2008年 02月 27日
今日の副題 「ゲーム+小説+ミステリー=?」 ジャンル:新感覚ミステリー(?) プレイ時間:三十~四十分くらい その他:選択肢なし、一本道。文章縦書き。立ち絵・一枚絵無し。 システム:吉里吉里/KAG 道玄斎です、こんばんは。 今日はちょっと良い気分です。先日我が家で発掘されたモンブランの万年筆のインク瓶を買って(そう、カートリッジ式ではなくて、付けペンみたいなインク吸引式なのです)帰ってきたら、古い万年筆にも関わらずちゃんと使用出来て、何とも嬉しいです。ネットで調べてみたら、なにやら80000円くらいするそうで、普段使用するにはちょっとおっかないのですが、良い文具が使えるというのは本当に嬉しいものです。 さてさて、今日は万年筆で原稿用紙に書いたような、「本格小説」の趣を感じさせる作品をご紹介致します。「制作団体Houser」さんの『折り返し』です。 良かった点 ストーリーは、サイトから引用しておきましょう。 季節は冬。十二月。寒さに耐えながら乗った電車に、見知らぬ場所まで運ばれてしまう。 こんな感じ。 ノベルゲームの文体、のような話で私は「ノベルゲームで通用する文体と小説の文体は恐らく違う」というような考えだったのですが、本作をプレイしてみて「作品によりけりだな」と思うようになりました。 立ち絵も一枚絵も存在しない(背景や音楽などはある)、或る意味で「硬派」な作品には、意外と「小説の文体」のようなものはマッチしますね。 しかも、本作の場合文章が「縦書き」ですから、余計「小説」を意識させられます。縦書きの作品はやっぱり数は少ないですよね。パッと思いつくものだと『ヒトナツの夢』くらいじゃないかな。 一般的に行われている横書きでもそうだと思うのですが、文章の見せ方というか体裁はやっぱり重要ですね。本作の場合は、特に前半くらいは画面全体にびっしり文章が表示されるので、少し読みにくさを感じることもあるかも。中盤~後半に掛けては、画面半分くらいの文章が出た時点で、次のページに移行したりするので、或る程度こうした読みにくさは解消されるんですけどもね。 やはり、適度にブランク行を設けて、読みやすくした方が「サウンドノベル」としては良いのかな、とも感じます。先に述べた『ヒトナツの夢』なんかは同じ縦書きでも特に読みにくいって事はなかったと思うので、その点工夫する余地があるようです。 ただ、実感としてこういう「小説」風の文体は、やっぱり縦書きですねぇ。こういう文体と縦書きの採用、この点は高く評価したい所。 内容に関して、ですが、ちょっとミステリー風味です。 前半部を読んでいった時、視点人物である「僕」は一体どういう素性の人間なのか、は全然分からないんですよね。けれども、読み進めていく事で高校生であること、電車で寝過ごしていることなどが明らかになっていきます。 こういう書き方は、やっぱり読者の興味を刺激してくれます。 又、作品の構成が、結論というかラストに挟まれる形でエピソードが展開されており、一工夫してあるな、と。だから、前半の本当に頭の部分が、ラストと直結してるんですよね。 そういう凝った形式の為、目の前で寝ている女の子は何者なのか?何で、彼女の名前を思い出さなきゃ声を掛ける事が出来ないのか?という興味を惹くクエスチョンを読者に投げかけ、それを紐解くような形でエピソードが展開されていきます。 ツカミ的なものはばっちりですよね。 又、「僕」と少女の会話が、何とも「文学っぽい」んですよね。 へんてこな受け狙いとかは一切無し。それぞれの発話も、妙に大人びている感じで、それが作風に良く合っています。意外とこの手の硬派な作品、好きなんですよ。 ああいう発話をする女の子は、もうそれだけで魅力的に映ってしまいますね。 ただ、「こりゃどうなるんだ?」とワクワクしながら読んでいたら、なんだか最後で肩透かしを食らってしまったような、そういう印象があるのも事実。 ミステリーっぽいと言いましたが、決定的な謎は未解決のままです。ラストで示されるギミックや余韻はかなりレベルの高いものがあると思うのですが、何か、もうひとつまみ、インパクトというかカタルシスを得られるような〆があったらな、と思いました。 多分、敢えて「しこりを残す」エンドにしていると思しいのですが、やっぱり少し消化不良感が無きにしもあらず。ここでばっちり〆がついていたら「吟醸」には確実にしていました。なんか偉そうな物言いで恐縮なのですが……。 全体的にレベルの高い作品だと思います。 珍しく「文学調」の作品ですし、縦書きも採用。立ち絵・一枚絵も一切無し。 それが良い具合に機能している、或る意味で希有な作品なんじゃないでしょうか? たまには、こういうタイプのゲームをプレイすると新鮮で良いですよ。 是非、プレイして貰いたい作品です。 そうそう、最近、書き忘れていたけれども、何かあれば、 kazenitsurenaki アットマーク gmail.com までどうぞ。
by s-kuzumi
| 2008-02-27 21:57
| サウンドノベル
|
Comments(0)
|
アバウト
カレンダー
メモ帳。らしきもの。
■レビューリストを作りました。随時更新予定です。こちらからどうぞ。
■ノベルゲームのコミュニティと素材ポータル始めました 制作者の方とプレイヤーを繋ぐような、そんなコミュニティを作りました。 こちらからどうぞ。 そして、ゲーム制作に利用出来る素材ポータルサイトも作りました。 こちらからどうぞ。 どちらも、是非ご覧になってみて下さい。そして、ご参加/ご利用頂ければ幸いで御座います。 フリーのノベルゲーム/サウンドノベルをレビューをやっております。たまに私のどうでもいい日々之記録が入る事がありますが、ご了承下さいませ。 ・“引用”としてスクリーンショットやストーリーの概略などの文章を使わせていただいております。問題が御座いましたらご連絡下さい。対処いたします。 連絡先はkazenitsurenaki あっとまーく gmail.com です。 ・レビューは「甘口~中辛」くらいです。 ・評価は完全に私個人の主観に基づいています。評価は「大吟醸」「吟醸」「無印(=純米)」の三段階となっております。参考までに。 で、実は、 こちらが本館です。ブログは別館的な位置づけなのですが、何故かこちらがメインになってしまっています……。バナーなんかもあるので、リンクを張って下さる方はご利用下さいませ。 リンクに関しては、お好きにやっちゃって下さい。許可なんかは一切要りませんので。 本館の方では、謎の音楽制作などをやっております。こっそり更新している事もありますので、たまに見てやって下さると嬉しいです。 カテゴリ
以前の記事
2024年 11月 2024年 05月 2023年 07月 2020年 08月 2020年 05月 2020年 01月 2019年 12月 2018年 09月 2017年 09月 2016年 12月 2016年 06月 2016年 04月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 10月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 検索
タグ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||