2017年 09月 18日
![]() ※大吟醸 ジャンル:ひと夏の思い出と「今」を描く感動ノベル プレイ時間:~3時間ほど その他:選択肢アリ。メインストーリー1本、サイドストーリー1本に分岐 システム:吉里吉里/KAG 制作年:2017/9/7 容量(圧縮時):293MB 道玄斎です、こんにちは。 今日は前回に引き続き、大吟醸作品のご紹介。 今プレイすると季節感もばっちりだと思いますよ。というわけで、「ペットボトルココア」さんの『夏ゆめ彼方』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。 良かった点前回に引き続き、連続での大吟醸です。 気になった点は、「一応書きました」というようなもので、本当によい作品だったと思います。 ストーリーは、ふりーむのほうから引用しておきましょう。 父親との死別で塞ぎ込んでいた『天才小学生』朝川桂一は、ある日『神様』を自称する巫女服姿の少女と出会う。こんな感じ。 紹介文では端的に、「夏」「伝奇」「将棋」が作品の骨であること示されています。 「夏」の神社で、神様を自称する少女(幼女?)と出会って、「将棋」という一度捨てかけた自分の夢を追いかけることが出来るようになる……みたいなストーリーではあるんですが、このストーリーの流れだけみて「またこのタイプかよ?」と決めつけてしまうのはもったいない! 本作の本当に美味しいところは、やはり紹介文で示されている通り「夢」だからです。 夏、伝奇、将棋のようなものは、云わばフレーバーのようなもので、本作を素晴らしいものにしているのは、その「夢」の要素です。 誤解を恐れず云ってしまえば、「幼いころからの夢が叶う」なんて人は、ほとんどいないんですよね。 みんな大なり小なり挫折を繰り返し、その中で妥協しながら今を生きることになります。 だからこそ、それがノベルゲームの中であったとしても、夢はまぶしく見えますし、主人公に自らを仮託してついつい応援したくなるわけです。 本作で何より優れていたのは、その「夢」の行方を丁寧に追っていくところでした。 神様である少女――杏(あんず)――との出会いで、また自らの夢を恢復させ、夢に向かって踏み出していく。 ここで物語を終えることも十分可能だったはずです。 しかし、本作はもっともっと「夢」に踏み込んでいきます。 詳しくは是非プレイして確かめて頂きたいのですが、夢っていい事ばかりじゃありません。 先ほど書いたように、挫折はつきものです。むしろ挫折していく人のほうが多いくらい。しかも、それにすべてをかけていればいるほど、実生活での「潰し」が効かなくなってきます。 そういう部分での、主人公圭一の葛藤は、本当にリアリティがあります。 何かに一生懸命取り組む。しかしその努力がそのままリターンされてくるわけではない。大人はみんなそれを知っていますが、いざ自分がその立場になってみると、みっともなく暴れたり、ふさぎ込んだりしてしまうのも、また人間です。私自身、読んでいて身に覚えがありすぎて、かなりドキドキしてしまいました。 夢は破れはしたけれど、その中で小さな幸せを見つけていく……というのも一つの生き方です。 本作のサブルートでは、そういう「all or nothing」的な夢の在り方だけでなく、もっと実際的というか、現実的な夢の果て、のようなものも描かれています。 サブルートそのものは、メインのルートに比べるとボリュームや内容的な部分で、物足りなさは感じますが、「夢」のもう一個の可能性を見せてくれたところに、良さがありますよね。 さて、先ほどは大ナタを振るって「フレーバー」といってしまった、神様との交流も実は無視できないものです。 こういう作品に出てくる神様って、みんな女の子ですよね? 間違っても、マッチョなアニキが神様をやってるなんてことはない。 しかも、見た目こそ幼女でありながら、その中身には酸いも甘いもかみ分けた……明も暗も見て来た老成した部分があるというのも定番です。 これは……やはり男性の願望の1つの形なんでしょうね……。 見た目こそ優しくありながら、悲しみすらその奥に秘めている深い海のような愛情を持った存在に、思い切り甘え切ってみたい。そういうのって案外多くの人が持っている願望な気がしますよ。 本作も……やはり後半で、圭一が杏の胸の中で号泣するシーンが出てきますが、前回のレビューでもお話しした通り、名シーンになっています。 圭一の「夢」は最後どうなるか、是非ご自身で確かめてみてください。 そうそう、本作は「将棋」が出てきますが、ルールが分からなくても読むのに支障はありません。