいかに、といぶかしがる方もいらっしゃるかもしれません。
けれども、調査のパートなど、昔のノベルゲームを彷彿とさせるような所があって、どことなく懐かしい気持ちがするのです。
昔、良くプレイした「館脱出系」のゲームは、こうした調査パートみたいな、そういう選択肢の選び方が数多くのエンドへ繋がるものとして機能していたような気がします。
本作も、それを踏襲するかのように、調査の仕方でエンドが変化していくようです。
そういう訳で、どことなく古式ゆかしい懐かしい手触りを覚えたのでした。勿論、良い意味でね。

上記の点とも関係するのですが、ベストエンドはやっぱり良いですねぇ。
普通にプレイした時には「ノーマルエンド」ばかり見てしまったわけですが、ノーマルエンドとかだとやっぱり、物語は決定的な消化不良感を感じるようになっています。
とはいえ、「謎の電脳少女ラベンダー」の存在とか、そういうものは割と簡単にオチが分かってしまうのですが……。

なんて言えばいいのかしら。
ベストエンドは、ハッピーエンドなんですが、どことなくもの悲しさを感じさせるエンドで、とても印象的でした。私の好みが、こういうほんの少しのもの悲しさを感じさせるタイプの作品なので。
思いっきりポジティブで明るいゲームをやるのも大好き。けれども、時にはこういうゲームも良いものですよ。


さて、気になった点は、なんといってもベストエンドへの道のりがかなり険しいという所でしょう。実は、攻略サイトを見つけて、それで以てベストエンドへ到達したのですが、結構選択肢の選び方、話の進め方はシビア。
先にお話した、古式ゆかしい昔のゲームのような良さとこれは表裏一体になっているものですから、単純に「良くない」とは言えません。けれども、少し難しかったかな、と。
これも先に話しましたが、例の調査パート的な部分なんですよ。必要な調査を必要なだけ行う、というような事が必要になってきます。

あと一点挙げるとすれば、少し盛り上がりに欠けていたのかも、という所。
ストーリー自体は、ありがちといえばありがちなんだけども、私は凄く好きなタイプの作品です。ですが、もう少し思いっきり盛り上がる所があって、全体で見たときに起伏を感じさせたらもっと良かったのではないかと。
少しだけ平坦な印象があるので、そこが少し残念だったなと思いました。


何はともあれ、良い作品です。
SF好きもそうでない人も、「無条件試験終了型」に飽きている人もそうでない人もw 是非プレイしてみて下さい。
一ルートは大体一時間~一時間半くらい。気に入った方は、是非plus discというシェア版も出ているみたいなので、そちらの方もチェックしてみて下さい。

by s-kuzumi | 2008-02-09 00:17 | サウンドノベル | Comments(0)
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