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久住女中本舗

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2008年 07月 30日

フリーサウンドノベル関係の雑記 箸休めvol.20

道玄斎です、こんばんは。

今回は久々の箸休め。やはりちらりと予告していた内容で書いていこうかな、と思っています。
それが役に立つ/立たないは別として、一プレイヤーとして感じた事を割と率直に語ってみよう、というコンセプト。なんだか中途半端で止まっている「サウンドノベル論」に近い部分もあったりします。

一応、お断りしておくと、「私個人が感じた事を書く」わけでして、それが一般的な概念と必ずしも一致しない、という事ですね。それに、何事にも「例外の無いものはない」わけですし。その辺りをご了承願います。



■サウンドノベル/ノベルゲームとイラスト


○全体を概観してみる。

サウンドノベル/ノベルゲームが文章・音楽・イラストの三本を軸にしている事は、今更言うまでもないでしょう。特に「サウンドノベル」なんて言い方ですと、「サウンド」=音楽が強調されている事も又言うまでもなし。
ともあれ、一般的なノベルゲームでは、それが商業のものであれ、はたまた同人のものであれ、またここでいつも取り上げているようなフリーのものであれ、この三本柱を保持している、とひとまず言う事が出来ます。

尤も、音楽とまでいかない効果音だけで構成された作品もありましょうし、中には「立ち絵」も存在しない、という作品があるのは皆様もご存じの通り。そういう中に名作が隠れてるんだけどもね。立ち絵すら存在しないものと、イラストが存在しているものの中間にあるのが、例の「影絵」という手法ではないかと。影絵はテキストだけのものよりも情報量は多いですし、又それ故に想像力を一定の方向に或る程度縛るような部分もあります。が、カッチリとしたイラストよりは想像力を働かせる事が可能。
或いは、あの或る意味で無機質な影絵に物凄いヘンテコなポーズを取らせて笑いを取る、なんて手法も、「サンダーボルト三部作」「女教師美喜」シリーズなどでもお馴染みですね。

こうしたサウンドノベル/ノベルゲームの揺籃期の作品に『かまいたちの夜』という作品がありますが、これは影絵でした。ミステリーと影絵も相性が抜群。というのは、その無機質さ故に、不気味さや怖さも演出出来るからなんでしょう。

一方で立ち絵も存在しない作品の場合、その情報量はテキスト、或いはそのテキストに書かれた中身、そして音楽に託される事となります。やはり、立ち絵無しで成功している作品を見ると、中身が素晴らしいものや音楽に力を入れているものが多いように思えたりします。

最後のイラスト付きのものですが、これも単純に一種類と分けるのにはやはり抵抗がありますよね。所謂「立ち絵+一枚絵」というオーソドックスなものから、立ち絵は存在せず、要所要所に一枚絵的にイラストが表示されるもの、或いは立ち絵のみのもの、とざっと数えても三つくらいのヴァリエーションが考えられます。もう少し厳密にじっくり考えれば、まだまだ分けられそうですけれどもね。

大体、サウンドノベル/ノベルゲームを取り巻くイラストの事情とはこんな感じでしょう。



○イラストの効力。

私は昔は「見た目の良いもの」を一つの基準としてダウンロードして、プレイしていた時期がありました。見た目が良い、というのはインターフェイスではなく、そのものずばり「イラストの美麗さ」です。

大抵、ゲームを探す時には情報サイトを利用します。有名どころではベクターとかですね。ベクターなんかはそうでないのですが、他のサイトでは作品のスクリーンショットと一緒に作品が紹介されている事が多いのも、皆さんご承知の通り。
まぁ、ベクターでも作者様のサイトに飛んで情報を探れば、どういった見た目を持っているか、を確かめる事が可能ですけれども。

私が日々巡回する情報サイトに「100%ふりげストア」というサイトがあります。
このサイトはとっても便利な機能がついていて、「タイトル」「日時」「評価」「ヒット数」の多い順、又は少ない順で作品を検索出来ます。

ここで問題としたいのは「ヒット数」です。今実験して確認したのですが、ずらっと並んでいるゲームで、好みのものを探して、そのスクリーンショットをクリックし詳細画面に飛ぶと、ヒット数が1づつ上がる、という仕組み。
で、ヒット数の多い順で並べ替えて見てみると、上位にランクインしているものはイラストが美麗なものが多いんですよね。「美麗」というのが極めて主観的であることは承知しているのですが、やはり様々なイラストのタイプがある中でも、「主流」に或る程度の近さを持っているイラストを面に出している作品が多いように思えるのでした(一応言っておくと「主流」たって一枚岩じゃないですよ。割とリアル指向の主流、アニメ系の主流とか色々あります)。

