2008年 03月 29日
今日の副題 「時を繋いで心を繋ぐ」 ※吟醸 ジャンル:ファンタジック恋愛アドベンチャー(?) プレイ時間:一時間半~二時間くらい その他:選択肢アリ、エンドも何種類か。 システム:NScripter 制作年:2003年? 容量(圧縮時):98.6MB 道玄斎です、こんばんは。 今日も少し懐かしい作品をプレイしました。実は未プレイだった作品です。今から見るとちょっと垢抜けない所があるのは事実。だけれども私はかなり気に入りました。良い作品だったと思います。 というわけで、今回は「CSL」さんの『やさしいてのひら』です。 良かった点 ストーリーはサイトのURLを張っておきましょう。こちらからどうぞ。 良かったです。私はかなり気に入りました。 2008年の水準から見ると、確かに垢抜けていないような、そんな印象がある事は事実なのですが、作品の内容、ストーリー、雰囲気なんかを考えれば実はこのくらいの良い意味での「垢抜けなさ」が合っていたように思えます。 良い意味での垢抜けなさとは、実は「真摯な作品制作への姿勢」というものだったりします。そりゃ、みんな頑張って血のにじむような思いで作品を作っている事、想像に難くないのですが、本作を始めとする私好みの作品は、「作者様の熱い想いが伝わってくる」というか、そのダイレクト感が凄いあるんですよね。 作品の中身自体は、ある女の子が2003年から昭和42年(だったっけ?)にタイムスリップして一人の少年と出会う、というもの。舞台は別所温泉がイメージされているようです。最初読んでいった時には「上山田温泉」かと思いましたよw 長野トークですみませんw ただ、その少年との関係が実はあっさりと分かってしまうわけですが、でもだからこその感動があったように思えるのです。 読者は主人公(=ヒロイン?)七海と、過去に出会う少年「ナナちゃん」との関係を既に分かっている。その理解の上で、この二人の物語を時にやきもきしたりしながら見ていく事になります。「仕掛けがすぐにわかっちまってつまんねぇなぁ?」なんて事は全然ないので、ご安心召されよ。寧ろ「仕掛けが分かってしまうからこそ面白い」のです。 文章で気になった点が少しありました。 概して読みやすい文章なのですが、カッコでくくられる発話部分に「かわいいvv」みたいな、そういうのが混じってるんですよね。 これは、ちょっといただけないかなぁ? 以前何かの作品を落としてプレイした時にも始終「~(笑)」「~(爆)」とかついていて、どうにもプレイ出来なかった事がありました。 ちょっと、こういう形式の文体は、ノベルゲーム/サウンドノベルには合わないかもしれませんね。 けれども、こういうのって結構重大な問題で、「かわいいvv」とかは私は認められない所があるものの、「かわいい~♪」とかだったら意外といけそうな気も。 ノベルゲーム/サウンドノベルの文体の作法ってのが実はまだ確立していない事を示しているようで大変に興味深いですね。 読みやすさと、作風に合っていれば基本的に何をやっても良いとは思うのですが、まだまだ「ノベルゲームの文体」は研究の余地がありそうです。 さて、本作、実は二部構成となっていました。 第一部が、七海が過去でナナちゃんと出会い、別れるまで。第二部が現代に戻ってきた七海のその後みたいな感じで進んでいきます。 勿論、第一部の内容が第二部で継承されてストーリーが進んでいくのですが、登場人物の名前がみんな似ていたりして、少し理解しづらい点がありました。「えっと、この人は過去で~だったから、この人は過去のあの人の~??」みたいなw 多分、分かりづらいと感じたのは私の頭の程度があまり宜しくないからだと思いますw 少し複雑になると途端に分からなくなっちゃうんですよ、困ったもんです。 けれども、ストーリーの根っこの部分はちゃんと理解出来たつもり。 うんと乱暴に本作を纏めてしまうと「時を越える恋」みたいなそんな感じでしょうか。過去を継承して未来に繋げていく、みたいなテーマは私は大好きなのです。 ほら、『源氏物語』なんかを見ても、光源氏は、自分の奥さん(の一人)紫上に、自分の息子である夕霧を近づけないようにしていました。夕霧の母親である葵上はとっくに死亡しています。 なんで光源氏がそういう事をやったかってーと、光源氏自身が、自分の親父(桐壺帝)の奥さんであり、自分の義母である藤壺さんと密通してしまったからなんですよね。