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久住女中本舗

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2008年 02月 16日

フリーサウンドノベルレビュー 『黄昏の姉妹、終末のマリアージュ』

フリーサウンドノベルレビュー 『黄昏の姉妹、終末のマリアージュ』_b0110969_22174322.jpg

今日の副題 「そして今日も変わらない世界」

ジャンル:終末モノ(?)
プレイ時間:二時間くらい
その他:選択肢無し、一本道。微百合要素有り。
システム:NScripter


道玄斎です、こんばんは。
宣言通りに、私が昨年からちょっと注目しているサークルさんの新作を取り上げようかと思います。
ということで、今回は「花を吐く抄女」さんの『黄昏の姉妹、終末のマリアージュ』です。
良かった点

・独特な文章や、言い回しは健在。又声優さんも好演。

・今までになかったちょっと「洋風」な手触りがあって面白い。


気になった点

・独特の文体とフォントが相俟って、文章がちと読みにくい。

・全体的に見るとやや冗長な所がなきにしもあらず。

ストーリーをサイトの方から引用しておきましょう。
『黄昏の姉妹』と呼ばれる『終末予報』から十幾年。
予報と言う希望観測に、雨振らずに願う想いも外れ、 結局傘は最後まで見つからなく、その滅び行く『黄昏の姉妹』の生活も何時の日か日常と化していった。

しかし、人が居なくなり、動物や自然界がその大地の割合が占めて来たときには 意外と言うべきか、当然と言うべきかその時の流れは非常にゆったりと、落ち着きを取り戻している。
人間とてその動物の1種類に過ぎず、如何にこれまで力を示してきたからと言えど、 淘汰されてしまえば所詮何事も無く、軒下で猫はあくびをしながら世は続き、 その片隅に、恐らく最後の姉妹……いや、私たちの知りうる限り最後の姉妹。

何も変わらない日々の生活とは何なのかを僅かに記しましょう。

こんな感じ。適当に改行しちゃいましたが。

実は、本作を旧年12/31に私は某コミックマーケットにて購入しているのですが、その後フリーになると分かっていたので敢えてプレイしませんでした。
昨日、フリー版を落としてきて、そのまま本日フリー版の方でプレイしました。
って、わざわざシェアとして買った意味ないじゃん……w 

いやいや、無いように見えて実はあるのです。
シェア版はちゃんとしたパッケージに入ってますし、本作の場合レコードのようなそういうCD-ROMで凄いカッコ良かったんですよ?しかもパッケージの裏側には設定資料のラフ画なんかが付いていたり……。
それに、やっぱり気に入った作品やサークルさんにはお金を払いたいのですよ。私一人が払ったお金は本当に微々たるもの。だけれどももしかしたらそれが次の創作に何かしらの形で活きてくれたら嬉しいじゃありませんか。
特に「花を吐く抄女」さんは、シェアとして発表したものを殆ど間をおかずにフリーで配布して下さっていますから。。

なんだか、前置きみたいのが長くなってしまいましたが、話を続けましょう。
所謂、本作は「終末」を描く、「終末モノ」と思しいのですが、例えばそれは『終末によせて』などの終末モノとは一味違っています(あーこれももう一回読み直さなきゃ)。
話の設定みたいなものは、『さよなら眠り姫』にちょっと似てるかな。

別に本作に限らないのですが、「花を吐く抄女」さんの作品は例えば『挽歌の候、如何お過ごしでしょうか』に顕著なように、徹底的に「作品世界」と「プレイヤー」を切り離しています。

時に作品世界の登場人物が、「画面越し」の私たちプレイヤーに語りかける、なんて事すら起きてしまうわけで、プレイヤーを作品世界の中へ、或いは作中のキャラクターに同化させる事を徹底的に拒んでいるように思えるのです。
良く良く考えてみると、独特な文体、台詞回しは、それこそ「舞台で演技」しているような感じすらしますもんね。だからなんか、作品の中に入り込んで楽しむ、というよりも画面の中で演技し続ける登場人物を画面の外から眺める、というそういう感覚。

普通の終末モノって、淡々とその終末を受け入れるにせよ、思いっきりそれに抗うにせよ、どこか感情の動きみたいなものがあって、読者にそれを追体験させるような所があるわけですが、本作の場合は全然違っていて、終末の世界二人だけで生きている姉妹の淡々とした日常を淡々と眺める、という。

言ってしまえば、明確なストーリーみたいなものすら、そこには存在していない。
千夏と百夏のなんてこと無い日々のやりとり、それがこの作品の全てなのかもしれません。
私自身は、こういうの結構好きなんですよ。
終末を描いたSFなんかだと大原まり子の『銀河ネットワークで歌を歌ったクジラ』所載の「有楽町のカフェーで」(+「薄幸の町で」)なんかが好みだったりしますからねぇ。知ってる人いますか?居たら仲良くしましょうw

舞台は終末なんだけども、それを微塵とも感じさせない、淡々とした日常を描く。
こういう終末モノは珍しいのではないかと。
ただ、私は楽しめちゃうのですが、これを「ノベルゲーム」として見るとどうか?と言いますとまた話は違ってくるのではないかと思います。