勿論、界隈で話題の作品とか、そうしたものもあるのですが、大体並び替えて四ページくらいまでざらりと見ても、イラストが水準以上のものが多いように思えます。
一方で、ヒット数の少ない方から見てみると、「あの名作が?」という作品が入っている事にも気付くかと。中身はとっても良いけれども、ちょっとイラストが……と良く言われる幽霊の女の子のヤツとかねw
で、ヒット数で並べて、丁度真ん中くらいのページを見てみると、イラストが面に出ていない作品が10作品中4つくらい出てきます。

勿論、イラストだけでなく、ストーリー解説を見た上でクリックしているのでしょうけれども、(やっぱり主観的で申し訳ないのだけれども)或る程度のイラストの美麗さ、みたいなものがこのヒット数に現れているように思えます。
予備知識の無いプレイヤー予備軍は、やっぱり「を、キレイだな」とか「可愛い絵だ」とか、そういう観点で作品を選んでいるんだろうな、と思うわけです。実際、私もそうした時期がありましたし、そういう気持ちの一端は分かっているつもり。

さて、ここで一旦ヒット数から離れて、「評価」で並び替えてみる事にしましょう。
すると、ヒット数で表示される作品群と評価で表示される作品群が、異なる事が分かります。これは実際にプレイした人が付ける評価ですから、「見た目」と「中身」という大きな差異が生じているわけです。
ちなみに、ヒット数で最初のページに来ていた作品で、評価のトップに載っている作品はゼロなんですよね。いや、別に~の作品が見かけだけ、とかそういう事を言いたいのではなくて、「如何にヴィジュアルで人間は興味を持つか」という、そこの所をちょいと論じてみたいなぁ、というわけで御座いますよ。

尤も、この評価にも微妙に問題があって、評価した人数、つまり分母が多い方がやはり信憑性が高いと思われます。少なくとも評価した人数がそれなりの数で、且つ高得点を維持しているのならば、一般的な観点から見た良作を引き当てる可能性は高いでしょう。
評価で一位を取っている作品があったとして、その評価を付けた人間が一人だけで且つ、満点の10点を付けたら、それは否応無しに一位になってしまう、という罠があるわけです。

だから、必ずしも評価という観点で並び替えたものが信頼に足る指標か、というとそれも又問題があるわけですが、それでもヒット数と併せて考えてみる事で、或る程度見えてくる事があります。余談ですが、上記の理由から「投票数」が多いものを選んでいくと、かなり良い作品に巡り会えるのではないでしょうか? 少なくとも、労をいとわず投票してくれた人がいる、ってわけですから。

で、ヒットと評価を併せて考えてみて、何が見えるのか? っていうと、先にも述べた「ヴィジュアルの大事さ」なんですよね。取り敢えず、どんな作品だか分かりやすい「イラスト」が見えて、それが美麗だと、ひとまず多くの人に興味を持って貰えるという事は言えそうです。
ですから、「これから一旗揚げてやるぜ!」なんて制作者の方は、「100%ふりげストア」に登録する時には、自信のある一枚絵をスクリーンショットにして載せると良いんじゃないかな、と。そういうプロモーション的な部分も大事ですよね。
多分、間違いなく言えるのは、イラストが見えない「タイトル画面」と「一枚絵」があるとしたら、一枚絵の方を載せた方が興味を持って貰える確立が高くなるだろう、という事。

実は少し脱線してしまいますが、同時に「紹介文」にも気を配りたい所。
私が「100%ふりげストア」を利用する際には、いつも「日時」で新着のものをチェックしていくわけですが、どこでプレイするゲームを見極めているのか、というと実は「紹介文」だったりします。
味も素っ気もない「ふつーの恋愛ノベルです」と一言書いてあるよりも、「胸を打つ超感動巨編、ついにリリース!」とかアオリ文句を付けて、更にストーリーの内容が(尤も美味しい部分を活かすように)紹介されていた方が、「やってみようかな?」という気になりますよね。
まぁ、ここまで大げさに書かずとも、興味を惹くように、ストーリーの概略なんかは是非欲しいな、と。正直、どんなストーリーか分からないと、ダウンロードするのが一種の博打になってしまうんですよw 尤も、そうやっていくなかで、名作を発見する、なんてこともあるわけですが。

