2008年 05月 05日
今日の副題 「全てを白く染め上げて」 ジャンル:民間伝承サスペンスホラー(?) プレイ時間:1ルート1時間くらい。 その他:選択肢有り。ルートは4つ。エンドは6つ。 システム:LiveMaker 制作年:2008/3/29 容量(圧縮時):75.6MB 道玄斎です、こんばんは。 ちょっと色々と問題があって鬱々としたものを抱えつつも、折角の連休という事なので、作業の合間にゲームをプレイしています。 今回は、民間伝承というか民話のようなものをフィーチャーした作品で、完全に私好みのツカミを持った作品でした。 というわけで、「空色天体博物館」さんの『春裂きの悲鳴』です。 良かった点 ストーリーは、サイトのURLを張っておきましょう。こちらからどうぞ。 最近、なんだか舞台が冬、といった作品をプレイする機会が多いように思います。 別に意図的に選択しているわけではないのですが、気がついたらそれっぽいものが多い。 そういえば、ホラーっぽいものも多いですね。 私の場合、ある時期はやたらと短めの短編ばかり好んでプレイしたり、と気がつけば何かしらの傾向が出ているようですので、今回は「冬」「ホラー」っぽいものの強化週間という事でw 本作は、何より「民話」というキーワードに引かれてダウンロードしました。 ご存じの通り、私は民話とか異常に好きなんです。というのも、かなりネイティブなレベルで伝承やら信仰やら、はたまた出来事なんかを保存しているからに他ならないわけで、民話そのものも大好きですが、それと同時に「その民話が生まれてくる背景」みたいなものにも非常に興味があります。 ともあれ、本作のイントロは中々魅力的でした。 雪童という民間伝承というか民話を軸に、東京に在住している大学生の主人公が友人とその妹を連れて帰省する、という、いかにも「何か起こりそう感」がとてもいいです。 民話という一つのテーマを先出ししている事によって、「どんな事件が起こるんだろう?」と読者をワクワクさせてくれるイントロです。 で、もう一つ、個人的に着目したのは、舞台描写です。 特に「何時代」とかそういうのが書いてあるわけじゃないんですよね。なんだけれども、主人公の友人、桂秋の衣装(俗に言う書生風)だったり、はたまた「帝都」という言葉だったり、「明治なんてとっくの昔」という表現などから、恐らく「昭和の初期」が舞台なんだろうなぁ、と自然にストーリーを進めるにつれ、プレイヤーが理解出来るのです。 「帝都」という言い方から、日本が「大日本帝国」だった明治二十二年~昭和二十二年という数値が、そして「明治なんてとっくの昔」という発言から恐らく昭和の初期なんだろうなぁ、と舞台の年代を狭めていく事が自然と出来てしまうのです。 ただ、明治ってそんなに昔の事なんでしょうか……??私の感覚だと明治時代って「ちょっと前」くらいのイメージなんですよね。祖父とか明治生まれでしたし。 祖母の祖父が幕臣で、刀傷があった、なんて話を聞いた事もあるから、実は幕末くらいまでは、私は意外と近い時代のものとして捉えてしまいます。 そういえば、何かの本に書いてあったのですが、京都に住んでいる長生きおばあさんに新聞記者だかが「戦争の体験をお話下さい」と質問した所、なんだか妙な解答が返ってきて、よくよく聞いてみると「第二次世界大戦」じゃなくて「戊辰戦争」の事だった、なんてのを以前読んだ記憶があります。 そもそも京都の人は「先の戦争」っていうと例の「応仁の乱」というイメージがあるそうで……。 っと、脱線してしまいましたね。 ともかく、さりげなく配置されている言葉や衣装から、舞台の年代が分かってくる、というのは上手い手法だったと思います。書生風の衣装かっこいいですよね? それはさておき、ストーリーの方の解説に。。 全体的な印象を述べると、テンポが良く、纏まっているけれども、もう少し細部に突っ込んだ描写が欲しかったな、と。 少しテンポが良すぎたとも言い換えられるのかもしれません。 