2008年 09月 12日
![]() 今日の副題 「かなり本気のアリスです」 ジャンル:ファンタジック感動アドベンチャー(?) プレイ時間:1ルート2時間くらい(コンプリートには3時間以上掛かる?) その他:選択肢あり、バッドエンドも多数。 システム:吉里吉里/KAG 制作年:08/07/31 容量(圧縮時):67.0MB 道玄斎です、こんばんは。 ここ暫く、中々ゲームが出来なかったのですが、少し調子が出てきたかな、という感じです。まぁ、いつも通りマイペースでいきますよ。 今回は以前、コメント欄にてお勧め頂いた作品です。実は私も気になっていて、一応落としてはあったものの、プレイするのが遅くなってしまいました。 というわけで「郷愁花屋」さんの『東京アリス』です。 良かった点 こんな所でしょうか? 起動してみると分かるのですが思わず「これは……」と思ってしまうような、良質の作品の気配がヒシヒシとしていました。 ストーリーはサイトの方から引用しておきましょう。 ねぇアリス。 こんな感じ。 ってこれだけじゃ分からないんですが、ネタバレの部分も含むのでさらっと流しましょう。 相当深い作品でした。とっても面白かったです。 先ず、外見的な面で気がつくのは、背景写真と手書きのイラストの上手な融合です。どちらかと言えば少女マンガタッチの絵柄で淡い雰囲気のイラストですね。そうしたイラストが現実感バリバリの(勿論かなり綺麗な素材なんですが)写真素材の上に載っかって表示される。 こうやって書くと「ミスマッチなんじゃ?」と思ってしまいそうになりますが、全然そんな事はなくて、不思議な融合感があってとっても良かったです。オープニングは期待感を煽ってやまないとても良いものだったと思います。 ちなみにゲームを開始すると真っ先に渋谷の交差点の雑踏の写真が出てきて、私なんかはもうそれだけで期待しちゃうんですよね。個人的に思い入れの深い街ですしね(生まれて初めてオニャノコと出かけたのも渋谷だった!)。 演出面では、かなり良いセンスを持った作者様だと思いますよ。 ストーリーをやっぱり少し補足しておくと、中学生の欧太が、ある日学校を三日連続で休んでいる幼なじみの「ありす」の様子を見にいく所からスタートします。そして、どこからともなく現れたアリスに誘われるままにマンションの裏の駐車場に行ってみると、何故かそこは駐車場ではなく不思議の国だった、という感じです。 以降、その不思議の国での体験がメインとなっていくのですが、前半部はやや冗長な感じがしないでもない。というのは全体を見回してみると、中盤~ラストに掛けてのテンポが良く、しかも思わぬ仕掛けが明らかになって、という作りなので、それと比べてしまうと前半がダラダラと感じてしまうという。ただ、これも難しい所で、不思議な不条理な世界、みたいな部分もきっちり描かないと作品の根幹が危うくなってしまうわけで、ちょっとコメントしづらい部分ではあります。 他に気になったのは「バックログ」でしょうか。 バックログの文字色が白なんですが、結構背景と干渉し合って見づらいんですよね。 特に文字表示領域の所に掛かって表示される分は、殆ど視認不可能というw 本作で一番気になった点はこのバックログの問題でした。 で、先ほど述べましたが、中盤からの盛り上がりがいいですよねぇ。 プレイヤー自身も「俺、何やってるんだっけ?」というような一種の不可思議なワールドに突入してしまうわけですが、そうした中で、一気に核心に迫り、感動のラストへ導く展開はとってもグー。ラストはちょっぴり涙腺がゆるんでしまうようなもので、感動出来る事請け合いです。これも本当にいつも言ってる事なんですが、やっぱりある種「ラストでの盛り上がり」っていうのは必要だな、と。淡々と始まり淡々と終わる、その枯淡みたいなものを打ち出した良作があるのは事実、されど、ストーリー性があるものに関してはやっぱりメリハリがあるといいですよね。 そこで重要なのはクライマックスです。或る意味、作品が結実していく場所ですから、過剰なくらい盛り上がってもいいんじゃないかな、と私なんかは思ったりしますが、皆様は如何でしょうか? 最後に物凄く重要な部分を。 本作、当然『不思議の国のアリス』がその典拠となっているわけですが、「かなりアリス」してます。アリスっていうと、まぁ、可愛い女の子の代名詞みたいなそういう使われ方をされたりするわけですが、本作の場合は、本当に原典であるアリスに近い感じがあるんですよ。 以前もちらりとどこかでお話しましたが、原作のアリスはかなり難解なんです。論理学みたいな要素が入っていたり、言葉遊びのような要素もあったりと、児童向けの作品でありながら、大人が読んで頭をひねって考えるにも足る作品なんですね。 