軌道修正して、イラストに話しを戻すと、イラストを付けるゲームであるならば、それを売り出していった方が良さそう、というまぁ、極々ありきたりの結論になるわけです。



○イラストのマイナス面。

さて、イラストの効用についてお話した以上、イラストの持つデメリットの部分についても焦点を当てる必要があります。とはいへ、既に或る程度先の章でお話した事なのですが。

要するに、イラストだけを指標にしても、自分の好みのゲームが見つかるとは限らない、という事ですね。イラストに騙された、なんて事もないとは言い切れないw 勿論、イラストの重要性を十分認めてはいるんですけれどもね。
一番、重要なのは、「イラストがイマイチ」或いは「イラストが皆無」な名作を見逃してしまう可能性がある、という事でしょうか。

パッと思いつくもので、私の好きな作品で挙げてみると、『柵の淵』とか『ゆうとっぷ』とか、はたまた『カレイドスコープ』とか『EmpreLance(エンプルランス)』とか色々あります。
他にも『天雨月都』とか『グッバイトゥユー』とかもそうした範疇に入れても良いでしょう(いいよね?)。

やっぱり、こうサウンドノベル/ノベルゲームのキモは、実はテキストの部分にあるように思えてきます。どれだけ丁寧な描写がなされているのか、テーマに向けて因果関係を整理しストーリーが進んでいくか、或いは読者を唸らせる仕掛けがあるか、基本というか王道はそういう所にあると私は思っています。うんと極論してしまえば「丁寧さ」こそが、作品の質を決めているようにすら思えます。

それに一番最初に述べましたように、テキスト・音楽・イラストの三本柱がありまして、そこから例えばイラストを取っ払ってしまったら、情報量という点で言えば大幅に減ってしまいます。そしてその分、他の二つの要素、テキストと音楽に比重が掛かってくる。イラストが無くても「どれだけ伝えられるか」「どれだけ届くか」という問題が浮上してきます。
けれども、イラストが無くとも名作とされている作品は、イラストがなくても「伝わる作品」なんですよ。これはやっぱり凄い事だと思います。イラストという外見ではなくて(勿論それだって滅茶苦茶重要だ)、もっと作品の中身が伝わる。これはやっぱり大事ですよね。
理想を言えば、イラストが無くとも成立してしまうようなテキストに、ハイクオリティのイラストが付いていたらもう最強でしょう。
敢えて言ってしまえば、イラストが無くなったら、ちょっとどうかなぁ? と思えるような作品もあったりします。まぁ、そうはいってもイラスト・テキスト・音楽の融合体がスタンダードなノベルゲームのあり方ですから、そういう仮定は成り立たないと言えば成り立たないんですよね。
けれども、思考実験みたいに、ちょっと考えてみると面白いかもしれませんよ?



○イラストの善し悪し。

これも完全に私の主観で書きます。
先に「美麗」という言葉を使ったりしたのですが、この美麗という感覚は当然人それぞれなわけで、各々の感性が異なる以上、同一であるハズがない。Aさんはあるゲームの絵を「最高だぜ!」と言うかもしれないし、同じゲームをプレイしたBさんは「何かよくねぇなぁ」と思うかもしれない。

やはり先ほど「美麗な絵を見せるとひとまず、興味関心を持って貰える」的な事を書いたわけですが、必ずしも主流に近い絵を付ければいいのか? といえば答えは勿論NOです。
というのも、今俎上に載せている問題は、実はいつもここで書いている「フリー」のサウンドノベル/ノベルゲームだからです。

商業だったら、多少の個性を捨てても「売れる」ものを追求する必要がある。
株式会社とかだったりしたら、株主に対して「利益を上げる責任」が会社にあるわけですから、言葉は悪いけれども「売れてなんぼ」の世界であるという点、否定は出来ないと思います。