もちろん分かる人にはまた別の愉しみが出てくるとは思います(私は駒の動かし方を知ってるくらいだ)。 さて、ここからは蛇足。 久々に「これは」と思えるノベルゲームを2本プレイしてみたわけですが、2本ともとてもいい作品でした。 舞台や設定のようなものは、オーソドックスではありますが、どちらもストーリーの芯が骨太で、人間の悩みや葛藤といった、「物語」が扱うにふさわしいテーマになっていました。 少しノベルゲームから離れている間に、こういう手ごたえを感じる作品が増えてきて、「またノベルゲームも盛り上がる兆しがあるのかな?」なんて思っていたり。 ゲームだけに限りませんが、大体、すっごい流行る良い作品があって、その後、その後追いのような作品がガンガン出てくる。一方で、その反発として目先を変えた作品が出てきて……と、ブームが形成されていきます。 しかし、作品数が増えていくとある種の飽和が生じたりして、ジャンルが衰退に向かっていったりするんですよね。その中で、オーソドックスな良さというのは、重要視されなくなり、刺激的なものがもてはやされる中で、ブームは爛熟期を迎え、徐々に作品数が減って……。 で、「〇〇は終わったぜ」と悲観的なことが言われたりするんですが、またオーソドックスながらも力のある作品が出てきて、ジャンルが再び盛り上がってくる……なんてことがあります。文学の歴史とかって割とそういうとこありません? ですので私は、今回2作品プレイしたのですが、ちょっと、またノベルゲームのオイシイ季節がやってきたんじゃないかな? なんて思っているんですよ。 もしかしたら、そういう時期は来ないかもしれないし、来たとしても一瞬で終わってしまうかもしれない。 けれども、こんなに丁寧に、物語が扱うべき(って言っちゃってもいいかな?)テーマに取り組んでいる作品が少しづつ増えてきている、という現状、とっても嬉しいですねぇ……。 また、私もマイペースではあるんでしょうけれども、これは、と思う作品紹介していけたらと思っています。 それでは、また。 ■
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by s-kuzumi
| 2017-09-18 16:05
| サウンドノベル
2017年 09月 10日
![]() ※大吟醸 ジャンル:自殺がフィーチャーされる雰囲気もの(?)のノベルゲーム プレイ時間:1時間と少し その他:選択肢なし、一本道 システム:Nscripter 制作年:2017/8/14(?) 容量(圧縮時):44.2MB 道玄斎です、こんばんは。 ずいぶん……そう年単位で更新が滞っていました。 皆様はいかがお過ごしでしたでしょうか? 私は何とか生きています。 そうそう、このブログを始めたのが2007年だったと記憶していますから、本年2017年は丁度10年目に当たります。つまり、私もこのブログを書き始めたころから10歳年をとってしまった、というわけです。 私自身……白髪が出てきた! とかいろんなことがありますが、まぁ、ぼちぼち成長して……いるといいなぁ、なんて思ってますねぇ。 さて、今日は本当に久々のノベルゲームレビュー。 「mint wings」さんの『私は今日ここで死にます。』です。 こんなところでしょうか。 ストーリーですが、作者さんのサイトから引用させて頂きましょう。 人が自殺しようとしているのを目撃した場合、どうするか。
いやぁ、いい作品でした。 引き締まった尺(ただし若干駆け足気味のところはあるかも)、骨太のテーマ、本来の意味での「雰囲気」を活かした作品で、これはお勧め出来る作品です。 テーマは若干重めで、「自死」「自殺」です。 何度も書いている気がしますが、この手の「自殺」をテーマにした作品って、かなり増えたんですよね。本作もちょっと「ドキッ」とするタイトルですよね。 そうした作品を私も何度も取り上げてきましたし、取り上げていないものも含めればかなりの数を読んできました。 また、本作の作者さんも、同様のテーマを作品の中で積み重ねてきているわけですが、行きつくところまで来てしまったな、という感じ。ええ、もちろんいい意味で、です。 本当に自殺を描いた作品には、「なんとなく死んでしまう」、「自死が理想的で、また美しく描かれる」なんてものもあったりして、それはそれで面白いものもあるんですが、「死」あるいはその裏返しの「生」というテーマにそれが真向かいしているのか? と問われれば、また答えにくいものがあるはず。 一方、本作は「雰囲気ゲー」と作者さんご自身がおっしゃってますが、全然そんなことはありません。 いや、正統な「雰囲気ゲー」だと言えると思うのです。 