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2008年 03月 15日 ( 1 )


2008年 03月 15日

一般図書:『我身にたどる姫君』 フォロー記事

道玄斎です、こんばんは。
今日も今日とてあれこれ作業に追われていました。
けれども、大体のたたき台は出来たって感じですかね。実はここからが勝負で如何に「テク」で魅せるかって事なんですけれども、週末までにベータ版を作っちゃいたい所です。
あっ、ちなみにゲーム制作じゃないよ。ふつーの面白みもない普段の雑務です。


さてさて、実はこのブログに結構な人が「我身にたどる姫君」で検索されて来ているという事実があります。何ヶ月か前に読書記録として付けた記事を参照して下さっている方が多いんですね。
「日本初の百合小説」なんてあだ名がついているから、需要が高いのでしょう。

でも、思ったようなデータがない、という方もいらっしゃったようで、そうした方達の為にフォローの記事を書いてみようかな?っと。折角来てくれたんだもんね。そのくらいのサービスはしても罰は当たらない。 最後に参考書とかを挙げるつもりですので、お付き合い下さいね。

やっぱり、皆さんの関心は「百合」の部分です。
ここでは、『我身にたどる姫君』という古典作品に出てくる「前斎宮」とその身の回りの女房達(女性の付き人みたいな感じですね)の関係を「百合」と定義しておきます。

で、『我身~』は全八巻というかなりのボリュームを持った作品ですので、「読み切れねぇよ」なんて声が聞こえてきそうですが、実は「前斎宮」が出てくるのは六巻目からです。
極論してしまえば「六巻目から読めば良い」という事になります。
「百合だけ追っていきたい」という人は、六巻目から読んでみればいいんじゃないかしら?実はストーリーみたいなものは、五巻末でストップしていて、ちょっと別の時間軸で六巻は展開されていきます(だったよね?)。

ですので、六巻目からでもちゃんと読めるハズ。
六巻はまるまるこの「前斎宮」と周辺の人物のお話が展開される巻です。
んで、七巻を挟んで、八巻目後半に、再び「前斎宮」とその周辺が語られ、「前斎宮」の元に事えていた女房のその後を描き、物語は幕を下ろします。

全八巻のラストがこの「前斎宮」絡みの記事で終わる、というのは大変意味深です。
どう見てもこの「前斎宮」なるキャラが「一発キャラ」的なものではなくて、もっと物語の中に深く関わってきそうな、そんな感触があるのです。
そもそも、この物語の特徴の一つとも言える「女帝」との対比がこれでもかと繰り返されるあたり、興味深いですね。「女帝VS前斎宮」、「女帝に事える女房・女官VS前斎宮に事える女房」というような、対比構造が見て取れます。
あー、ちなみに専門の論文とか一切見てないから、この記事は半分は私の戯れ言ですよ?

ノベルゲーム/サウンドノベルという形ではあるものの、「物語」に関わるものとして、私は『我身~』を強く推したい!

大体、文学史のセオリー通りに行くと、物語作品って『竹取物語』から始まって、『源氏物語』で頂点を極めて、『狭衣物語』とか『夜の寝覚』『浜松中納言物語』『松浦宮物語』なんて「後期」の名作が誕生して、有象無象の同人誌的な「鎌倉時代物語」(中世王朝物語とも)が出てくるわけです。
うんと駆け足ではしょりまくってますが、大体こんな所でしょう。

で、『我身~』は一応、鎌倉時代物語というグループの中に属しています。
この期の物語は、『源氏物語』或いは『狭衣物語』という二大古典の「同人誌」的な性格が非常に強いわけですが、その中でも異彩を放っています。
自分自身、サウンドノベルをプレイする時に良く「ぼたんゆきタイプ」という言葉を連発しているわけですが、どうにも、こういう風に「ゲーム史」というか系統樹というか、そういう風に捉えてしまうのでした。あんまり褒められたもんじゃないんだけどもね。
そういう意味で、系統樹の末端に位置するような『我身~』は、凄く興味がある作品なのです。


で、あんまり気軽に(そして手軽に)購入出来るような参考書はないのですが、色々紹介してみます。何はともあれ、「物語」ですから、実際に読んでみるのが一番です。たとえそれが六巻目からでも、ね。



□手軽に百合シーンだけ見たい人向け参考図書

・『色好みの構造 ―王朝文化の深層―』 中村真一郎 岩波新書 1985

この本の第八章目に『我身~』の百合シーンが抜粋されて解説が加えられています。これを読めば取り敢えず『我身~』の百合シーンは分かるハズ。
今、アマゾンで「色好みの構造」と調べたら、すぐに見つかりました。在庫もあるみたいなので、先ずはこれを読んでみたらどうでしょうか?


