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久住女中本舗

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2008年 06月 13日

フリーサウンドノベルレビュー 『京都幽幻秘譚』

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今日の副題 「勢いで見せる少年漫画風伝奇?」

ジャンル:少年漫画風伝奇(?)
プレイ時間:1時間
その他:選択肢はあれど、ストーリーは一本道。選択肢によってラストで……。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2008/6/01
容量(圧縮時)13.0MB


道玄斎です、こんばんは。
最近、なんだか幽霊とかお化けとか、そういうものばっかりプレイしていないでもないのですが、今日も今日とて、ちょっぴりそれっぽい作品をご紹介。
というわけで「*AB complex」さんの『京都幽幻秘譚』です。
良かった点

・さくさくと読めるテンポの良い作品。

・源頼光とか、渡辺綱とかそういうのも出てくるので、歴史好きにもお勧め。

・実在の京都の名所が登場。何と背景写真も実物を使用(?)


気になった点

・少し全体の描写が性急になってしまっており、説明不足の所も。

ストーリーは、サイトから引用しておきましょう。
主人公の名前は穏明寺 貴弘。(下の名前のみ変更可)
霊感はそこそこあるものの、先祖が陰陽師ということなど昔話にしか知らない、
普通の生活を送ってきた高校生。

ある日、夜中に目が覚めると、そこには平安貴族風の奇妙な幽霊が…

記憶がないというその幽霊に、クラスメイトの黒野梅子が「桔梗の君」と名付ける。

桔梗に付きまとわれて迷惑する貴弘は、桔梗の記憶を戻して早く成仏させたい為、
手がかりを求めてしぶしぶ京都へ―――

その時京都では、鬼が出没するという噂が立っていた。

こんな感じのストーリーです。


さてさて、京都がメインの舞台となる作品です。
ちょっとした小旅行が味わえたりします。というのも、背景画像がそのまま、作中で登場する場所の写真なんですよね。というわけで、実在の場所なんかが出てきます。

一番有名なのは「晴明神社」でしょうか。
例の、安倍晴明の神社ですね。私も過去に二回くらい行ったことがあるんですが、今はどうやら改築されてとっても綺麗な神社になっている、との事。本作での写真も改築後、という事でしょうかね? ちなみに神社本体ではなくて、私自身は「一条戻り橋」の方が興味深かったりします。
それはそうとして、京都の街ほど、分かりやすい街はないでしょう。
一条、二条という条と、~通りという通りさえ覚えておけば何とかなります。昔は「条」と「坊」で表したんですけれどもね。

肝心の作品の中身ですが、運命に導かれるままに京都に行って、悪者と戦うという少年漫画風のストーリーですね。
割と、ぽんぽんっと話が進んでいくので、ストレスを感じたりする事は皆無。なんですが、全体的に均一なテンポで進んでいってしまうので、そこが少し気になりました。
というのは、やっぱり一つの作品の中でも濃淡があるわけでして、力を入れて描写すべきところ、というのがあるはずです。
本作の場合ですと、京都に着いて情報収集を終えた辺りから、事件の真相に切り込んでいく辺り、ここにもうちょっと比重を置いても良かったのではないかと。
テンポが良くてプレイしやすい、という長所は多いに評価したいのですが、クライマックスとかそこらへんはじっくりと描写して欲しいなぁ、と。
どうにも、説明不足になっている所とかもあるんですよね。

例えば、晴明神社の神主さんの特質とか(恐らく、昼間と夜だと能力が大幅に異なるタイプで、夜はアノ人の御霊が入ってると思しい)、梅子ちゃんの能力の由来とか、或いは、事件そのものの必然性とかも、少し薄い感じでした。

で、歴史マニアとかには垂涎の源頼光とか頼光四天王とか出てきます。いや、正確に言えばその子孫ですね。というわけで、敵は土蜘蛛です。
こういう方面に明るい方は、きっとこの説明で「ニヤッ」とされているでしょうw
ご存じかと思いますが、土蜘蛛についても少し補足を。
土蜘蛛って実は、文字通りの化け物ってんじゃなくて、朝廷にまつろわぬ土着の人たちを指していたらしいんですよ。大抵の場合、神話ってそういう「中央にとって都合の悪い奴ら」を化け物にしてしまうんですよね。これは蛇足ですね。

で、折角ここまで歴史とのリンクを張っているんですから、是非もうちょっとお話を長くして、他の四天王とかも出して欲しかったなぁ、と思いました。
頼光四天王には、「金太郎」で有名な「坂田金時」とかもいるんですよ。
歴史のオイシイ所を加工して、本作が出来ているわけですので、もうちょっとそこらへんへ切り込みがあっても良かったのかな。


とはいえ、テンポがよくて、それこそ少年漫画風ですから、勢いでガシガシっと読んじゃうとグーです。さすがにラストはしっとりとしており、良い雰囲気でした。
歴史好きにお勧めの一本ですね。
伝奇って、架空・実在を問わず「過去の異能者」と主人公(たち)とのリンクをはかったりするので、本作も伝奇って事になるのかな?
気負わず、さっくりと楽しんで欲しい作品です。京都旅行の前に予習としてもどうぞw

それでは、また。

by s-kuzumi | 2008-06-13 22:18 | サウンドノベル | Comments(0)
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