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久住女中本舗

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2007年 08月 20日 ( 2 )


2007年 08月 20日

フリーサウンドノベルレビュー 『挽歌の候、如何お過ごしでしょうか』

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今日の副題 「喫茶店の本質」

※吟醸
ジャンル:田舎の喫茶店復興キャンペーン(?)
プレイ時間:一時間半~二時間程度
その他:選択肢なし、一本道。
システム:NScripter

製作年:2007/5/?
容量(圧縮時):93.6MB



道玄斎です、こんばんは。
何だか急激にアクセスが増え、又コメントも沢山頂き恐縮の至りです。
取り敢えず、今日も頑張ってレビューを書いてみましょうか。
今日は「花を吐く抄女」さんの『挽歌の候、如何お過ごしでしょうか』です。

ちょっと、メイド喫茶モノという事で警戒しつつプレイしたのですがw いや見事に予想を裏切ってくれました。開始から十分で「あっ、面白い……」と。



良かった点

・メイド喫茶と言いつつも、ブームに乗っただけの作品とは一線を画するストーリー。

・実際に喫茶店で掛かっていそうなBGMが、プレイの雰囲気を盛り上げてくれる。

・特徴ある樹姫(いつき)の一人称の語り口。

・タイトルも一ひねりあって面白い。



気になった点

・誤字脱字など、テキスト部分に若干難あり。

・ラストの〆の部分が、もうちょっと盛り上がっても良かったかも。




目の肥えたプレイヤーの方々は、もしかしたら「メイド喫茶」という単語に反応して、プレイを躊躇してしまうかもしれません。けれども、実際プレイしてれば、開始早々から、ただの「メイド喫茶」ものとは明かに違う、良質の作品が持つ手触りを感じると思います。

ちなみに立ち絵は存在せず、コーヒーを象ったイラストの下にテキストが表示されていくスタイルです。『ナルキッソス』スタイルって言えば分かりやすいかな?
あっ、立ち絵が存在しないって言い切っちゃうと語弊がありますかね。コーヒーのイラストの左右に、喫茶「挽歌」の看板娘、樹姫とまひるのイラストが表示されたりもします。
そうそう、女の子やお客さんはボイス付き。

サイトの方からストーリーを。


地方の片田舎でひっそりと佇む喫茶店「挽歌」。
経営不振の喫茶店を建て直そうと、喫茶店の娘の常連従妹さんが現在の店をメイド喫茶に変える様に提案する。
その開店準備に至り、娘さんも巻き込み、半分だまされて働かされる。
どちらも経営、運営については詳しい訳ではない。
それ以上にお客さんが来ない。
そんな行き着く先喫茶店の建て直しは成功するのか……。



まぁこれだけ見ると、良くある(或いはありそうな)タイプのゲームだと思ってしまいます。
みんなで頑張って(地方ならではの特色を出すとかで)お店を建て直しました的なサクセスストーリーを想像してしまうわけですが、さにあらず。
「喫茶店」とはどういうものなのか?という問いかけとその答えが、各エピソードを通じて語られていくのです。

こうしたストーリーを支えているのは、メイド喫茶改造計画を立てた樹姫の語りです。
ちょっと慇懃なメイドさん口調(わかる?)+内向性の高い文学部の女の子みたいな、そういう独特な一人称の語りが、物語に良いアクセントを与えています。

こういう語り口、私は結構好きですね。
ちょっとくどさみたいなものは感じるのですが、樹姫の性格付けがしっかりなされており、その性格と語り口調がリンクしている為に、そんなに気になりません。
樹姫の語り口こそが本作に於ける「メイド」な部分なのかもしれません。

喫茶「挽歌」に訪れるお客さんは、小学二年生の女の子だったり、地域密着情報誌のライターだったり、或いはお遍路さんだったり(舞台は徳島でしょうね)します。

そうしたお客さんを相手に、様々なエピソードが語られていくわけですが、樹姫の「喫茶店は雰囲気と時間を売るもの」という主張が物語全体の重要なキーワードです。
飽くまでも「メイド喫茶」ではなく、老舗の、コーヒーの味がウリの「喫茶店」。
モーニングセットが手打ちのうどんだったりw とあか抜けないけれども、「喫茶店」をやっているんだ、というその矜持。それがこの作品を貫く大きなテーマであり主張となっています。

