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久住女中本舗

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2008年 02月 25日

フリーサウンドノベルレビュー 『すくとり』

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今日の副題 「意外と純情、修学旅行」

ジャンル:修学旅行型ラブコメ(?)
プレイ時間:一ルート、二時間半くらい?一つのルートをクリアすればスキップでその後、楽が出来る。
その他:選択肢あり、バッドエンドも。十八禁。十八歳未満の方はプレイしないで下さい。
システム:吉里吉里/KAG(?)



道玄斎です、こんばんは。
ここでは、十八禁の作品は基本的に扱わないのですが(といいつつ、もう二回くらい紹介してる?)、本作の場合、純愛みたいなそういうテーマが目立ったので、今回扱ってみる事にしました。
というわけで、今回は「本気でエロゲを作るスレ」発の『すくとり』です。
良かった点

・丁寧に作られており、ボリュームもばっちり。

・それぞれのシナリオにちゃんと見せ場があって良い。

・実際に京都に修学旅行をしているかのような感覚も。


気になった点

・良くも悪くも「エロゲ」風味。キャラクターに外連味がありすぎるw

ストーリーはサイトの方から引用しておきましょう。
修学旅行を間近に控えたある日の放課後。
「いい加減彼女を作ろうぜ!」
そう友人にたきつけられ、ようやくその気になった主人公。
だが、いくら主人公が彼女を望んでも、相手がいなければ始まらない。
気になる女の子はいた。
 
 ――何かにつけて、主人公の世話を焼いてくる幼馴染み。
 ――バカだけど憎めない。いつも元気な活発空腹少女。
 ――嘘か真か、主人公に愛を囁く眉目美麗の生徒会長。
 
偶然か策謀か。
修学旅行の班決めで、主人公はその女の子たちと同じ班になる。
 
このチャンスを活かさないと卒業まで彼女は出来そうにない。
修学旅行という特殊なシチュエーションを最大限に活用しよう。
恋愛に関して無頓着だった主人公。
友達とは異なる、新たな関係へのステップアップ。
主人公は、恋愛という未知の学問を修学するため京都へ向かう。
はたして主人公の“修学”旅行は成功するのだろうか……

こんな感じ。ちょっと長目のストーリー紹介ですね。

高校の修学旅行は何故かオーストラリアで、シドニー湾に面した高台の植物園で一人で植物を眺めていたりした道玄斎です。
勿論、中学校の時の卒業旅行は京都でしたけどもね。大体、関東圏の中学校とかだと殆どが京都に行くみたいですね。

けれども、私自身京都は結構好きでして、たまに行ったりするので、本作は楽しくプレイ出来ました。
本作の新しい所は、やはり「修学旅行で彼女を作る」という明確な目標がある、という所でしょう。しかもプレイ開始直後から既に主人公を巡っての「女三つどもえの戦い」みたいな様相を呈していますw

キャラクターメイキングみたいな点で言えば新味はありません。
主人公晴彦やその友人である裕介(アホ属性アリ)は、典型的なエロゲキャラ。
ヒロインも、幼なじみ、一見クールな生徒会長、お子様っぽい小柄で大食いの女の子ときていますw

ヒロインに関して補足しておくと、幼なじみの早紀は暴力癖のあるツンデレ系、生徒会長の優子は何故か生徒会長にして絶対権力者みたいな雰囲気があったり、言動もエキセントリック。
唯一の救いのちびっ子キャラの杏里は、その体に似合わず超大食い、と外連味もたっぷり。

ちなみに外連味っていうと悪いイメージの語かもしれないですが、商業作品でヒロインに「外連味を持たす」っていうのは大事な事で、「外連味がある」っていうのは褒め言葉なんだそうです。ここでは、全肯定はしないけれども、割とプラスのイメージで「外連味」という語を使っています。

ただ、まぁ商業作品ではなくて、一応同人作品ですから、従来的な設定に寄りかからず何か新機軸を見せてくれても良かったなぁ、とも思うわけです。
商業作品が好きな人にとっては、安心感をもってプレイ出来るという利点はありますよ?


ストーリーに関しては、意外や意外18禁にも関わらず、かなり純愛路線でした。
18禁シーンもまぁ、オマケみたいなもんかしらね。
実際の所、誰が一番私は好きだったか、というと、生徒会長の優子さんです。
なんか、私はああいうタイプ好きなんですよ。和風美人みたいな。それに、なんて言うかちょっと力強い所が、いいですね。ああいう人に引っ張ってもらいたい……。

けれども、シナリオで言うと、抜群に良かったのが幼なじみ早紀のシナリオです。
定番の「幼なじみの距離」みたいな問題を扱いながらも、京都らしく「和歌」を使ったギミックで盛り上げてくれました。

和歌が出てきたって事で、ちょっと解説モードに入りますよw
で、作中で、早紀が自らの想いを和歌に託していたわけですが、その和歌は、


かくとだに えやはいぶきの さしもぐさ 
           さしも知らじな 燃ゆる思ひを


です。『後拾遺和歌集』恋一に入集している歌で、新編国歌大観番号612番の歌であります。
意味は、

このように恋しているとだけでも、どうして口にだして言えるでしょうか。言えないからもぐさのように燃える私の思いを。


という事みたいです。今本棚から『新日本古典文学大系』の後拾遺和歌集を取り出して、訳文を引用してみました。口に出して言えない恋心をこの歌を読むことで晴彦に伝えるわけです。
それで、一悶着あったあと、晴彦も頑張って和歌で想いを伝えます。
この下りが凄くいい。完全な純愛。初々しい二人のやりとりが見ていてたまりません。
晴彦の和歌ですが、これは『後撰和歌集』恋三、776番歌(百人一首にも入ってるけどもね)、

筑波嶺の 峰より落つる みなの河 
           恋ぞ積もりて 淵となりける


訳をやっぱり『新日本古典文学大系』から引用しておきましょう。

筑波山の峰から流れ落ちるみなの河の水が積もり積もって深い淵になるように、あなたを思う私の恋も、ほのかな恋から、今は積もり積もって淵のような深い思いになってしまいました。


という事です。
幼なじみという関係から、恋人という関係にシフトしていく。その気持ちにぴったりの和歌なんじゃないでしょうか。幼い淡い関係からはっきりと恋愛へシフトしたい、という決意で晴彦は、早紀の気持ちに応えます。
いや、ホントこの場面はよかったです。

ただ、その後で二人は古いお堂を探してそこで18禁シーンに突入してしまうわけですがw
和歌なんか出たあとだったから余計に思い出してしまうんですよ、アレを……。
『今昔物語』だったかな?人の住んでいない古いお堂で逢い引きする二人の男女。なんだけどもそのお堂には化け物が住んでいて、女は死亡してしまう。
結びの言葉として、「人の住んでいないお堂なんかにむやみに泊まっちゃ駄目」、と。

だから、実はプレイしていて「バッドエンド」になるんじゃないかとヒヤヒヤしましたw 幸いにしてこのルートで正解だったわけですが、実は早紀ルートは最後の最後で、結構選択肢選びが難しいです。
選択肢前にセーブは必須でしょう。何度か試行錯誤すれば大丈夫だとは思います。


18禁だからといって、過度に期待したり、逆に冷めた目でみないで、さらっと楽しむというスタンスでプレイしてみるといいんじゃないでしょうか?
意外としっかりとした純愛のストーリーに、驚くこと請け合いです。

by s-kuzumi | 2008-02-25 01:42 | サウンドノベル | Comments(0)
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