2008年 07月 28日
今日の副題「Le mal dont tu deburas mourir」 ジャンル:幻想ノベルゲーム(?) プレイ時間:1時間半くらい その他:選択肢無し、一本道 システム:NScripter 制作年:2008/7/14 容量(圧縮時):70.0 MB 道玄斎です、こんばんは。 今日の東京は曇り空。昨日までは茹だるほど暑かったのに、今日はなんだか生ぬるい空気でした。こういう気候の変化があると最近、頭痛がするようになってしまいました。もう歳ですねぇ……。 のっけから脱線しますけれども、私の書庫(自分ではカッコつけて私設図書館と呼んでいたりする)は、それなりに本が収まっているので、たまに閲覧願いが来る事があります。「~という本はあるか?」という問い合わせです。あんまり出回っていない本だったりするわけですが、若い頃から根性で本を集めたある種特殊な書庫ですので、意外とニーズに応える事が出来たりします。今日来た問い合わせでは、某アジアで三番目に蔵書量が多い某図書館でも見つからなかったという、とある本に関するものでした。 実はそういう本って、中央線沿線の古本屋とかに普通に売ってたりするw その本は私の書庫にはあったんですが、それは「新しいヴァージョン」が出版されていて、古いヴァージョンのものを確認したい、という問い合わせでした。たまに本ってヴァージョンが上がると校訂している人が異なっていたり、底本が異なっていたりします。 「FAXで必要なページをお送りいたしましょうか?」と聞いてみた所、FAXが今使えないそうなので、明日直接、必要なページをコピーしていただく予定です。 で、例えば大きな聖堂みたいな図書館の隅っこ。そこに幻想小説なんて棚があったとして、誰かに読まれるまでひっそりと眠っている本のような、そんな作品のご紹介。 「空と雪」さんの『時計塔へ -La Danse Macabre』です。 前作もレビューさせていただきました。独自の世界観と少し暗めの雰囲気が魅力の作品でした。 良かった点 ストーリーは、サイトの方から引用しておきましょう。 疫病で両親を失った、エリーとミミ(妹)とおじ(母の兄)は三人で暮らしていました。 こんなストーリーになっています。 出来たら、先ず前作の方からプレイしてみると良いと思います。 そこまで直接的に繋がらないものの、やはり前作と続いている部分があるので、本作をより楽しむために前作をプレイしておいた方が良いかと。 で、今回もエリーが主人公。 割と時間軸が行ったり来たりするので、「今がいつなのか?」というのを把握する為にも、やはり前作のプレイを推奨しておきます。そこらへんの事情で今回は無印にしてあります。 さて、サブタイトルの「La Danse Macabre」、たまーに耳にする言葉ですよね。 フランス語なのですが、日本語に直すと「死の舞踏」という事になります。美術史西洋の歴史に詳しい方はすぐにピンと来るはず。 老いも若きも、男も女も、聖も俗も逃れがたい死に恐怖して、踊り続けるっていうアレです。有名なのが骸骨が踊っているという絵ですかね。 今、ちょっと調べてみたら、実際に墓地なんかでみんな集団ヒステリーを起こして踊り狂っていたみたいです。それを芸術という形で表現してそちらの方が今は有名になってしまっていますが。時代背景としてペストの流行が一役買っているわけですが、本作もそれに準拠するかのように、謎の病が流行した街が舞台です。 ただ、ペストとは明確に示されていませんよね。それにペストは「黒死病」ですから、皮膚が黒くなっていくわけで、そうした描写もない事から、物語の中で「流行病」(はやりやまい、でしょうね)と表現される病気とペストは別物、と考えた方がよさそうです。 本作の大きな特徴は、後述するイラストだけでなく、実は文章にもあったりします。 というのは、何だかとても詩的で「小説」っぽい印象を受けるのです。 だららっと流し読みが出来ない、ノベルゲームでは珍しい文体でストーリーが綴られていきます。 そういえば、かなり明確な形で「章」を意識させる演出もあります。他の作品だったら例えばアイキャッチで場面転換してしまう所に「章のタイトル」+「サブタイトル」を示して場面を転換させていく。 正直、ノベルゲームを「ゲーム」として見たときに読みやすいか、って言われたらそれは読みにくいんです。どちらかというとゲームというよりは、本当に小説、なんですよね。 そういうスタンスが或る程度明確になっていると思われますし、世界観と文章のリンクという意味ではやっぱりマッチしているというか、親和性が高い文体だと思います。 