2008年 08月 04日
今日の副題 「“裏”の青春ノベルゲーム」 ジャンル:ちょっと重たい青春感動ストーリー(?) プレイ時間:2時間~3時間くらい。 その他:選択肢無し、一本道。18禁。 システム:NScripter 制作年:2005/09/09 容量(圧縮時):39.6MB 道玄斎です、こんばんは。 今回も、過去にプレイしたものからのご紹介。と、言っても様々な情報サイトを巡って「これは」と思うものを落としてプレイしてみたら、「……やった事あるぞ……」と。 そんなわけで、「BEKKO.NET」さんの『LEAVEs.』です。サークルのHPが見つからなかったので、ダウンロード先へのリンクを張っておきます。 良かった点 ストーリーは、今回も私が纏めておきましょう。 主人公ヒロと冬樺、そして末莉は幼なじみ。 こんな感じ。 相変わらず、こういうの纏めるのニガテだから文章がヘンテコだけれども、勘弁してあげて下さい。 良くあるタイプの学園青春モノ(幼なじみとか妹系とか、ちょっぴり暴力癖のあるクラスメイトなんかがヒロインのヤツです)が“表”だとしたら、本作は“裏”の青春ストーリーという事になりましょうか。登場人物は16歳という事は分かるのですが、学校の描写が一度も出てきません。 唯一、ちゃんと(それも微妙にサボり気味?)学校に通っていると描写されるのは、末莉だけ。 主人公のヒロは、学校に行ったり行かなかったりを繰り返し、バイトで生計を立てている。勿論、養父母はいるのですが、半分独立したような、そんな形になっています。 一方で、本作のメインヒロインという事になりましょうか、冬樺は天涯孤独の身。一応アパートで暮らしているものの、どうやら売春で生計を立てている模様。しかも、それを知っているヒロと肉体関係まで持っているという。 ちょっぴりダークでアウトローなイントロなんですが、そこを逆手にとって上手く読者の「興味」を喚起しているような部分があるのも確か。 個人的に今回プレイしてみて、思わず引き込まれました。「こりゃどういう事なんだ?」と「これからどうなる?」この二つは、恐らくどんなタイプの作品でも有効な装置ですよね。 大体こんなイントロなので、明るい話ではないんです。 結構、トラウマを刺激されたりと、痛みを伴う作品だったなぁ、と。 それはさておき、キーマンは実は末莉なんじゃないかな、と思っています。幼なじみ三人組の中で最も達観したようなタイプで、言ってしまえば典型的優等生に近い造型なのですが、ちょいと思わせぶりというか、本作で語られる物語の原因というか、かなり深い部分を、既に知っている、そんな立ち位置のキャラ。他の二人の主要人物がアウトロー的な性質が強いのにも関わらず、彼女はかなりまっとうなキャラ。 例によって、私の一番のお気に入りなんですよ。勿論、眼鏡の黒髪少女という属性あってこそ、なんですがw 結構な鬱展開が続くものの、ラストはそれらが浄化されて、やっと幸せが見えてきた、というあたりで物語は幕を下ろします。ホント、ラストまで鬱展開で終わらなくて良かったよ。 一番恐かったのは、ヒロと冬樺の幸せの影で、末莉ちゃんが一人自殺して終わるとか、そういう雰囲気がちらりほらりとあって、その手のエンドを警戒していたましたw 一度プレイしていたハズなのに、そこらへんの情報はすっぽり抜けてしまっていますね。 切り口は新しいですし、売春だクスリだって刺激的な小道具が効いていて、結構面白いんです。イラストだって、高水準だと思いますしね。 だけれどもやっぱり強姦みたいな場面が(直接的に描写されるわけじゃないけれど)出てくると、読んでいて辛い所はありますね……。私はフィクションだと分かっていながらも、その手の描写が出ちゃうと結構憂鬱になってしまうタイプなので。。 文章も上手かったのではないでしょうか? 文章という点では、普通に商業作品で書いていてもおかしくないくらいのレベルだったように思えます。割と堅めではあるものの、かといって読みづらいとかそういう事の無い、文章で私はこの手の文章、好きですね。 さて、恒例の気になって点コーナーですが、やっぱり16歳の少年少女が売春だ、クスリだって事件と関わっていると、やっぱり少し釣り合いが取れない気がします。 何年くらい前でしょうか? 十年くらい前かしら、少女売春が社会問題として大きく取り上げられた事があります。俗に「エンコー」って言うんですが(正式名称? は「援助交際」です)、当時感じた私の素直な気持ちでは、なんて言うか、そうやってマスコミがある種の「エンコーブーム」みたいなものを作ってしまって、それが売春を助長させていたような、何となくですけれども、そんなイメージがあったんですね。 