人気ブログランキング | 話題のタグを見る

久住女中本舗

kuzumi.exblog.jp
ブログトップ
2008年 08月 31日

フリーサウンドノベルレビュー 『40日40夜の雨』

フリーサウンドノベルレビュー 『40日40夜の雨』_b0110969_20481517.jpg

今日の副題 「もの悲しい終わりと始まり」

※吟醸
ジャンル:終末ファンタジーノベル(?)
プレイ時間:1~1時間半程度
その他:選択肢なし、一本道。
システム:NScripter

制作年:2007/1/?
容量(圧縮時):14.1MB




道玄斎です、こんばんは。
最近、雨が良く降りますね。雷も鳴ったりして、何となく不安な気持ちを駆り立てられたりします。今日は、コメントにてご紹介して頂いた作品を調べていたら発見した作品を取り上げようかと思います。実は既にダウンロード済みで「未プレイ」なるフォルダに入っていたと知ったのは、プレイし終えてから。
というわけで「ZIGZAG」さんの『40日40夜の雨』です。

勘の良い方はタイトルだけで、うっすらと作品の内容が推測出来るんじゃないかな、と思います。
良かった点

・全体的な雰囲気が見事に統一されている。

・独特の余韻を残す良質のラスト。


気になった点

・スクリプト関係でエラーが出てしまう(私の環境だけかも……?)。

・多めのアイキャッチが、やや五月蠅いか?

ストーリーは今回は私が軽く纏めておきましょう。
降り続く雨の中、“ブリキ”と呼ばれる兵士は一人の少女と出会う。
戦争の続くこの世界で、二人の出会いは何をもたらすのか? 
幾夜も続く雨の中、この世界の行く末は?
上質の雰囲気と余韻を残す終末ファンタジックノベル。

大体、こんな感じです。


終末モノは久々です。
そういえば『終末によせて』でしたっけ? 良質の終末モノがフリーのノベルゲームでありましたね。あれは確か現代というか、近未来が舞台の作品だったように記憶しています。
本作の場合、多くの終末モノと決定的に異なっているのは、その舞台設定にあります。現代ではない、かといって近未来でもない。ファンタジックな世界が舞台となっているのです。

今、パッと思いつくよくある終末モノの設定は「各国間の戦争が激化し、人類は滅亡の一途を辿る」とか、或いは、「原因不明の病が蔓延し、人類の努力も空しく少しづつ、そして確実に世界は滅んでいく」とかですよね。

本作は、手榴弾があったり、ライフルといった武器が存在しているけれども、どこか懐かしさを覚えるような西洋風のファンタジックな街の雰囲気が同居していました。
この雰囲気作りが巧みでしたね。背景画像の選択、そしてその加工(してますよね?)、オルゴールの音色の音楽、淡く儚いイラストと全体が統一された雰囲気は見事の一言。
こういう雰囲気、好きなんですよねぇ……。

今、少し触れましたがイラストもとっても綺麗でした。
綺麗と言っても淡く儚いタイプの綺麗さ、ですね。塗りも少し水彩風と申しましょうか? 作品の雰囲気にマッチしており良かったと思います。ヒロイン(?)のキリエ自体のイラストも可愛らしさの中に儚さを持っており、好感が持てました。


勘の良い人ならば、本作のタイトルでもある「40日40夜の雨」がどこから取られているか、お分かりでしょう。そう、「創世記」です。

「七日の後、わたしは四十日四十夜地上に雨を降らせ、わたしが造ったすべての生き物を地の面からぬぐい去ることにした」(創世記7.4)

というわけでして、本作のタイトルもここから取られているようです。
あんまり、ネタバレっぽくならない方が止さそうな作品なので、自重しますが、大体これで本作がどういう感じの作品なのか、その一端が分かるのではないでしょうか?
まぁ、割とすぐに仕掛けが分かってしまう部分もあるのですが、そうしたものが分かっても尚、独特の雰囲気、そして良質の余韻を残す良い作品だったと思います。