これが普通の幼なじみの女の子、妹系の女の子、口が悪くて手が早いクラスメイトみたいなヒロイン布陣のゲームで同じ文体だったら、何かとってもカオスなものになってしまいそうですがw 文章という話で、少しだけ脱線してみます。 「・・・」とか「・・」とかそういうのありますね。リーダっていうんですが一応、基本があります。一つだけ覚えるべき基本として ・三点リーダは二つ続けて使う という原則が一応あるんですね。 というのも、本作の場合「・・・」や「・・」が併存しているわけで、実は「二点リーダはあまり使わない」んです。気になる、という程でもないんだけども、折角の機会だからちらりと解説させて下さいな。 兎にも角にも、基本は「三点リーダを二つ続けて使う」なんですね。 割と、このリーダの使い方で見栄えが大きく変わったりするので、意外と侮れないポイントだったりします。 又、「・・・」とするよりは、私だったら「…」かな? それも二つ続けるのが基本ですから「……」とします。まぁ、この辺りは本筋とは全然関係ない枝葉末節ですし、商業ゲームのプロの文章であっても三点リーダを二つ続けない人もいますから。三点リーダは二つでワンセットですから「……」とするのがスタンダード。けれども倍にして「…………」とすればリーダの長さも確保出来ますね。 あと敢えて一点挙げておくとすれば、 ・「?」「!」の後はスペースを空ける というものもあったりします。これも一応原則ですから、守る必要は必ずしもないのですが、「?」のあとにすぐ文章が続くと少し「詰まった」感じに見えない事もない。勿論、文末ではスペースは空けなくていいですよ。 試しに適当に文章を書いてみましょう。 「えっ?地面に落ちてたたこ焼きを食べたの?」 「えっ? 地面に落ちてたたこ焼きを食べたの?」 「えっ? 地面に落ちてたたこ焼きを食べたの?」 三つ並べてみると、微妙に見た目が違うのが分かると思います。一番目はスペース無し。二番目は半角スペース入り、三番目は全角スペース入りです。 どちらがいいかは、好みにもよると思うのですが、個人的には半角であれ全角であれスペースはあった方がいいかな、と思っています。多分、基本は全角なんですが、半角も中々悪くないですね。 又しても脱線しまくったので、ここらで軌道修正。 先にちらりと触れた「イラスト」に関してです。例えば人物のイラストは決して上手いわけじゃないし、今流行のタイプの絵柄でもない。 けれども、そこには妙に暖かみがありますし、ラフっぽく書かれたイラストなんてかなり味があるんですよ。個人的に一般的な「巧さ」よりも「味わい」の方を重視したいので、本作のイラスト結構気に入っています。 また、背景がとってもグーですね。凄く緻密に描かれたやはり一種幻想的な絵で、雰囲気が出ています。本当にこの背景は絶品だと思います。中々描けませんぜ? ストーリー的な部分は、もう先に引用した部分が大枠としてあって、それに加えてエリーの過去で、家族四人で暮らしていた頃、そして両親との死別とその時のエリーの行動みたいなものがメインとなります。あんまりこう、ドラマティックな展開があるとか、あっと驚く仕掛けが、とかそういうのはないのですが、少しダークな雰囲気が私は好きだったりします。 一篇の幻想小説のような趣の作品です。 独特の世界観や雰囲気をより楽しむ為に。是非、前作と併せてプレイしてみて下さい。 それでは、今日はこのへんで。 PS.今サイトを見てみたら、本作の配布を停止なさるという告知が。うーん、残念。。問題があれば削除しますので、そのときはどうぞ仰ってくださいまし。
by s-kuzumi
| 2008-07-28 21:06
| サウンドノベル
|
Comments(5)
三度もレビュー頂いて、単にお礼の言葉では済まされないのですが・・
ありがとうございます。 Vectorさんの所での配布は停止して、HPの片隅で配布しようかと 思っています。(・・・と言っても、容量が足らないのですが) 今回のものは起承転結、盛り上がりが妙にさっぱりな感じ なところと、ノベルゲームの特性が活かしきれてないところが悩みどころに。 文体もいつの間にか変わってしまったような・・・何ぞこれw 色々状況が分かりにくくなってしまって、すみません・・・。 三点リーダの使い方、「?」後のスペースなどのご指摘は 嬉しいです。時々、文章の体裁はこれで良いのかな?? と疑問が浮かぶのです。 えっと、長い身の上話はここまでにして・・ 久住さんの日々之雑記100回目越えなのですね。 何だかしみじみとした感じです。 まだまだ暑いですので体調管理には気をつけて、無理せず過ごして下さい。 (あと、音楽活動期待してます~)
0
Commented
by
