2008年 08月 23日
![]() 今日の副題 「完結、してくれたらいいんだけども……」 ※大吟醸 ジャンル:伝奇(?)、百合もあるよ。 プレイ時間:第零話=2時間程度、第一話=3時間程度。 その他:選択肢なし。18禁。 システム:NScripter 制作年:今プレイ出来るヴァージョンは、第零話=2003/10/26、第一話=2003/11/7 容量(解凍時):第零話=44.6MB、第一話=65.0MB 道玄斎です、こんばんは。 ここ数日、ちょこちょこちょこちょこと、是非ご紹介したい作品をプレイしていました。 ちょくちょく私もレビューなり、日々之雑記なりで名前を出している作品ですね。 今、プレイ出来るヴァージョンでのリリース日が2003年ですから、単純に考えてもう五年も前の作品になります。けれども、古さを感じさせるどころか、やっぱり物凄くいい作品でした。 本当に良い作品は、きっと時間が経っても、演出なんかが多少陳腐で垢抜けなく見えても、そこにしっかりと「良さ」を保持しているように感じます。 今日はそんな作品のご紹介(いや、演出なんかも全然古く感じないんだけどもね)。 というわけで「Atelier of Chiharu」さんの『紅刻の唄』です。今ある伝奇の走りというか、元祖的なイメージを持っている(いや、私が勝手に持ってるだけですが)作品です。 良かった点 ストーリーは、サイトの方のページへリンクを張っておきましょう。キャラクターのイラストも見れるので是非是非。こちらからどうぞ。 実に久々にプレイしました。 やっぱり面白いですねぇ……。割とこってりとした伝奇なんですが、とっても和風で心がゾワゾワしてしまうような独特な魅力を持った作品です。 最初に言っておくべきなのは、今リリースされているのが、第零話、第一話しかないわけですが、ちゃんとそれぞれお話自体は完結しています、という事。うんと乱暴に纏めてしまうとオムニバス的に一話ごとに話は完結している、という事になりましょうか。勿論、本作はオムニバスではなくて、ちゃんとした一本のお話なのですが、中途半端に途切れたりする事無く、取り敢えず区切りは付きますので、「未完成かよ」と思ってプレイをためらわないで下さいw これは本当にお勧めの伝奇作品ですね。 前からちょくちょく発言していましたが、この『紅刻の唄』。モチーフの一つに長野県の伝承「紅葉伝説」があるような気がしてなりません。長野県在住の方でご存じの方はいらっしゃいますか? 意外と長野県民の中でもマイナーな伝説だと思っているのですが……。戸隠の伝説なので、かなりピンポイントな伝承な気もしますし。 私の場合、祖父の代まで一族は長野に住んでおりました故、今でも時々長野に行く事があります。やっぱり東京も大好きなのですが、長野の空気、自分にとって心地よく感じますね。まぁ、それは兎も角、私の場合、長野の家々が所蔵している刀剣を集めたカタログのオマケページに、この「紅葉伝説」についての記事が載っておりまして、それが発端で知ったという訳です。 以来、郷土史研究みたいな感じで、ことあるごとにアンテナを張り巡らしていたわけですが、まさかそれが自分の好きなサウンドノベルで引っかかるとは……。最初にこの作品をプレイした時には正直かなりびっくりしました。 本当に本作が「紅葉伝説」を典拠の一つにしているのかは定かではないものの、やっぱりその伝説を知っている人には確実に引っかかってくる作品ですよね。 ストーリーの概略は、上記のリンクを張ったURLを示したわけですが、もうちょい補足しておくと、主人公(?)の瑞貴とヒロイン(?)紅葉(もみじ、に非ず。くれは也)の運命に導かれた出会いがあって、その後、紅葉は鬼と化して、この世でない、そしてあの世でもない「紅刻の世」の住人となってしまい、「御霊」なる存在を狩る事になってしまいます。 そうして、紅葉を追った瑞貴も又、「紅刻」の世界で、一振りの太刀を手にした事により、人間でなくなってしまいます。 そうして、瑞貴は今日も紅葉の存在を求めてさまよい歩く。 と、まぁ情緒のない説明になってしまいましたが、こういう背景があるわけですね。いや、ホント私が説明すると味も素っ気も無くなってしまうので、是非是非、実際にプレイしてみて下さいな。 全九話の内の一話目まで公開されているわけでして、ストーリーとしては、まだまだ捻りやどんでん返しがまっていそうで(とはいえ、第零話、第一話だけでも相当満足感がある)、謎も多く抱えたままになっています。 果たして、「御霊」なる存在は一体何者なのか? 一体紅葉の身に何が起きたのか? 何故、紅葉は奴らを狩らねばならないのか? そういうラストにダイレクトに繋がってきそうな、肝心の所はまだ分かっていないのです。 さて、折角「御霊」なる単語が出てきたので、又しても脱線して解説してみましょう。 作中世界には、「現し世」「隠り世」そして「紅刻の世界」の三つがあります。