本作もそうした原作アリスの持ち味をかなり踏襲していて、私は凄くそこに興味を覚えました。一例を挙げると、お花の精みたいな奴らが出てくるんですが、リリーと名乗る百合の精がいるんです。彼女は百合の語源についてあれこれ語って、「揺れるから「百合」とか宣っちゃうわけです。そういうのは『日本国語大辞典』を各自読んで頂くとして、更に「鼻は、花から離れて鼻になる」みたいな発言があって、思わず唸ってしまいました。 所謂「音通」という事で、物事を解釈するわけですが、この辺りの言葉遊びのセンスはまさに原作のアリス的です。って言っても、和歌な世界では結構良くやられているやり方なので、実は日本的なのかも……。 他にもシュレディンガーの猫に関するお話も出てきたりしますよ。これは蛇足ですが、アリスの作者も、シュレディンガーもロリコンだったという事でも有名です……w 一番の問題は、ラストなんです。 ネタバレを回避しつつ頑張って書くと、「結局、不思議の国は何だったの?」という事になります。これは実はかなり早い段階で明らかになっているのですが、その示された解答が絶対解ではないという危うさがあるんですよ。 それはありすのものではなくて、実は欧太のものかもしれない。或いは、もしかするとクロ(登場人物の一人、兎です)のものかもしれない。最後の解釈が読者にゆだねられている点、物凄く面白く、またとってもアリス的で高度な作品だと思いました。 多分、フリーのサウンドノベル/ノベルゲームの中でも、本作はかなり内容的に「高度」な部類に入るんじゃないかしら? 本当にラストは必見ですので、是非プレイしてみて下さい。 最後に一点。 どうやら、フルコンプした上で、ゲームに勝利するとオマケシナリオに到達出来るらしいのですが、全然出来ません。全ての選択肢を試しているのですが、どうやら順序的なものがあるらしく(パッチを適用して、44分の39まで進めた事は確認出来たのですが……)、フルコンプは相当難しいと思われます。 「フルコンプしたぜ!」という方がいらしたら、是非アドバイス下さいw /* ↑フルコンプしました。結構時間が掛かってしまい、更に50枚神経衰弱をクリアーするのに、10分くらい掛かってしまいましたが、何とか全て作品を読み切る事が出来ました。 フルコンプの為の注意点は、 ・バッドエンド後に出てくるチェシャ猫のアドバイスもしっかり聞く という事に尽きるかと思います。あとは、選択肢を悉く試していけば大丈夫なハズ。 ちなみに、神経衰弱は、 ・考える時間があったら、カードをめくる というやり方が私には合っているようでした。 制限時間が短いですから記憶して、脳みその中に情報を詰めて、更にそっから情報を引き出して、ってやってると時間が掛かる。兎に角、カードをめくりまくって、即座に反応出来るものだけペアで取っていく。それを繰り返していくと、二三回もやれば大丈夫だと思いますよ。 */ 高度でちょっぴり知的で面白い作品でした。 こういう作品、中々ないので貴重ですね。 前半部で少しだれてしまう部分もあるのですが、ラストは必見ですので、是非最後まで。 それでは、また ※9/13 加筆修正
by s-kuzumi
| 2008-09-12 23:16
| サウンドノベル
|
Comments(4)
![]()
フルコンプでオマケシナリオ?神経衰弱のオマケゲームありますけど...
0
>>ひかりさん
こんにちは、はじめまして。 何とか皆さんのお陰でフルコンプ&50枚神経衰弱をクリアーし、オマケシナリオ(というか後日談?)を読む事が出来ました。 どうも、「バッドエンド」を最後まで読んでいなかったのが原因みたいです。チェシャ猫のアドバイスを全部終わりまで聞かないと駄目だったんですね。 そんなわけで、後で少し加筆修正をしておこうと思います。 コメント、有り難う御座いました!! ![]() ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
>>管理者のみでコメント下さった方
何分、私も昔にプレイしたもので、どこで進行率を確認したらいいのか、忘れてしまいました。実際に起動してみたのですが、サッパリでしたw ただ、公式サイトの方に、「全クリ支援ページ」がある、との事で、そこがサポート代わりになっているようです。そちらを御覧になっては如何でしょうか? http://nfs.boo.jp/bouquet/tokyoalice/ 多分、ここ↑から、支援ページの情報が見られると思います。 |
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