2008年 10月 26日
今日の副題 「変質する世界」 ジャンル:SFノベルゲーム(?) プレイ時間:2時間半~3時間くらい その他:選択肢なし、一本道。 システム:Windows/PSP対応 Hybrid Mini-novel(実体は良く分からん……) 制作年:2008/10/23(配布開始) 容量(.exe形式のインストーラー):58.9 MB 道玄斎です、こんにちは。 昨日、さらりと予告しておいたちょっと長目の作品です。元々は昨年の冬コミにて頒布されていたもののようです。それが今回、フリー版として公開された、という事ですね。 独特な画面の比率で、どなたが作られているのか、分かる人にはすぐに分かってしまうかもしれませんね。 というわけで、今回は「Team Eye mask」さんの『Monotone Eden RR』です。 ちょっぴり哲学チックなSFっぽい作品でした。少し、難しい所はあるような気がしますけれども、その手の作品が好きな人にはたまらないもののなっているかと。イラストは相も変わらず美麗ですしね。 良かった点 私、Vistaを今は使っているんですけれども、どうにも不安定な感じでした。 例えば、右クリックからセーブを行うタイミング、或いは、バックログを見ようとするとシステムが落ちる、なんて事が。あっ、もしかしてXP互換モードとかで走らせれば良かったのかも。 ま、それは置いておくとして、ストーリーですね。 今回は、サイトのURLを張っておきましょう。キャラの立ち絵なども見れますので是非ご覧下さいませ。こちらからどうぞ。 久々に「長目だけどもプレイしてみよっかな」という気になりました。 それは、過去の二作品『楽園』と『僕の心は雨のち晴れ』がとっても素敵な作品だったから、に他なりません。もし、未プレイの方がいらしたら是非プレイしてみて下さいな。 で、今回は過去の二作品とはちょっと毛色が変わって、SFっぽい作品です。 タイトルがそれを結構表しているような気がしますが、どうでしょう? 先に張っておいたURLからストーリーの概略を見て頂けると一番なんですけれども、SFとファンタジーを混ぜているような、ちょっとそんな感じですかね。ファンタジックな作品って時にジャンルコードがSFだったりする事もままあるわけですが、「幻想種」なる種族が出てきたりして、ハードボイルドSFっていうよりもそっち寄りです。 うんっと分かりやすく説明しようとすると、多分、こういう事で良いのではないかと。 つまり、「幻想種なる種族をイタコにして故人を呼び出したり、世界の秘密に触れる」。多分、発想としては割とアナログな所があるんだけど、それを超ハイテクで科学的にやっちゃおう、というのが本作の中で一番多く描かれる、幻想種の「クァレ」と「僕」の対話実験です。 ちなみに「クァレ」はクオリアの単数形だそうな。 クオリア、最近、やたらあちこちに出まくってる茂木健一郎の本でも一冊読めば何となく分かるハズです。感覚質っていう訳語が付くわけですが、昔、私も自分の書きモノの中でクオリアについてちらっと書いた事があるので、それを引っ張ってきて、軽く解説してみませう。ってそれを書いたのは2006年ともう二年も前だし、自分の認識があってるかどうか今ひとつ反応が全然無かったので不安なのですが。ちなみに茂木さんの本をまるまる信用して書いていますw 昨今のメディアの露出具合を見ていると、どうにも胡散臭さは感じるのですが……。。。 兎も角、ありとあらゆる知覚は脳みそと密接な関係があります。っていうか脳みそがないと何も知覚出来ないわけですね。 で、人間の心に現れる感情、感覚、質感(こいつらをクオリアと呼ぶ)ってのは、ニューロンの発火パターンで決定されるそうです。本作でも「赤いもの」の喩えが出ていましたが、実際に赤いものを見たときに生じる、脳内のニューロン発火パターンが生じていれば、「実際にそれが赤くなくても赤いモノとして質感なりを認識」してしまうというわけです。 あってるのかな? まぁ、専門家じゃないからいいかw そう考えれば、クオリアっていうかニューロン発火パターンを自在に操れたら最強ですよね。 例えば、「美男子を見たときに生じるニューロン発火パターン」を相手に生じさせる事が出来れば、私の実際の容姿が残念なものであれ、相手は「美男子」として認識する事になるからです。 っと、脱線してしまいました。 ともあれ、あっち側の世界から、こっち側の要求をコピーして見せてくれるような幻想種、それにクァレと名付けるのはとっても納得がいきます。 本当のクァレはどんな姿をしているのかそれは分からないわけです。けれどもあの実験装置の中では、クァレは「僕」の娘である祈の質感を持って存在していたり、「僕」が考えた人魚の質感を即座に具現化してみせたりします。 興味深い所ではあるんだけども、ちょっと難しいかな? という気がしないでもありません。 一応、難しめの語は、クリッカブルになっていて注釈モードに入る事が出来るのですが、注釈モードの中に更にクリッカブルになっている語があって、更にそれをクリックしたら更にクリッカブルな……みたいな事もあるので、ちょっぴり用語だとか概念だとかを理解するのが難しい所はあるのかも。 ただ、この注釈モードなんですけれども、結構面白いんですよ。 本文だけだと絶対に不足する説明が入っていたりするので、新しい語を発見したら取り敢えず読んでみると面白いですし、本編理解の一助にもなります。半分裏話みたいなのも入ってるしねw さてさて、ここらでちょっと目線を変えてみましょう。 まぁ、外見的な所をちらほらと。 この作者様の作品はかなり変則的なウインドウサイズを採っています。というのもPSPでもプレイ出来る、というのが一つのウリだからですね。そちらの方の比率に合わせてある。 画面を横に広く使えるっていうのは、やっぱり色々メリットがあると思いますよ。本作みたいに、画面左側から文字が流れ込んでくるような演出も、ウインドウサイズが狭かったらちょっと変な気もするしね。 これは別に気になるって程じゃないんだけども、例えばフォントとかって変えられないのかしら? ウインドウサイズのデザイニングとかが他と異なっているだけに、NScripterデフォルトみたいな感じだとちょっぴり違和感があるかな……? 