2008年 04月 19日
道玄斎です、こんばんは。 そろそろ転職を考えようかと思います……。残業自体は構わないのですが(というか勤務時間外でないと処理出来ないものもありますからね。時間的な問題で)、残業代が支給されないとか、ちょっとアレな感じなのでw あまりに気になったものですから、某公的な機関に問い合わせをしてみました。 雇用契約書などの記載事項を見て貰ったり、あれこれとやってみた所、やはり法的に問題があるようです。 まぁ、実際の所何でもかんでも杓子定規に法律に合わせていたら、世の中回っていかないのですが、頑張った分のリターンが、時間であれ金銭的なものであれ、少しでもあったら、と思います……。 まぁ、実際問題、毎月お給料は振り込まれているので、まだ恵まれている方なのかもしれません。ただ、帰宅時間が午前一時過ぎとかになると、流石にちょっと……。 と、ここまでが話の枕です。 愚痴っぽくなって、すみません。 というわけで、のびのびになっていた講義三回目スタートです。 ■おさらい ・オタクと呼ばれる人は(割とライトな文化の)複数のデータベースを持ち、それらのデータをクロスして物事を見ることが出来る。 ・日本の古典文学(=日本文化)は、実はとてもライトなもので、現在のアニメやマンガ、そしてノベルゲーム/サウンドノベルなどと共通するものが多い。 という事でした。ざっと振り返ってみましたよ。 少し補足しておくと、例えばイカニモな伝統芸能の技術保持者と同じく、いや、それ以上に「今」現在の文化的な状況を「伝統的な視点」で捉える事が出来るのが、オタクなのです。 では、早速本論に入りましょう。 ■オタクの日本文化継承性 先ほど、伝統芸能の伝承者についても触れました。 彼らは、1000年くらい前(或いは800年とか、はたまた400年とか)の伝統を、保持して「保存」しています。 勿論、中には「保存するだけではなくて、新しいものを生み出さないと死んだモノになる」と果敢に新たなステージにチャレンジする方もおり、そうした方は本当に尊敬出来ます。 ここで、伝統芸能の発祥という問題について考えてみましょう。 何もない所からは、何も生まれない、というのは当然のことで、何かが新しく生まれる際には、必ずそれの元となった考え方なり芸術なりがあるものです。 このブログだって、作者様の素晴らしい作品がなければレビューは出来ませんし、先達の偉大なレビュワーの方の影響も物凄く強い。 そうした先達のお力を有形無形でお借りしつつ、このブログは運営されていたりします。 当然、伝統芸能もある日降って湧いたのではなくて、何かしらその基礎となるようなものがあるのです。 前回の講義でお話しました『竹取物語』。これが出来る前段階として『はこやの刀自』(本当はこの「はこや」の部分も漢字なんですが、ちょっとすぐに出てこないのでひらがなで勘弁してやって下さい)という作品があった、というのもちらっとお話しましたね。 この『はこやの刀自』自体も、仙人というか仙郷というかそういう中国風のストーリーが背景にあるのです。 だから、うんと分かりやすく説明すると、 中国の物語→『はこやの刀自』→『竹取物語』 となるわけです。 勿論、中国の物語に日本のその他の物語をプラスして『はこやの刀自』が出来て、更にそれに他の物語がミックスされて『竹取物語』となっています。 で、この『竹取物語』は、その後の日本の物語文学の大きなマイルストーンになりました。 そこから、さらに紆余曲折を経て、和歌なんて文化も吸収し、物語文学は『源氏物語』という或る意味で最高到達点に達するわけです。 で、問題はその後、『源氏物語』は出来映えが大変宜しい作品でありまして、「源氏みざる歌詠みは遺恨のことなり」と藤原俊成をして言わしめる事となります。 俊成は、藤原定家のお父さんですね。定家はご存じでしょうか?いまだに存続している「冷泉家」のご先祖様です。過去からの日本の文化人トップ3を挙げるなら、必ず入ってくるような人物ですかね。 一旦『源氏物語』という作品が、その地位を確立してしまうと、フォロワーというか、そうした作品も多く登場する事になります。 勿論、そうした中で、『源氏物語』の影響を受けつつも、新たな物語を作ろうとするような動きもあるのですが、それも或る意味「安易な源氏のパクリは創らん!」