□作品の概略などちょっと突っ込んだ情報が欲しい人向け参考図書

・『中世王朝物語・御伽草子事典』 神田龍身、西沢正史編 勉誠出版 2002

※分厚い事典です。
485ページから『我身~』の項目があり、成立や概要、作中人物の系図や研究史なんかが纏められています。私は持っているのですが、定価が何しろ26000円くらいするので、気軽に購入出来ないという。
大学図書館や、近所の図書館で見て、必要箇所をコピーとかすればいいんじゃないかな?


□兎に角物語を実際に読みたい人向け参考図書

・『我身にたどる姫君』 今井源衛・春秋会 桜風社 1983

※全七巻。意外と入手困難かも。ただ、楽天ブックスで購入出来るハズ。
この本は、本文と現代語訳が交互に表示されるタイプの本、その気になれば現代語訳だけを読んでいくことも出来ます。系図や簡単な資料もついていて、読みやすいんじゃないかな。ちなみに私もこれで読みました。
お値段も一冊1000円そこそこなので、全巻揃えても10000円でおつりが来ます。


・『我身にたどる姫君物語全註解』 徳満 澄雄 有精堂出版 1980

※これは全一冊。私は持っていないので詳しい事は分かりませんが、恐らく現代語訳もついていると思います。一冊で完結しているのが魅力ですね。アマゾンで古本として出ていました。そういえば、有精堂って潰れたんじゃなかったっけ……。とすると新刊は入手出来ません。古本を探しましょう。「日本の古本屋」というサイトで探したりすれば、いいんじゃないかな。
出版社が潰れちゃっているので、お値段は少し高めかも。



大体、上の二冊が、「実際に読む」為の本ですかね。何しろ「超マイナー」作品ですから、このくらいしかまともな注釈書がないという……。



□その他の参考図書

・『我身にたどる姫君(全)』 平林文雄編著 笠間書院 1984

※所謂「翻刻」本。
一冊で完結しているのはいいけれども、本文校訂が付いた翻刻が載っているので、あまり「読む」のには向きません。翻刻とは乃ち、昔の人が書いたミミズがのたうち回ったような字を現代の字に直すという事です。
ただ、最初に解説や、参考文献が載っていたりするので、補助的に見てみると良いかもしれませんね。或いは図書館なんかで探して必要箇所をコピーするとか。
ちなみに、後書きは途中でページが切れてしまっていますw 出版社に問い合わせた所、全部そうなっているらしい。私はFAXで、切れてしまった部分の続きを送ってもらいました。
どーでもいーけど、この本の表紙は変体仮名(ミミズの字です)があしらわれたデザインなので、今見てみたら、

「むかしをとこうゐかうふりして」

とか書いてあります。って『伊勢物語』じゃねぇかよ!w


・『鎌倉時代物語集成 第七巻』 市古貞次、三角洋一編 笠間書院 1994

※これも翻刻本。
『我身~』も収録されていますし、他にも複数の物語の翻刻が収められています。あんまり読む為には使えませんな。本格的にお勉強する人向けかしらね。



大体こんな所かな?
専門的な本とかを探せば、まだちょこちょこと記事が載っていそうですけれども、纏まっているものは大体これくらい。
そうそう、忘れる所だった。笠間書院から『中世王朝物語全集』というシリーズが刊行されていて(刊行中です)、『我身~』も出る予定になっています。
このシリーズはページの上部に注釈が、中部に本文が、下部に現代語訳が付いているという親切設計。私も新刊が出る度に購入しています。


私自身、無学の徒でありますが「鎌倉時代物語」ってのは、要するに「同人誌」だと個人的には思っています。
現代のコミック・アニメの同人誌の発生や場の広がりみたいなものに、凄く似ているように思えるんですよね。ビッグネームの作品が出てくると、その「オイシイ」場面を抜き出して「二次創作」を行うみたいな、そういう所が凄く似てる。今度はその二次創作を更に二次創作していくようなものが出てきたりと、やってる事は1000年前と現代もそんなに変わらない。
寧ろ、ヲタクだコミケだアニメだなんだってのは、物凄く古典的な活動に思えるのです。

まぁ、私のそんな戯れ言は兎も角として、大体、挙げた参考書を読めば『我身~』が分かるのではないかと思います。
『我身~』で記事を書いちゃった手前、こういうフォローも必要だと思い、こうして新たに記事を書かせて頂きました。何かお役に立てたなら存外の喜びです。


道玄斎

by s-kuzumi | 2008-03-15 03:50 | 読書 一般図書