起動した直後の画面なんかもNScripterのデフォルトっぽい感じがあるんですが、このノベルシステムの実体ってNScripterベースのものなのかなぁ? そうそう、立ち絵はいつも通り美麗ですよ。 私は、敢えてクァレではなく、アリシアさんをお勧めしておきます。この手合いの女性が私は好きです。実は軍の関係者なのですが……。 明言されませんが、恐らく本作の舞台となっている研究室は、軍の施設かな、と。注釈モードの中身とか、本編のそれっぽい言葉を拾っていくと、軍かそれに関係のある組織の施設、という感じです。勿論、軍が関与している以上、「幻想種」とのコンタクトという実験を、兵器というか、そういう方向に利用できないか模索しているようです。 大体、こんな感じで、割と渋めのSF作品でした。 実は一回だけループするわけで、そういう仕掛けもSFっぽいって言えるかな。 後半くらいから、少し「偏在」とか「可能性」「創世」とかまぁ、そういう難しめの用語が沢山になって、頭の悪い私なんかは一杯一杯になっちゃったわけで、もうちょっと結末に向けて、分かりやすさがあっても良かったかな、と感じました。 気になった点はそこが一番かな? あんまり分かりやす過ぎると、それはそれで何となく良くないし、バランスが難しい所だとは思うのですが。。 今日はちょっと説明っぽくて読みにくいですね……。 SF好きなら文句なしにお勧めです。 そうでなくてもクァレのビジュアルとか、そういう所から入って、じっくりじっくり読み進めていっても良さそうです。 難しい部分があるって書きましたけれども、舞台とか空間、期間みたいなものは、しっかりと固定されているので「読みやす」くはあるんです。 興味深い設定なども多いと思いますので、本作をSF入門にしてみてもいいかも。 というわけで、久々に長い文章を書いたら疲れた。 例によって纏まりが悪くて申し訳ないです……。。 それでは、また。
by s-kuzumi
| 2008-10-26 14:06
| サウンドノベル
|
Comments(2)
Commented
by
am0
at 2008-10-28 00:45
x
「MonotoneEden」でシナリオを執筆いたしましたam0と申します。
このたびは懇切丁寧なレビューを頂き有難うございます。 「RR」と命名した二週目にあたる部分は正直やりすぎた感があるのですが、 どうやってもハッピーエンドにならない物語を 世界を捻じ曲げてでもハッピーエンドにするとしたら… というifの話だとお考えいただければ。 ややこしい部分はその為のガジェットに過ぎませんw 「RR=ReverieRemind=幻想の追憶」という意味合いはそこら辺も含めたタイトルだったりもします。 可能性の世界すら「情報」というカタチで把握できるクァレが何遍もやり直してやり直してようやくたどり着く…というイメージでしょうか。 ちなみに、曲の歌詞に関してもOP、EDともに 「繰り返し」を謳っているのはそんな理由からだったり。 同梱の端書.txtに断片みたいなお遊びが入っているのでもしよければそちらの方もちらと見ていただければ幸いです。 次作にあたる「AbendEden」も折を見て公開することになるかと思うので その折にはまたよろしくお願いいたします。
0
Commented
by
s-kuzumi at 2008-10-29 18:51
>>am0さん
こんばんは。 こちらこそ、新作のご連絡を頂いて、本当に感謝しております。作品も楽しませて頂きました。 少し分かりにくい部分がどうしてもあったのですが、ご解説頂き、すっきりしました。 テキストファイルの方もチェックしてみますね。 次回作の方も楽しみにしております。 こちらこそ、今後とも宜しくお願い申し上げます。 |
アバウト
カレンダー
メモ帳。らしきもの。
■レビューリストを作りました。随時更新予定です。こちらからどうぞ。
■ノベルゲームのコミュニティと素材ポータル始めました 制作者の方とプレイヤーを繋ぐような、そんなコミュニティを作りました。 こちらからどうぞ。 そして、ゲーム制作に利用出来る素材ポータルサイトも作りました。 こちらからどうぞ。 どちらも、是非ご覧になってみて下さい。そして、ご参加/ご利用頂ければ幸いで御座います。 フリーのノベルゲーム/サウンドノベルをレビューをやっております。たまに私のどうでもいい日々之記録が入る事がありますが、ご了承下さいませ。 ・“引用”としてスクリーンショットやストーリーの概略などの文章を使わせていただいております。問題が御座いましたらご連絡下さい。対処いたします。 連絡先はkazenitsurenaki あっとまーく gmail.com です。 ・レビューは「甘口~中辛」くらいです。 ・評価は完全に私個人の主観に基づいています。評価は「大吟醸」「吟醸」「無印(=純米)」の三段階となっております。参考までに。 で、実は、 こちらが本館です。ブログは別館的な位置づけなのですが、何故かこちらがメインになってしまっています……。バナーなんかもあるので、リンクを張って下さる方はご利用下さいませ。 リンクに関しては、お好きにやっちゃって下さい。許可なんかは一切要りませんので。 本館の方では、謎の音楽制作などをやっております。こっそり更新している事もありますので、たまに見てやって下さると嬉しいです。 カテゴリ
以前の記事
2024年 05月 2023年 07月 2020年 08月 2020年 05月 2020年 01月 2019年 12月 2018年 09月 2017年 09月 2016年 12月 2016年 06月 2016年 04月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 10月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 検索
タグ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||