文章も上手ですよね。
割と細かい描写など凝っているんですが、厭味が無くて読みやすい、良い文章でした。
画面の構成の仕方もやっぱりセンスを感じさせます。

中身に関する部分で、少しだけ分からなかったのは、「それじゃあ、キリエは誰を選んだんだ?」という事。
って、こんな事を書いてしまったらネタバレになっちゃうか……w


さて、気になった点ですが、実はエラーが出てしまったんですよ。
物語開始直後に、「取り敢えず、一度セーブしておこう」と思い、右クリックをしてみたら「suiteki.wavが開けません」とかいうエラーが出てしまいました。suiteki.wavを鳴らすように記述してあるにも関わらず、ファイルが無かったりするとこういうエラーが出るのでしょうか? 或いはもっと単純に、悪名高いWindowsVistaを使っている私の環境の問題なのかもしれません。そっちの可能性の方が高そうだ。

ですので、右クリックを使わないで一気にプレイしました。
何か途中でプログラムが落ちてしまったら困るので、バックログも使わず、一文一文じっくりと読んでいったら、結構時間が掛かってしまったという訳です。
大体30分程度のプレイ時間が想定されているわけですが、流石に30分って事はないんじゃないかな、と。40~50分くらいは掛かると思います。

もう一点は、かなりアイキャッチが多いんですよね。
アイキャッチっていうと、ちょっと違うかもしれないのですが、場面が変わる際にそれ専用の一枚絵が表示されて場面が変わっていきます。
かなり頻繁に、このアイキャッチが表示されているので、やや五月蠅く感じる部分がありました。ま、あんまり作品の本筋とは関係のない部分ではあるのですが、それでも少し、ね。
又、そのアイキャッチ画像に「強い雨が降り始めた」って文字が書いてあって、英訳も表示されています。これは、ほんっと私の主観というかイメージなんですが「Heavy rain has begun to fall」の方がいいんじゃないかなぁ、なんて思ったり思わなかったり。

私の英語力なんてちょっと怪しげなので、アレなんですが、一応書き留めておきますw


最後に、本作の良かった点をもう一点挙げておくと、ラストがいいんですよね。
終末モノのラストって、割と「余韻」を残したものになるような気がしないでもないのですが、そういう事情を考えたとしても、本作のラストはとっても良かったです。単純に私の好みでもあるんですが。
“感動的”というのとは違うし、かといって絶望的な終わりでもなくて、敢えて表現するならば、ほんの一さじの悲しさを持った優しさ、とでも言えばいいのか……。少し不思議な感覚を覚える印象的なラストでした。


30分では終わらないとはいへ、そんなに長い作品でもない事は確か。
完全なハッピーエンドでもないし、バッドエンドでもない或る意味で、プレイヤーの受け取り方次第のような、そんな作品でした。
もう九月になりますし、雨の日にでもプレイしてみて下さい。

by s-kuzumi | 2008-08-31 20:48 | サウンドノベル | Comments(2)
Commented by 空と雪 at 2008-09-01 11:22
>「m\suiteki.wavが開けません」

NScripterの場合、該当のファイルが無いとこの手のエラーが出ます。
同階層のフォルダ内に新しくフォルダ「m」を作成して
その中にsuiteki.wavとkizyu.wavを作成することで回避できそうです。
(上記の操作は空のテキストファイルの拡張子を変更して…)

とても良い雰囲気のお話でした。
Commented by s-kuzumi at 2008-09-01 20:16
>>空と雪さん

こんばんは。
やっぱりエラーでましたよね?w

で、お教えいただいた通りに.exeと同じ階層にmなるディレクトリを作って空テキストの拡張子変更で、「suiteki.wav」を作ってやったら、無事セーブが出来るようになりました。
貴重な情報、有り難う御座います。

あのエラーメッセージを見る限り、三つくらい効果音を重ね使っていて「こうやって効果音は使うのか……」と妙に感心してしまいました。

効果音やら、スクリプトやら最近そんなものが気になってきています。
NScripterも設定次第で、かなり美味しく使えるツールだなぁ、と再認致しました(勿論、吉里吉里/KAGもとってもオイシイけれども)。

取り敢えず、取っつきやすいNScripter。いじり倒してみようと思います。
名前
URL
削除用パスワード


<< なんてことない日々之雑記vol...      フリーサウンドノベルレビュー ... >>