準商業みたいな同人もそれに近い部分があります。
みんな身銭を切って、作品を作って、声を当てて貰ったり、イラストを描いて貰ったりする。それが売れないとサークルとして活動出来なくなっちゃったりしますしね。それでも、商業よりは個性を出してもいいのかな? と何となくですけれども感覚的に思いますね。
ちなみに、お名前は出しませんが、或る同人ノベルゲームの制作費が50万円だった、という話を聞いた事があります。CDの制作代とかも含めての値段でしょうけれども、50万円はやっぱり大金ですよね。となると、最低でも50万円分は売らないと、赤字になってしまうわけで……。

で、フリーの作品。
これこそが真骨頂。イラストがない作品もあれば、吃驚するくらいのクオリティのイラストが付いているものもある。或る意味で玉石混淆なわけですが、フリーで配布しているので(そこで利益を上げるわけではないので)、制作に掛かる金銭は商業や同人に比べて、恐らく低いでしょう。又、全部自分で作っちゃえば、時間は掛かるけれども、せいぜいツールの教科書とかそのくらいの出費で済んだりします(ネットを使って調べればゼロだ)。
「それで金銭を儲ける」という手段では無いわけですから、そういう意味での自由度の高さは抜群です。売れ線みたいなものを意識してもいいし、しなくてもいい。恐らく、そこには金銭的なノルマは存在しないハズだからです。

だからこそ、色んなタイプのイラストがフリーのサウンドノベル/ノベルゲームには存在しているのですが、商業だったら成立しない絵でも「この作品にはこの絵しか駄目だ!」というのがありますよね?w 
先にも挙げた『柵の淵』なんかはその典型でしょう。あの作品で妙に洗練されたイラストが付いていたら、怨念を巡るドロドロとした物語の怖さや、逆にエンディングで見ることの出来る素朴な良さみたいなものが、下手をすると台無しになってしまうかもしれません。

だから、飽くまで私の基準では「洗練よりも個性」を重視してしまいます。
逆に言えば個性が許されるのはフリーの特権だからなんですね。まぁ、同人でも例外がある事は一応言っておく必要があるでしょう。近年流行っているものの中でも「こりゃ美麗!」と思えないものがありますよね? 敢えて作品名とかは挙げませんが。寧ろそういう作品は世界観やテキストだったり作品の根底がしっかりしているのでしょう。

最初、起動してイラストが表示された瞬間「なんじゃこりゃ?」と思うw けれども、そのままプレイを続けていくと、「最初はイマイチだと思ったけれども、意外と味があるし、このイラストだからこそこの作品が成立しているのでは……」なんて思ったら、私の仲間です。ようこそディープなノベルゲームの世界へ!w

そりゃ、ね。キレイなイラストが付いてたら嬉しいんだけども、またそういう基準とは別の部分で「このイラストいいぜ」と思うわけですよ。んもう、そういう作品を見つけると思わず小躍りしたくなりますね。
ビジュアル面でダイレクトな個性を味わえるのが、実はフリーのサウンドノベル/ノベルゲームの特権の一つなんじゃないでしょうかね。それを好きになるかどうかは完全に自由ですし(お金払って期待はずれだとちょっと悔しいもんねw)。



○総論

まぁ、つらつらと例によって書いたわけですけれども、イラストの巧さ、或いは洗練されなさ、はたまたイラストが付いていないという個性そのものをフリーのゲームでは味わえるんじゃないか? と思うわけです。それにそうした作品の中に「自分にとっての最高の作品」があったりするかもしれませんよ?

確かにイラストは重要です。ファーストインプレッションという意味でも物凄く重要ですし、イラストそのものの持つ情報量の多さみたいなものも絶対に軽視出来ないのですが、それでも、「美麗なイラスト」みたいな共通概念がどんどん突き進んでいくと、猫も杓子もみんな似たような絵になってしまうんじゃないか、という危惧があったりします。
だからこそ、私は色んな作者様の個性が楽しめる、フリーのゲームが好きなんですよ。個性的なイラスト、或いはイラスト無しの作品、はたまた今現在主流の(一般的に言って)超美麗なイラストが付いていたりする作品もある。

だから、上手い/下手みたいな部分を云々してきておいてアレですけど、そういうのは「色んな個性が楽しめる」とか、「各々の感性で良い/悪いを決めればいいだろう」と思っていたりします。

これからも、個性溢れる作品に出会えたらいいなぁ、と思いつつ筆を擱くことにします。
又、いつものように纏まりが無かったね。
それでは、また。

by s-kuzumi | 2008-07-30 04:10 | サウンドノベル | Comments(0)
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