2008年 07月 05日
今日の副題 「世代間と男女間のディスコミュニケーション」 ジャンル:学級崩壊系ミステリー(?) プレイ時間:2時間程度 その他:選択肢有り。バッドエンドも。 システム:吉里吉里/KAG 制作年:? 容量(圧縮時):33.4MB 道玄斎です、こんばんは。今日はちょっと用事があってごたごたしていたのですが、昨日からプレイしているゲームをご紹介。「Nightmare Syndrome」さんの『オトナ/コドモ//ワルイコ_ダレダ.』です。 若干、猟奇的なシーンもあったりするのでニガテな人は注意。 良かった点 ストーリーは、ちょっと長いのでサイトのURLを張っておきましょう。こちらからどうぞ。 今まで、あまりプレイしてこなかったタイプの作品です。 舞台は中学校。ちょっと前に問題になった所謂「学級崩壊」を起こしているクラスでの物語です。なんだかちょっと鈍感で人の心の機微に疎く、又めんどくさがりの新任の教諭が、その問題のクラスの担任に就任したところから物語は始まります。 先ず、イントロ部分が、前任の先生の引き継ぎ書といいますか、引き継ぎの為の資料から始まっており、中々良い出だしでした。一気に興味を惹いてくれるというか、その後をプレイしたくなるような、グーなイントロ。 面白いのが、ちょっとヤバい中学生達となんだか鈍い(というか単にめんどくさがり?)担任トーノ先生との掛け合いです。 生徒達の悪行に対して注意するわけでもなく、淡々と教師としての義務だけを遂行していくタイプの教師ですね。 この教師と生徒達の総元締め的存在、チエとのやりとりも中々軽妙で楽しい。このチエというキャラの造型もいいですね。あと一歩厭なヤツにしてしまったら物語が成立しなくなってしまうギリギリのバランスで成り立っているようなキャラです。というか、他の生徒がみんな無軌道で、或る意味で壊れてしまっているので、唯一或る程度の正常さを見せるキャラという事になりましょうか。 正直、チエ以外の生徒は殆どがちょっと読んでいてむかつきますw 私が個人的に「うわっ、厭なヤツ」と思ったのはキキ、カナコでしょうか。エツ君なんて厭味のないキャラもいるんですけれどもね。 ただ、「厭なキャラだな……」という感想だけで終わらないのも一つの特徴。トゥルーエンドまで行くためには、クラスの生徒達のバックグラウンドをチエ、或いはトーノ自身で調査し、どういう問題を抱えているか、を突き止める必要があるからです。 調査を通じて、物語を進めていく事で「厭なヤツになってしまったその理由」がちゃんと判明するわけで、こういう言い方もどうかと思うのですが、一種の哀れみを感じてしまいました。 調査の過程で、大幅に評価が変わったキャラもいます。 例えばジロー。彼女であるカナコに対して暴力を振るいまくるタイプの男なんですが、その理由を知った時に「ああ、何か分かるなぁ」と妙に共感してしまったんですよね。そこで共感出来るのが良いのか悪いのか、善悪の判断は兎も角、確かに分かる部分が存在していたのです。ユキチなんかも、結構自分と近い部分はありますし、かなり厭なヤツのスグルにもやっぱり共感出来てしまったんです。 してみると、男性キャラは私の視点から見て、相当程度共感出来るキャラになっていたというわけですね。 敢えて、言うならば誰しもが心に抱えている弱さとか、そういうものを最大限増幅して或る部分でデフォルメしたキャラが、本作のキャラという事になりましょうか。 今、弱さという言葉を使ったんですが、この弱さって「メンタル的な強さ/弱さ」とは別物ですよ。メンタルが強いからといって、それが必ずしも強さとイコールになるわけじゃないし、メンタルが弱くても強いヤツもいる。メンタルとまた別次元の強度というくらいの意味になりますか。 自分の経験上、メンタルが強い人ほど、ある種の弱さやそれに付随する危うさみたいなものを持っているような気もするのですが、そうですね、そうしたものを感じさせるキャラとしてチエという存在を定義する事も出来そうです。 一方で、女子に対しては、共感度が意外と低かったんです。 女性ならではの視点で書かれた(部分がある)という作品の性質上、男である私が共感出来ないのも仕方ないのかもしれませんが、まぁ、決定的に男性には分からない事情が問題の俎上に載ったりするので、まぁ仕方ないのかな、ともw ゲームという事で、一定上のデフォルメが施されているハズですので、女子のキャラが語ることが必ずしも現実の女性の実感とも限らない、と重々承知しているのですが、それでもやっぱり、プレイしてみた女性からの反応が知りたいと思ってしまいます。 特にカナコ絡みのバッドエンドですよね。ちょっと色々と考えさせられるエンドでした。 ここでまた少しだけ脱線すると、カナコに対して、私が妙に反発してしまうのは或る意味で彼女はとっても「女性らしい」からだと思うのです。それは良い意味でも悪い意味でも。女性である事を忌避しながら、女性である事にある種依存しているような、何かそういうものが私には透けて見えてしまって、どうしても、ね……。 先ほども述べたようにカナコ自体には共感度は低いものの、そのカナコを助ける存在としてのジロー(と彼の行動や心理)には共感出来てしまうのでした。だから、カナコとジローというコンビとして捉えると、意外にもすんなり受け入れられてしまう。 順番が少し前後するのですが、本作は大きく分けて二つのパートに別れています。イントロから始まる物語の前半部。通常のノベルゲームのようにプレイする事が可能なのですが、中盤から調査パートに入ってきます。その日、チエかトーノ先生かどちらで行動するか選択し、更にどこに行き、誰と話していくのか、というその作業の連続になります。 カナコ絡みのバッドエンドもこの過程でとある選択をすると、到達出来ますよ。 で、どうやら担任たるトーノ先生自身も、担当するクラスの子供達のように、幼少時からある種の問題を抱えて大人になってしまったようです。プレイしていくとちょっとづつそれが明かされていくのですが、最終的に主役の一人たるトーノ先生の問題とトゥルーエンドが重なり合わないので、そこが少し気になりました。 もう少し、ラストらしいラストで、トーノ先生の問題、そしてチエの問題に踏み込みそれを或る程度解決させるなり、或いは破綻させるなり、主役の二人の結末を見てみたかったです。 大人からみて、中学生の子供達は理解出来ない完全に別のイキモノという視点が出てきます。が、やはり私は、男なので寧ろその作品を或る意味で貫くテーマを「男は女を理解出来ない」というように読み替えてしまっている部分がある事にプレイ後、気がつきました。 実際に男性にプレイしてみて貰いたいのですが、割とそういう感想を持つ人もいるのではないでしょうか? 少し、クセがあるものの、結構読み応えもあり、「プレイした感」を強く感じる作品です。 吟醸にすべきか、かなり迷ったのですが、一応無印という事で。 是非、女性の感想を伺ってみたい作品です。 そうそう、結構クリアがシビアなので、作者様のサイトにて配布されているパッチをちゃんと当てた上で、攻略サイトを探してみてもいいかも? それでは、今日はこのへんで。
by s-kuzumi
| 2008-07-05 18:48
| サウンドノベル
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