メイド服を着て、期間限定の「メイド喫茶」になる、といってもそれは単なるギミックで、本質はお客さんの為の「上質の空間と豊かな時間を提供する」という「喫茶店」のあるべき姿を追求しているに過ぎません。
ラストでは、メイド喫茶週間が終わると、樹姫とまひるはさっさとメイド服を脱いでしまいますしね。

そういう意味で、本作を「メイド喫茶モノ」としてしまうのは、誤りだと思います。
「喫茶店」のあるべき姿。そして、そこに訪れる人々との交流。そこに本作の主眼はあるようです。


さて、個人的には凄く気に入った作品だったのですが、気になる点も多くありました。
顕著なのが、テキスト部分の誤字脱字です。

これは、他のサウンドノベル作品でも良くある誤りなので、敢えて挙げておきますと、「延々と」とすべき所を「永遠と」としてしまっているケースが良く見受けられます。
本作では「永延」となっていて、これじゃ平安時代の年号だよ……w と笑いながら読んでしまいました。

後は、「客と店員がお互いを以て、お店という空間を作っていく」といった文章があるのですが、「以て」が「持って」となっていました。
これもたまに見受けられる誤字ですよね。

最後に致命的なものを挙げると、助詞がおかしかったりする事があります。格助詞です。
多分、一気にテキストを書いてしまった為、ご本人も気付かぬ内に残してしまった誤字や脱字だと思うのですが、是非テキストの見直しをして欲しいなと思いました。


こうした誤字脱字があったり、或いはラストシーンにやや盛り上がりが欠けたりするものの、本作は間違いなく傑作です。
コーヒーを啜りながらプレイしてみて欲しいですね。
たまにはスターバックスじゃなくて、普通の「喫茶店」でのんびりと過ごしたくなる事請け合いです。


※「延々」と「永延」の話なのですが、Googleで「永延に」とか調べると結構な数が出てきます。私が間違っているのかも?と思い『広辞林』第五版で調べてみましたが、多分間違ってないかと思います。もし、お手元に『日本国語大辞典』第二版などをお持ちで、「あんたこそが間違ってるよ」ってな事があれば、是非報告をお願い致します。

by s-kuzumi | 2007-08-20 21:47 | サウンドノベル
2007年 08月 20日

フリーサウンドノベルレビュー 『雷雨』

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今日の副題 「夢か現か幻か」


ジャンル:サイコホラー(?)
プレイ時間:15分~20分
その他:選択肢なし、一本道。
システム:吉里吉里/KAG

製作年:2007/?/?
容量(圧縮時):23.3MB


道玄斎です、こんばんは。
今日は、ちょっと変わり種の短編作品を取り上げようと思います。
空中喫茶」さんの『雷雨』です。



良かった点

・サウンドが恐い恐い恐い!息を潜める音とか、雨の中を走る音とか効果音がリアル。

・ホラー系にありがちなオーソドックスな怖がらせ方をしつつも、やっぱりびくっとなってしまう巧みな怖さの演出。

・画像も凝っていて、気味の悪さや恐怖感を上手に演出。



気になった点

・ラストまでプレイしても、なんだか良く分からないw



今日は、ちょっと変わり種の短編ホラーです。
どこが変わり種かと申しますと、どうやら作者さんはゲームや同人誌を作ったりするサークルの方ではなくて、音楽を作られている方らしいのです。
サイトの方も、自作の音楽を紹介する、というのが主題らしいです。が、一曲も公開されていないというw

私はホラー系のゲームが好きです。けれども、恐いのは苦手です。
昔「口裂け女」が流行った時期には、外に出る事が出来ずに半分引きこもりになったくらい、恐いのは苦手なのです。
と、いいつつ妖怪の本とかをせっせと購入したり、都市伝説の類を調べてみたり、或いは『山海経』を読んでみたりと、一見矛盾した行動をとってしまうという……。
恐いのが苦手、と恐いのが好きというのは実は表裏一体で、逆に言えば怖がる心がなければ、ホラーは楽しめないんですよね。