結果生まれる冷泉帝が桐壺帝の息子として育てられ、帝として即位するわけです。 で、光源氏は「息子も俺と同じ事すんじゃねぇか?」なんて疑心暗鬼に陥って、徹底的に紫上と夕霧を接触させないようにするわけで……。 まぁ、ちょっとテイストが違いますが、過去の出来事が現在、そして未来へ影響を与えていき、過去を踏まえた上での未来が開けてくるような、そういう作品が好きなのですよ。過去があるから現在がある。現在があるから未来がある。これはとても当たり前の事なんですが、こういうのをしっかりと描いていく作品は実は少ないですよね。 そういう意味でも本作は私にとっては満足のいくものだったのでした。ちょっとだけ現在に戻ってきた時の急展開には戸惑いましたがw ここらへんの急展開ももう少し処理出来たら良かったなぁ、と。 選択肢がそれなりにあって、エンドがいくつか分岐するようです。 中には第一部だけで完結してしまうエンドがあるわけで、実はトゥルーエンド(?)を見ていない、なんて人がいるんじゃないでしょうか? それが第一部だけでもばっちり完結しました的に、纏まってしまっているので、却って分かりづらくなっているような所がなきにしもあらず。ですので、出来たらエンドリストなどが付いていたら分かりやすかったかな?と感じましたね。まぁ、「CGモード」で空きが沢山あったらきっとそれはまだ肝心の部分を見ていないという事でw けれども、やっぱりトゥルーエンドのラストはいいですねぇ。 結構、本作は要所要所に「泣きポイント」があるんですが、最後のシーンでやっぱり目頭が……。名作の一つだと思いますよ、私は。恋愛モノではありますが、今までには無かったテーマや設定だったので凄い楽しめます。 全体的に見て、良作だと思いました。 ただ、少しだけ惜しいというか、そういう所があったのも事実。第一部と第二部の繋がりがスムーズだったりすれば今よりも凄い作品に化けそうな、そんな作品でした。 まだプレイしていない方は、是非プレイしてみて下さい。 もしかして過去にプレイして、且つトゥルーエンドを見ていないなんて人もいるかもしれません。CGモードがスカスカならきっとそれはトゥルーを見てませんよ!是非最後まで見て欲しい作品です。
by s-kuzumi
| 2008-03-29 21:18
| サウンドノベル
|
Comments(2)
どもども、CSL Softwareのk-tnです。
snow destiny 2ndに続きレビューありがとうございますー。やさしいてのひらは、小説投稿掲示板で人気投票をして、一番人気の作品をゲーム化するという企画で選ばれた作品です。当時自分たちにできることを目いっぱいやってみたつもりです。 >文字のおかしさと名前のわかりにくさ これは完成直後から多くの方に指摘されました。”翼の少女”以降では修正してます。また、読み返しが不十分、既読スキップができないなどの不具合も改善しました。 >トゥルーエンドのラストはいいですねぇ。 気付いてくれてありがとうございます(笑。実は、想い編に続いていくエンドの方は当初原作者が考えたエンディングで、この(恐らく)道玄斎さんがおっしゃっているトゥルーエンドは、CSL内で書き起こしたものです。僕は個人的にこちらのほうが気に入っています(笑。 現在新作の原作・キャラクターラフが出来上がり、そろそろ特設ページを作ろうかと考えています。今後ともCSLをよろしくお願いしますー。
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s-kuzumi at 2008-04-13 23:17
>>k-tnさん
こんばんは。こちらこそいつも書き込み頂いて恐縮です。 改めて、サイトの方を拝見させて頂くと、とても多くの作品をコンスタントにリリースされており、頭が下がります。 しかも、時系列に沿って見ていくと、確実にクオリティが上がっているという。それでいて、尚かつ「優しい手触り」はどの作品にも共通していて、毎回毎回楽しませて頂いております。 新作の特設ページ、楽しみにしています! 最近は中々忙しくてゲームの時間が纏まってとれないのですが、是非、新作ご発表の際には、また取り上げさせて下さい。 どうぞ、今後とも宜しくお願い申し上げます。 |
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