意外と台詞は読みにくい所が今回あって、それは一回に表示される量が、三行くらいだったらそこまで負担にならなかったと思うのですが、結構な量が一遍に表示される事もあるんですよね。しかもちょっと特徴的なフォントで表示させているので、意外と読みにくい。
外観的な要因でやや読みにくいのに、更に独特な文体が追い打ちを掛けるというw 文体自体は凄く好き。適度に段落を切るとか、一度に表示される分量を調整したりすれば意外と読みやすくなるかもしれませんね。


結構、人を選ぶ作品ですね。
好きな人は溜まらなく好きな作風だと思いますし、合わない人は徹底的に合わないような。
初心者の方は本作じゃなくて『挽歌の候、如何お過ごしでしょうか』或いは『死狐様』あたりから読んでみると良いかもしれませんよ?

繰り返しますが、私は結構好きです。
興味を持った人は、是非独特な世界観を楽しんでみて下さい。

by s-kuzumi | 2008-02-16 22:20 | サウンドノベル | Comments(5)
Commented by 根本 at 2008-02-17 01:22 x
文字制限につきわけますね。すいません・・・・・・。

>レビューにつきまして
えっと、数々の当作品のレビューを読みますと、
私よりも深く作品を考えていただき恐縮と申しましょうか・・・・・・。
人を選ぶ~、や、他とは違う~、と言った旨が書かれてありましたが、
私自身、「死狐様」制作以前は活字嫌いでして文筆はもちろん、
読書もろくにしていません。
元々昔からゲームは好きだったのですが、友人のデジタルノベルでの
同人活動に影響されたのと、一番大きな要因はここでも紹介されている
「ナルキッソス」に感嘆しまして、無謀にも手ずから制作を始めてしまった次第に・・・・・・。
Commented by 根本 at 2008-02-17 01:24 x
>レビューにつきまして2
ですから、他の制作者様とは比べようもなく、力も、また才能も乏しい
所に出来ることは、せめてなんとか、定期的な完成品を届けようと。
しかし、今ももちろんに、過去作品などはもう拷問に近い恥さらし
なんですが、その恥さらしの積み重ねも、また修行なものかと。
制作中は懸命に全力を尽くしているつもりでも、振り返れば
目も当てられない事、多々なりと。
面白いものを、流行を、高きクオリティを、などはあっぷあっぷな
現状につき中々手が回らず、結果へんてこな作品になっていますが、
少しでも楽しんでいただけると幸いです。

これからもブログの方、楽しく拝見させていだきますので、
道玄斎様にも良き活動がありますよう。
それでは失礼いたします。
Commented by 根本 at 2008-02-17 01:26 x
何か一通目がうまく投稿出来なかった順番がめちゃくちゃですが、これが1通目です。変な風になり度々すいません。

道玄斎 様

どうも初めまして、今日は。
今回レビューしていただいたノベルを作っています「花を吐く抄女」の根本といいます。
いつも道玄斎様のレビューは拝見しているのですが、ここまでご挨拶遅れて申し訳ない所です。
無精なとこもありますが、あまり外側との関わりを持たず、ひっそり活動するのが好きなものでどうかご容赦の程を。
また、コミックマーケットにて当サークルまで赴き買って頂いた事、感謝いたします。
フリーはフリーの良さがありますが、矢張り手渡しで作品を渡すという事に大きな意味と価値を感じますので、心遣い嬉しく思います。
Commented by s-kuzumi at 2008-02-17 20:34
>>根本さん

こんばんは、はじめまして。
『挽歌~』をプレイして以来、一ファンとして応援させて頂いております。
この度は、わざわざコメントを下さり、本当に有り難う御座いました。

定期的なリリースに加えて、オリジナリティのある文章から導き出される雰囲気が私の好み直球でして、いつもいつも楽しくプレイしております。
今回、正直「活字嫌い」であったと伺い、吃驚いたしました。
私の印象では、ある種の「活字を極めてしまった人がたどり着いた境地」みたいなものを貴サークルのノベル作品に見ていたからです。

つづく
Commented by s-kuzumi at 2008-02-17 20:34
私自身の事で恐縮ですが、一応私は日本文学の専攻で大学院まで出た関係上、何となくそういう言葉に対するセンスとか感覚には、意外と敏感だと自負しております。
根本さんのお作りになられるゲームは、確かに「流行」みたいなものからは外れているかもしれません。
けれども、そこには言葉に対するセンスがあり、確実に「面白さ」や「印象」をプレイヤーに残すモノになっていると思うのです。一時期の流行を追うよりも多分、そうした作品を作り出していく方が難しいですし、いつまでも愛される作品になる公算が高いようにも思えます。
是非、私としましては、今の路線のまま頑張っていただきたいなぁ、と押しつけがましくも思っております。

こちらこそ不精者で、あんまり自分から宣伝もしないので、ご挨拶が遅れました件、お詫び申し上げます。
どうぞ、これからも宜しくお願い申し上げます。
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