だから、何が問題なんだ? って言われたら答えられないのだけれども(実際にエンコーやってたのって、16歳とか18歳くらいの少女だったわけですから)、少し登場人物の年齢と、彼らが踏み込んでいる世界の釣り合いが何となく、自分の中で消化しづらいんです。 敢えて言ってしまえば「そうあって欲しくない」というような一種の願望ですかね。何か分かりづらくて申し訳ない。 で、もう一個は、何となく未消化で終わってしまっているエピソードがあったようにも思えるんです。例えば、ヒロの姉貴のヒカリは「どうして、どこでヒロの事を知ったのか?」という疑問や、「末莉はその後どうなるのか?」みたいな部分でもう少し話しがふくらませる事が可能だったのではないかと。言ってしまえばバックグラウンド的なものがヒロ、冬樺以外のキャラでは描写が薄い、という印象です。 ラストのシーンも、やはりヒカリのバックグラウンドがそれ以前に示されていたら、もっと感動出来たように思えます。 未消化という点では、タイトルの「LEAVEs」と作品内容のリンクも少し分かりづらいですね。恐らく「LEAVEs」は「幸せの四つ葉のクローバー」と掛けているのですが、作品の中で、もう少しタイトルと繋げるような描写や表現があるとぐっと全体が締まったのではないでしょうか。 これは、そんなに気になったわけじゃないのだけれども、「雪辱を晴らす」という文がありまして、これは「雪辱を果たす」の誤りですね。自分でもついうっかり使ってしまいそうなんですが、これは「雪辱」という語を漢文で読んでみれば、一目瞭然です。 レ点と送り仮名を付けてみましょう。 雪(グ)レ辱(ヲ) となります。ちょっと分かりづらいっすね。送り仮名を( )で、レ点はしょうがないから普通の「レ」で書いてます。漢文って英語と似たところがあって、動詞→目的語と進むパターンが非常に多い。だからそれを日本語で読む為に「レ点」或いは「一二点」を付けてやって「返る」必要があるわけです。 分かりやすく書くと「はじヲそそグ」となるわけで、これで実は文章が完結しているのが分かるかと思います。ですので、更に動詞を重ねて「雪辱を晴らす」とすると、「はじをそそぐという行為を晴らす」となり、文がおかしなことになってしまうんです。 ですが「果たす」だと、「はじをそそぐ、という行為を果たす」、とちゃんと文意が通じますね。 まぁ、そんな訳で、漢語が使われている場合、自分でレ点を付けてみたりして考えると、「どうして間違ってるのか?」がすぐに分かると思います。ま、蛇足ですね。 さてさて、後半で大幅に脱線してしまいました。 表の青春作品ではなく、裏の青春作品でした。どちらかと言えば、青春的な要素と共に、社会派っぽいような所がないわけでもないですよね。さすがにいい歳こいたオトナが読むとちょっと引っかかる部分もあるのですが、若い方にはお勧め出来るかな。って、18禁だろうから、18歳以上23歳未満くらいまでにお勧めしておきますw 今日はこのへんで。 それでは、また。
by s-kuzumi
| 2008-08-04 20:07
| サウンドノベル
|
Comments(2)
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イヌガミ
at 2009-02-15 22:36
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はじめまして。作者のイヌガミです。
最後までプレイしていただきまして、ありがとうございました。 本作品、2005年の公開ということで・・・作者である私自身、懐かしい思いでレビューを読ませていただきました。 "LEAVEs."は私の最初で最後の作品ですが、ノベルゲームを作りたい一心で、それこそ寝食を惜しんで、大学もロクに行かずに(笑)作りこんでいた記憶があります。 もう少し読者視点でシナリオを見つめ返せていたら・・・と悔やまれる部分もありますが、当時の自分のベストは尽くせたかなぁと思っています。 今は普通に会社員やってます。 大学時代に打ち込んだことはノベルゲーム作成だという話は、同期の誰も知りません(笑)
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s-kuzumi at 2009-02-16 21:13
>>イヌガミさん
はじめまして、こんばんは。 こちらこそ、楽しませて頂きました。まるまる二回、プレイしたのですが、独特のフックというか、引っかかるものを持っている作品だと思いました。 レビューでは、多少辛口になってしまった所もあるのですが、その点ご容赦頂ければ幸いですw 何より、コメントを下さった事、大変嬉しく、又光栄に思います。 本当にどうも有り難う御座いました。 |
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