イントロ部分は先に述べた通りで、主人公=創一とその友人で民間伝承収集が趣味の桂秋、そして雑誌記者をやっている桂秋の妹である文月という登場人物が示されます。 ここで、大体の役割分担が判明します。 主人公=今後、帰省先の村で起こった事件に巻き込まれ、事件解決の為のキーパーソン 桂秋=事件を、民間伝承の視点から捉え、解決へ向けてサポートする役 文月=記者の経験を生かしつつ、兄の知識と連携し主人公を支えていく役 と、大体こんな感じのイメージが湧きます。 言うなれば、桂秋と文月の竹沢兄妹は「探偵役」なんですよね。 普通、探偵役が主役の作品が多いわけで、そういった意味で、本作は新鮮みがあって良かったと思います。 が、意外とその「探偵らしさ」みたいなものが出てこないのです。 や、勿論、上記に述べた役割を一定以上、この二人は果たしているんですよ? だけれども、物語の核心部分にもっともっと踏み込んでいって欲しい脇役だと個人的に思いました。凄くオイシイ所にいるキャラでありながら、物語の核心部分にはやっぱり「部外者」として立ち入れないような、そういう感触があってそこが少し気になりました。 要するに、もう少し民話と、村で起きる事件との連続性というか、そういうものを強く感じたかったなぁ、という事なのです。 全てのルートを見ると分かるのですが、「民話は民話。今回の事件は今回の事件」と断絶があるんですよね。民話自体の存在が実は薄くなってしまっていて、そこらへんを上手く結びつけられたらより良い作品になったのではないかと愚案する次第。 さて、もう二人登場人物紹介しておくと、一人は村に住む主人公の幼なじみにして婚約者の華乃がいます。 彼女は村の住人という立場と、主人公の婚約者という立場で物語にかなり密接に関わってくる立場です。 もう一人、最重要人物の一人なんですが、凍織という主人公の妹が……。 今更、なんですが、恐らく先に私の述べたかった事は、この凍織に関わる問題なんでしょうねぇ。彼女はまさに本作に於けるヒロイン的存在なわけですが、彼女と民話との断絶が少し気になったわけです。 私だったら、こうする、というのを書いてみます。例えばですよ? 事件を追っていくにつれ、文月が東京に戻って村の事件を更に詳しく調べて戻ってくる。平行して桂秋が民話という視点から、より深い考察を、事件に加えていく。 そうする事で、同じような事件が何十年、はたまた百年単位で昔から、断続的に起きている事が判明する。それぞれの事件を調べてみると、どの事件でも「今回の事件」で起きていたような悲劇があって、それがいつしか伝承へと変わって行く……。 みたいに、キモの一つである雪童の正体やら、その発生やらに踏み込んでいくようなものがあったら、良かったんじゃないかと。少し凍織がぽんっと伝承からも、現実世界からも浮いてしまっているんですよね。だから凍織を伝承の中に埋め込んでやると良かったのかな、なんて。 ただ、今述べたのは、飽くまで「私なら……」という超個人的な意見ですから、あまり気にしないで下されば幸い。 結構辛口で書いているわけですが、トゥルールートは良かったです。 事件の意外な真相が判明したり、ちょっと鬱っぽい終わり方も私好みw そういえばタイトル画面のイラストなんて雰囲気があって、とても良かったですよ。 他のルートも、例えば華乃エンドなんてのも私は結構好きなんですがw ともあれ、昭和初期の独特な雰囲気がひそやかに息づいており、どのエンドも中々雰囲気があります。微妙にヤンデレなのかも?w 民話好き、或いはちょっと暗いエンドが好きな人はプレイしてみて下さい。 私も折角良い刺激を受けたので、柳田国男全集でも書庫からひっぱってきて「雪女」絡みの伝承を調べてみるとしましょうか。
by s-kuzumi
| 2008-05-05 22:24
| サウンドノベル
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