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久住女中本舗

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2008年 05月 17日

フリーサウンドノベルレビュー 『黄昏の姉妹、終末のラジオ』

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今日の副題 「無限の静寂の中で」

ジャンル:終末ラジオステーションノベル(?)
プレイ時間:1時間半程度
その他:選択肢無し、一本道。フルボイス。本レビューはフリー版にてプレイ。
システム:NScripter

制作年:2008/5/?
容量(圧縮時):115MB



道玄斎です、こんにちは。
五月には、二つ楽しみにしている作品がありました。
一つは、例の『あやかしよりまし』の新作。そしてもう一つは、今回取り上げる「花を吐く抄女」さんの『黄昏の姉妹、終末のラジオ』でした。
『あやかしよりまし』より先にリリースされたので、早速プレイ、というわけです。
良かった点

・独特の雰囲気、台詞回しは健在。

・ラストの余韻が良い。


気になった点

・明確なストーリー性(起承転結など)を期待すると肩透かしを食らうかも。

・前作『黄昏の姉妹、終末のマリアージュ』を予めプレイしていた方が良い。

ストーリーは、サイトの方から引用しておきましょう。
ラジオは黄昏、閑古鳥はつと酔っぱらう。
時の未来に人類が未曾有の奇病にかかり、全滅に近い状態となった頃、
日本人向け世界発信衛星ラジオのDJ1人、ディレクター1人、マスコット1人の物語。
全員とも人間ではなく、機能限定自律活動型のアンドロイドである。
発信すべき地球はもはやリスナーはほぼ失っている状況ではあるが、この3人の放送に特に変わることはなし。
その限りなき零のリスナーと、無限に続く放送の日常的な所を中心に進めていれば・・・・・・

こんなストーリーになっています。

何とも形容しがたい不思議な感触の作品です。
そもそも「花を吐く抄女」さんの作品は、或る意味で捉え所のないような、「雰囲気」そのものを楽しむようなものが多い気がします。

それはキャラクター同士の軽妙でウィットに富んだ会話(ちょっぴり古典的)のやりとりだったり、どこか懐かしさを感じさせながらも少しだけ輪郭がぼんやりとした世界観だったりするわけですが、何故かそれが物凄い魅力的に私には感じます。

タイミングがあえばイベントなどで製品版を購入するわけですけれども、どうしても無視出来ない存在感がそこにはあるように思えるのです。

一つには、酔狂で古典文学で修士号まで取得している、という私のバックグラウンドに拠るものも大きいのかもしれません。
というのは、「花を吐く抄女」さんの作品は、どこかしら「古典」の匂いがするからです。キャラクター同士の台詞の掛け合いは、直接的にとても明快な言葉で以てやりとりをしていく、というのではなく、核心を微妙にずらしながら言葉遊びを楽しみつつ、内容に迫っていくような。
或る意味で「遠回しに意志を伝達していく」みたいな日本の文化的なものすら感じさせるのでありました。

本作もその例に漏れず、「宇宙ラジオステーション」という舞台でありながら、登場人物の櫻さん、そして雉女さんの古式ゆかしいやりとりが、作品を支える大きな魅力の一つになっています。それに加えてキティというマスコット的なキャラもいることで、良いアクセントが付いています。

正直、文章はそういう凝ったものであるので、読みにくいと感じる人もいるかもしれません。
毎回言っているのですが、江戸の遊女言葉みたいな、そういう言葉が多様されるのでw

さて、本作は前作に当たる『黄昏の姉妹、終末のマリアージュ』を予めプレイしていないと、後半から付いていけなくなる部分があります。
というよりも、より深く本作を楽しむ為には、前作のプレイが必須、という感じでしょうか。
前作で姉妹達が聞いていたあのラジオ。そのラジオのステーションが本作の舞台なのですから。

どうやらプレイを進めていくと、本作は前作より以前の時間~前作と重なる時間(+前作を追い越す時間?)と相当長い範囲でのタイムレンジがあるようです。
勿論、前作に対して、独立性を持っているのは確かなのですが、やはりタイトルそれ自体が示唆しているように、前作をプレイしておいた方が良いでしょう。

ともあれ、登場人物(?)がヒューマノイドアンドロイドだったり、中央局が無くなっても終末の世界に向けてラジオを発信していくような、そういう雰囲気がとても良いですね。
あんまりここで語りすぎても、良さが伝わりにくいので、是非プレイして確かめてみて下さいな。


気になった点としては、起承転結のようなものを期待すると少し肩透かしを食らうかも、というあたり。私自身はこういう作品があっても良い、と思う肯定派なのでそんなに気にならないポイントなんですが。

あとは、台詞回しが少し難しいので、声優さんが誤読してしまっている所があります。
「糊口を凌ぐ」という表現は普通「ここうをしのぐ」と訓むものと思しいのですが、「のりぐちをしのぐ」としてしまっている箇所があったり、「得心もいく」が「えとくもいく」となってしまっている所など、読み間違いなどが散見されました。
まぁ、そうはいっても一文が割と長目で、ああいう独特の文章ですから間違いは必然的に起こりそうですよねぇ。あんまり細かい事を言ってもアレなんですが、一応。


今回も楽しませて貰いました。
そうですね、そろそろ少し「いつものテイスト」から逸脱した作品も見てみたい気もします。『挽歌~』みたいなさ。
良さや特徴は保持しつつ、少し切り口を変えてみるとかまだまだ、色んな可能性がありそうで、次回作も楽しみにしております。

それでは。

by s-kuzumi | 2008-05-17 14:37 | サウンドノベル | Comments(0)
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