と源氏を意識している部分で、やっぱり既に『源氏物語』の影響下にあると考える事も出来ます。 『源氏物語』以降で、前回挙げた作品で、オリジナリティのある作品はやっぱり『狭衣物語」が一番大きいでしょうかね。 この『狭衣物語』。ストーリーも何となく暗めですが、非常に良く出来ていました。 しかも作中の和歌が又素晴らしい。 こいつは、中世期くらいには『源氏物語』・『狭衣物語』と並び称される作品にまでなりました。 このように、影響力の強い作品、というのは定期的に出てきまして、その後の作品の方向性を或る程度縛ってしまいます。 その中で、やっぱりオリジナリティの強い影響力を持った作品が出てきて……というのが物語文学の大きな流れ。 ■ノベルゲーム発生の環境 さて、こういう流れ、どっかで見たことはありませんでしょうか? そう、すっかりそのままノベルゲーム/サウンドノベルを取り巻く作品状況に似ているのです。 やっと、ノベルゲームについて色々語る事が出来る時がきましたよ。 私は良く「ぼたんゆきテイスト」とか「ぼたんゆきタイプ」という事を良く言っています。 作品の大まかな流れが『ぼたんゆき』という作品に似ているものを、そう呼んでいるわけです。 『ぼたんゆき』に関しては、まぁネタバレをしてしまうと、所謂「姉妹交換」というのが、最大の特徴となっています。 亡くなってしまった姉(もしくは妹)の代わりに、妹(或いは姉)が主人公(男性)の恋人になる。勿論、男はそれに違和感を感じつつも目の前にいる恋人が本当は妹(或いは姉)である事に気がつかない。だけれども最終的にそれが判明してしまい、その時主人公は亡くなってしまった姉(或いは妹)に対してその想いを断ち切り、目の前にいる女の子への気持ちに気付く。 と、こんな感じのストーリーラインの作品が私の言う所の「ぼたんゆきテイスト」な作品だったりします。 皆さんも結構プレイしているんじゃないでしょうか?? こういうストーリーの源流として私は『ぼたんゆき』を捉えていて、それ故にの「ぼたんゆきテイスト」という発言なのでした。 こういう影響力の強い作品は、 「あれには敵わない」 「あれより良いものが出来るかも」 「あれなら、こっちの方がいい」 「あれみたいのを創りたい」 と、さまざまな「あれ」として一つの基準になりうるものです。 で、例えば「あれ以上のものを創りたい」という、読者が今度は制作者となり、また新しい一つの基準となる作品を創っていく……。 これはまさに『源氏物語』或いは『狭衣物語』を一つの「あれ」という基準として、新たな物語が生み出されていく状況に似ています。 ノベルゲームにも、こういう流れを見て取る事が可能なのではないかと思いますが、如何でしょう? ここで、もう一度古典文学のお話にもどります。 『源氏物語』『狭衣物語』以降、物語の製作は一般的に停滞した、と捉えられています。 というのは、鎌倉時代以降も物語作品は創られ続けているのですが、それらの多くは『源氏物語』『狭衣物語』の安直な焼き直し、というそういうレッテルが貼られているのです。 だけれども、こうした物語群(ここでは、鎌倉時代物語と呼んでおきましょう)は、一つ一つ読んでみるととても面白いし、その中でも影響力が強く、その後の鎌倉時代物語を牽引していくような、作品が内部で生まれていたりもするのです。 以前、このブログで二回ほど取り上げた『我身にたどる姫君』というのは、その最末期の物語作品ですね。物語が爛熟して最後の最後、熟成しきって腐ってしまう一歩手前、そういう時期の作品です。 けれども、そこで物語の歴史が終わってしまうかと言えば、そうじゃない。 古典の物語は今度は「御伽草子」と装いも新たに、少しファンタジックな作品が主流となっていきます。そして、こうした物語と、その製作過程は現代のライトノベルまで、続いていくのです。 というわけで、第三回目の講義はこれにて終了。 結局、第四回くらいまでやることになりそうですね……。 まぁ、好き放題書いているので、或る程度長くなっちゃうかな?という危惧はあったのですが……。 では、次の講義でお会いしましょう!
by s-kuzumi
| 2008-04-19 20:42
| 日々之雑記
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