で、紅刻の悪いヤツらを「御霊」というようです。 実際の歴史から見てみると、御霊ってのは、基本的に「冤罪」などで恨みを抱えたまま死んだ人の恨みを取り除く為、死後そいつをカミサマに仕立てたものを言います。 有名なものに、菅原道真がいますね。彼の場合藤原時平って人にハメられて、失脚して太宰府で死亡したわけですが、その後、怪異がおきた為(日本史の教科書とかで見たことありません? 時平さんが太刀を構えていて、雷様が迫ってきている絵。あの雷様が道真です)、カミサマとなり、「天満宮」というものが出来ました。 受験で有名なカミサマになっているわけですが(湯島天神とかも彼を祀った神社です)、彼は学問の神様で、生前も抜群の秀才でならしていたお人ですが、実は大学入試では中の上だかで合格しています。思ったより良くないでしょ?w まぁ、これは本当に雑談ですね。 で、御霊を紅葉は目覚めさせ(人一人をよりまし(生け贄?)にして)、それを殺している。そしてそれを追っているのが瑞貴です。ちなみに瑞貴の家は古流武術の道場で、彼女は最強の武術家でもあるのです。そして幼い時に事故とはいえ、人を殺めてしまった過去があって……。 どうも、前世的なもので、紅葉、そして瑞貴には関わりがあるようで、そこらへんが紅葉、そして瑞貴変質(人ならざるものになる)の理由の一端のようです。ただ、まぁ何度も述べてるように、本当に物語全体のさわりの部分しかリリースされていないので、謎は多いんですよね……。 キャラクターメイキングは、こってりとした伝奇でありながら、意外とさっぱりしているような……。まぁ、かなり私自身がこの作品に思い入れがあるから、そう感じるだけかもしれないのだけれども。 ちなみに主人公の瑞貴はとっても綺麗です。所謂クールビューティーを地でいくような、そういうタイプで、個人的にとっても好きなビジュアル。一応、瑞貴はこの世のものでは無くなった15歳の時から歳もとらないわけですが、23歳くらいのお姉さんに見える……。 そう言えば、脇役が良かったですよね。駿一というキャラです。 彼は、瑞貴がまだ人であった頃から、瑞貴の道場に入門していた男性でして、彼女の従者を以て自らを任じている人物です。立場的にアリーナ姫に対するクリフトみたいなヤツです。 駿一の立ち位置好きですねぇ。お姫様の従者ってポジションは私の理想でもあるのです。 基本的に、自分がトップになる、というのは厭なんですよ。二番目のポジション。そこに私のこだわりがあります。そう例えば、新撰組で言えば、土方歳三みたいな(って、これはこれで美味しすぎる役かw)。 駿一は、みずきに「人間」としての生活を忘れさせない為に食事を採らせたり(そう、もうみずきは食事すら採らなくてもいい体なのだ)する。 ともあれ、この駿一が相当美味しいキャラなのは間違いなくて、彼が実は作品を底の部分で支えている、そんな印象がありました。 気になった所は、やっぱり本作が未完である、という所に拠るものが殆どです。 結局、瑞貴は紅葉を追って何をしたいのか? が不明瞭なんですよね。ただ、愚直に自分の愛している紅葉を追っているだけで、彼女の行動に干渉したいのか、それともただ追えばいいのか? はたまた紅葉が呼び出す御霊を彼女の代わりに始末したいのか、そこらへんがまだ現段階では分かりません。瑞貴自身もそれについて悩んでいる、という描写すらあるわけです。 挙げ句、第一話目のラスト付近で、瑞貴は半分は自分のせい、もう半分は紅葉のせいで完全に「アッチ」に踏み込んで、あまつさへ変質してしまったヤツに「何でこんな所にきたんだ」なんて怒鳴ったりするわけですが、紅葉こそ最後の一押しをした犯人なんですよねぇw この部分もちゃんとフォローされているんですけれどもね。 結局、文章も上手いんですよ。三点リーダは二つ続けて使っているし、「?」の後は全角一字分空けているし、読みやすい文章です。しかも気になる部分があっても、ちゃんとフォローも入る。 内容もまさに「伝奇」でありながら、やっぱりとっても面白いし、そこにはオリジナリティもちゃんと入っている。 そんなハイクオリティの作品だからこそ、制作が凍結してしまっているのが本当に残念。 いや、あんまり考えたくないのだけれども、これは……もう完結は絶望的かなぁ……? 一番の気になった点は、このリリースの問題ですよね。 そうそう、18禁作品ですが、そんなにアレな場面はないと思います。百合ですしw いつにもましてとりとめのない文章になってしまいましたが、クオリティも高く、私イチオシの伝奇作品です。伝奇好きは固より、そうでない人も是非一度、プレイしてみて下さい。 それでは、また。 P.S あまりにとりとめがなさ過ぎるので、後で書き直すかも。
by s-kuzumi
| 2008-08-23 20:59
| サウンドノベル
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