2008年 09月 15日
今日の副題 「良く晴れた気持ちの良い日にはこんな作品を」 ※吟醸 ジャンル:近未来水上浪漫ADVゲーム プレイ時間:1ルート、3時間程度。 その他:選択肢あり、バッドエンドも。 システム:自作 制作年:2006/1/30 容量(圧縮時):56.6MB(自己解凍形式) 道玄斎です、こんばんは。 家を整理していたら、ちょっと昔のアルバムやらが出てきて、軽く憂鬱になってしまったのですが、今日も頑張っていきましょう。 久々に、爽やかな作品をプレイしたような気がします。真っ正面から青春を描いた作品です。青春と言うとまぁ、恋愛がその花形みたいな感じですが、本作の場合、ヨット競技という「スポーツ的」な青春と恋愛劇が絡み合い、とっても爽やかで素敵な作品になっていたと思います。 というわけで、今回は「Prime」さんの『ノトス水上紀行』です。 良かった点 ストーリーは、サイトのURLを貼り付けておきましょう。こちらからどうぞ。 久々に、物凄く爽やかで、清々しい作品をプレイしました。 実は、本作の作者様のゲームは他にも『Nature Baby』というものがありまして、これも昔プレイしています。確か、これも近未来的なSFテイストで、二人の逃避行みたいな、そういうのを描いていて、「これからどうなるんだ?」というあたりで何となくあっさり終わってしまった感があったのですが、本作の場合、かなりのボリュームがあり、そういう不足感みたいなものは感じなくなっています。 ちなみに、どうやら本作、攻略に順番があるようです。 つまり、あるルートに入る為には、他のエンドを見ておく事が前提となるらしいんですよね。その「あるルート」が誰のルートなのか、それは歴戦のノベルゲーマーたる皆様ならすぐに分かるかと思いますw 私自身、あんまり考え無しに「この人のルートはラストだろう……」とアタリを付けてプレイしていたのですが、それで正しかったみたいです。 外見的な所で言うと、一枚絵がかなりのレベルですよね。 三年近く前にリリース、という事を考えれば十分鑑賞に足る高水準なものだと思います。微妙に気になったのは、立ち絵と一枚絵だと微妙にテイストが違うんですよ、イラストの。一枚絵はどれもかなりのレベル。なんですが、立ち絵になると、例えば先輩は微妙に腕が長すぎたりしてw 他にも、外見って言ってしまうと語弊があるのですが、音楽も良かったですよね。特別に依頼して作ってもらった音楽らしく、手垢にまみれていないというか、新鮮な感じでした。曲自体も物凄く良いものがありましたね。私が好きなのは「きみのために」というピアノ曲です。ノベルゲームに付きものの「しっとり」として「泣き」を誘発させるようなタイプの曲なんですが、常夏の世界、その夏の翳りを感じさせるようもので、今もエンドレスで流しています。 キャラクターメイキングも良かったです。 ヒロインの、亜子、先輩、そしてヒカリさんがメインのキャラで、彼女たちは、割とありがちな造型ではあるものの、クラスメイトの怪しい三人組、そして転校生でヨット部に入部する事になる護法院君、ヨット部のOGなどなど、とってもいいキャラでした。これまたいつも言ってますが、ヒロイン達が魅力的である、というのは或る意味当たり前でして、作品の質を底辺部分から支えているのは、サブキャラクターなんですよね。 最初は、護法院は滅茶苦茶むかつくんですが、段々と仲間として一緒に頑張るようになったりして、そういう部分の青春ストーリーもちゃんと内包されているのも高ポイント。 一見するとイロモノキャラのクラスメイト三人衆も、暗くなりがちな場面をコミカルに演出してくれたり、時には主人公を後押ししてくれるような部分もあり、印象的なキャラクターでした。 では、各ヒロインのルートの解説めいた事でもやっていきましょう。 先ずは亜子ですが、彼女は定番の「妹系キャラ」です。 幼なじみにして妹みたいな存在。オイシイポジションです。ある理由の為ヨットをやめてしまった主人公なんですが、主人公の抱える問題を全て分かった上で、それでも彼にヨットに向かわせるその発端となるキャラでもあります。 イラストも立ち絵、一枚絵共にとっても可愛らしくて、ヒロイン然としていますw このルートでは、主人公のヨットに対する想い、そして彼自身の成長と共に、亜子そのものも成長し、更に二人の恋愛が描かれるという、大変満足度の高いシナリオになっておりました。 やっぱり、恋愛だけ、というよりも色んな要素が詰まって、「青春を丸ごと」描くような作品、いいですよねぇ……。 もしかするとありきたりなのかもしれない。けれども、熱い展開で、素直にそして一生懸命作られている事が伝わってきますし、とっても良いシナリオだったと思いますよ。 次に先輩のルート。 これは唯一の昨年度からのヨット部の人間ですね。 部長として、ヨット部を牽引していく一方で、彼女には夢があり、それを主人公と共に叶えていくような、前向きでこれも良いシナリオでした。 彼女自身がヨット部の部長という事もあり、ヨット競技の描写は他のルートよりも多め。一生懸命ヨットレースに取り組んでいく姿に思わず感動してしまう事請け合いです。 最後はヒカリルート。 記憶喪失の少女です。まぁ、凄くイカニモな立ち位置のキャラですが、作品世界の根本を支えるようなストーリーが展開されていきます。他のルートでは、このヒカリの謎みたいなものは明らかにならないのですが、このルートでは思う存分。 ただ、SF色が強いルートですし、少し他の二つのルートと比べてしまうと、浮いた印象がありますね。ま、元々、現代ではない未来の島が舞台の作品ですから、本当は本作のジャンルはSFと言ってもいいくらいなんですけれどもね。 そんなわけで、私はやっぱり亜子のルートが一番お気に入りでした。 本作のキモの一つである「ヨットレース」が強く描写されるのは、この亜子と先輩のルートなわけで、やっぱり王道でありながらも、とってもグーなシナリオだと思いました。 さて、気になった点ですが、どのルートに対しても、もう少しヨットレースの模様を描写して欲しかったな、と感じました。あまりなじみのないスポーツだったのですが、プレイしているととっても面白そうなスポーツなんですよね。かなり専門的な用語も出てきますし、ヨットそのものに興味を抱かせる、という意味では成功していると思います。 が、ラストのヨットレースの描写がそれに比して少し寂しいかな、と思うのもまた事実。もう少し、レースの模様に筆を費やしても良かったかもしれません。 あとはヒカリさんのルートが他のルートに比べて、少し浮いていたように感じます。 ヨットという最高にグーな小道具があるわけですから、もうちょっとそこらへんを絡めつつ、彼女のルートが進行していっても良かったのかな、なんて。 全体的に、あまりお目にかかれない、本当に爽やかで気持ちの良い作品だったと思います。 若干、自作のシステムが使いにくい部分もあるのですが(例えば、「オプション」からセーブを行わないと、沢山セーブスロットが使えない)、多少の使いにくさはあまり気になりませんでした。 それは、どのルートもストーリーの流れが良く、プレイしながら夢中になってしまうような、良質の作りによるものでしょう。 良く晴れ渡った日、窓を開けて風を感じながらプレイして貰いたい作品です。 それでは、また。
by s-kuzumi
| 2008-09-15 16:41
| サウンドノベル
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