arusu
at 2008-07-29 21:23
x
惜しい…!前作もプレイしていて比較的楽しみにしていた2作目なのですが配布中止ですか…。チェックするのが遅かったなあ。orz
Commented
by
s-kuzumi at 2008-07-30 04:28
>>空と雪さん
こんばんは。三回も書いてしまって、こちらこそいつもお世話になっております。 色々とゲーム制作に関してのご苦労が忍ばれるのですが、それでもやはり空と雪さんらしい、素敵な作品になっていたと思いますよ。飽くまで個人的な意見なんですが「スタンダード」を目指すよりも「その人らしさ」が出てる作品の方が私は好きですよ? そこには上手い下手とかを超越した何かがあると思いますしね。 ちょっと偉そうに三点リーダの書き方なんかを書いてみたのですが、あくまで一般の「出版物」に関する基本なので、そのままノベルゲームに応用していいのかしら? と今になって思っています。商業の作品をプレイしていても、その原則から逸脱したものも多く存在していますし、「ノベルゲームの文体」なるもののスタンダードはまだないんですよね。 ともあれ、色々と試行錯誤してみると、ご自身にあった文章の体裁が見つかる事と思います。
Commented
by
s-kuzumi at 2008-07-30 04:29
つづき
文章校正の本なんかをみると三点リーダの使い方は載っていると思います。意外と安いので便利かも。或いはネットでも「約物」(文中で使う記号の事ですね)と調べてみても色々見つかるかと思います。 こちらの体調にまでお気を使っていただいて有り難う御座います。 お互いに体調には気をつけたいですね。 音楽は……遅々として進まず……なんですが、マイペースで頑張ります。 それでは、コメント有り難う御座いました。
Commented
by
s-kuzumi at 2008-07-30 04:32
>>arusuさん
こんばんは。 どうやら、救済案があるようなので、もう少し経てばプレイ出来るようになると思いますよ。 実は、「一足遅かった」というメールが何通か来ていて(何故私の所に?w)、ファンが多い作品なんだなぁ、としみじみ感じました。ノベルゲームのメインストリームではないけれども、こういう作品は貴重ですし、必要な存在だと思っています。 一ファンとして応援するのも大事、ですね! |
アバウト
カレンダー
メモ帳。らしきもの。
■レビューリストを作りました。随時更新予定です。こちらからどうぞ。
■ノベルゲームのコミュニティと素材ポータル始めました 制作者の方とプレイヤーを繋ぐような、そんなコミュニティを作りました。 こちらからどうぞ。 そして、ゲーム制作に利用出来る素材ポータルサイトも作りました。 こちらからどうぞ。 どちらも、是非ご覧になってみて下さい。そして、ご参加/ご利用頂ければ幸いで御座います。 フリーのノベルゲーム/サウンドノベルをレビューをやっております。たまに私のどうでもいい日々之記録が入る事がありますが、ご了承下さいませ。 ・“引用”としてスクリーンショットやストーリーの概略などの文章を使わせていただいております。問題が御座いましたらご連絡下さい。対処いたします。 連絡先はkazenitsurenaki あっとまーく gmail.com です。 ・レビューは「甘口~中辛」くらいです。 ・評価は完全に私個人の主観に基づいています。評価は「大吟醸」「吟醸」「無印(=純米)」の三段階となっております。参考までに。 で、実は、 こちらが本館です。ブログは別館的な位置づけなのですが、何故かこちらがメインになってしまっています……。バナーなんかもあるので、リンクを張って下さる方はご利用下さいませ。 リンクに関しては、お好きにやっちゃって下さい。許可なんかは一切要りませんので。 本館の方では、謎の音楽制作などをやっております。こっそり更新している事もありますので、たまに見てやって下さると嬉しいです。 カテゴリ
以前の記事
2024年 05月 2023年 07月 2020年 08月 2020年 05月 2020年 01月 2019年 12月 2018年 09月 2017年 09月 2016年 12月 2016年 06月 2016年 04月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 10月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 検索
タグ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||