さて、本作は一応、サイコホラーとしましたが、作品自体がジャンル分けを否定するような、そうした作りになっています。
ちょっと泉鏡花の『草迷宮』に似てるかな?
ああいう、不思議で幻想的で、ホラー的要素が満載の作品です。

先ず、プレイして驚かされたのは、効果音です。
人間の息づかいだったり、包丁で野菜か何かを刻む音、床が軋む音。とにかくリアルで、恐怖感を盛り上げます。

ストーリーは、


一人で留守番をしているユウは、昨夜見た夢を手紙にして書いている。そこに、母親の姿をした(顔は近所のスーパーの紙袋を被っている)謎の人物が包丁を持って現れて……。


というもの。
しかし、単純にその謎の人物Xと丁々発止にやり合うとか、そいつから逃げるとか、そういうのがメインではありません。
寧ろ、その怪人Xが何喰わぬ顔をして佇む世界に、いつのまにか入り込んでしまった、そういう怖さを描く作品です(なのかな?)。

夢と現実の境界が曖昧になっていき、夢のような世界が「表」になってしまう怖さは、人間の特徴の一つである「夢を見る」というものに恐らく関係する、原初的な恐怖を煽るものです。

ちなみに脱線しますが、多くの人がそれぞれの「お得意の夢のパターン」みたいのを持ってるそうです。私の場合ですと、ここ半年くらいずっと「階段」が出てきます。
必ず、夢の中で私は階上か階下にいて、上、又は下に移動しなければいけないシチュエーションに置かれています。そこで「階段」を利用するわけですが、その上と下の境界である踊り場が、極端に狭くなっていたりして、移動が困難、もしくは不可能という状況に追い込まれるのがいつものパターン。

話を戻しましょう。
そんな夢的な世界で、ユウは怪人Xを刺し、何故か道ばたに現れたモンスター化したパンダと対峙し、人気の無い病院を彷徨います。
途中途中で、グロテスクなキャラが出てきてユウを導いたり、或いは襲いかかってきたりします。
こうした部分は、ホラー作品ではオーソドックスなものだと思いますが、あくまで「あっちの世界」が「表」になってしまっている、という舞台設定のせいで、妙に新鮮な怖さを感じます。

多くのホラー系の作品では、舞台はあくまで「こっちの世界」。その日常に「あっちの世界」からの住人が現れる事で恐怖を演出します。
本作では、「こっちの世界」がもう既に「あっちの世界」になってしまっているんですよね。分かりにくいですけれども。

もっと言えば、「あっち」と「こっち」の境界が非常に曖昧になっている。曖昧さそのものの世界。それが本作の舞台です。物語のラストで、その境界の不確かさみたいなものが示されていると思うのですが……。

境界といえば、ホラー系の王道でもあります。
そうですね、例えば、古くは『今昔物語』などにも見られるテーマです。
妖怪から逃げる為に「屋根裏」に隠れる、或いは「橋の下」に隠れる。これは、「上」でも「下」でもない一種の境界空間だそうで、だからこそ妖怪を避けることが出来るらしいのです。

その本当なら怪異を避ける事の出来る筈の境界空間そのものが、怪異に満ちている。そして「こっち」と「あっち」が曖昧で、どこにも怪異を避ける場所がないとしたら?

本作は、そんな「こっち」と「あっち」の曖昧さの恐怖そのものを描いている印象でした。
んー、なんか捉えづらい作品なので、脱線しまくりで、こんな解説しか出来ませんが、ちょっとでも興味を覚えた方は、是非プレイしてみて下さい。

作者さんが、フリーの効果音・サウンドなどを公開してくれるとちょっと嬉しいですね。
恐怖系のノベルゲームのサウンドの質を変えてしまうような、そんな素晴らしいサウンドでした。

by s-kuzumi | 2007-08-20 00:45 | サウンドノベル