というのも、雰囲気というのは相当描くのは難しいんです。 なんとなくうすぼんやりとした理由で誰かが死んで、音楽もそれっぽい感じにしても、それはどこかうわっ滑りなものになってしまうわけです。 本当の意味で「雰囲気」を出して、それを作品に活かすためには、シッカリとした設定や描写が絶対に必要になってきます。 丁寧でしっかりとした物語があって、はじめて「雰囲気」が出てくる、と私は思っています。 その意味で、本作は比較的オーソドックスな設定(自殺を使用としていた女の子を、どこか無気力な青年が助けて~)を持ってはいますが、丁寧なキャラクター描写、舞台やエピソードの積み上げによって、結果暖かく、優しい雰囲気が十分に出ていました。 個人的にとっても惹かれたのが、主人公京介のモノローグやそれと同化する形での地の文。 いわゆる「少し冷めた感じの青年」ではあるんですが、そのモノローグ(何か大事なことを言いかけるような、そういうモノローグ)によって、彼の心にも何かわだかまりや、葛藤があること、上手に表現されていました。 物語前半部分では、「死」にある種のあこがれを持つヒロイン由香が描かれるのですが、そのリアリティを垣間見て、彼女の想いもまた変わります。 「死を単純に美化」するのではなく、深く死を見つめていった時に感じる怖さ、その怖さによって逆に触発される「生」への想い。この辺りの描写は物凄くよかったです。 また、本作屈指の名シーンは、今挙げたシーンもそうなんですが、年上であるはずの京介が年下のヒロイン由香に泣きつく……っていうと語弊があるか……。つまり、誰にも言えずに抱え込んでいた想いを吐露していくシーン。 これはもう、本当にいいシーンなんですよ。 そういえば、本作はサンドウィッチ的な構造もとっています。 エピローグで分かるんですが、こういうサンドウィッチ構造って私好きなんですよね。物語に厚みが出ますからね。 手前みそで恐縮なんですが、私もちょいと関わった『Ghost Write』という作品にも、年下の女の子の胸で泣いたり、実はサンドウィッチ構造だった、なんて仕掛けも出てきます(ただし、クオリティは本作のほうが全然上だわ……)。 閑話休題。 死をただただ美化するのではなく、それをしっかりと見つめること。そして生へ転換していくこと。 それが無理なく、無駄なく描かれていたというのが本作の最大のグッドポイントでしょうね。ね? 私も10年経って、ちょっと成長したでしょう? 尺はおおよそ1時間くらい。 スッキリと読めるのに、深みがある。とっても素晴らしい作品です。ぜひぜひ、このページをさっさと閉じて作品をDLしてプレイすることをお勧めします! それでは、また。 ■
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by s-kuzumi
| 2017-09-10 20:42
| サウンドノベル
2016年 12月 27日
![]() 今日の副題 「ノベルゲームの原点回帰」 ※吟醸 ジャンル: プレイ時間:1時間~1時間半程度 その他:選択肢なし、一本道。 システム:Nscripter 制作年:2016/12/24 容量(圧縮時):71.7MB 道玄斎です、こんばんは。 ずぅーっと更新していませんでしたが、今日は久々にノベルゲームのレビューの更新です。 なかなか今年は忙しかったりして、全然ゲームをプレイしていなかったのですが(特に「読む」ことにウェイトがあるノベルゲームってプレイに時間的・精神的な余裕が必要でしょう?)、今年も終わりになって、とても良い作品と出会えました。 というわけで、今回は九州壇氏さんの『眠れない夜に』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。 良かった点 ストーリーはふりーむの方から引用しておきましょう。 舞台は、秋の福岡。 さて、九州壇氏さんの7作目の作品です。 早いもので、前作からもう5年経っているわけで、私もびっくりです。 私がこのブログを始めたのが2007年だった気がしますから、もうノベルゲームの世界に耽溺すること10年になるわけで、いやはや、月日が経つのは本当に早いなぁ、と。 本作はタイトルが『眠れない夜に』ということですが、タイトル、あるいは先ほど引用した紹介文を読んで、皆さまはどんなイメージを作品に持たれますでしょうか? 私は……「ストーリー的にあまり起伏はなく、まったりとした温かみのあるちょっと大人な物語」だとずっと思っていました。 結果、予想は見事に裏切られることになるわけですw 先程、私がこのブログを始めて10年近くになる、という話を書きましたが、まさに10年くらい前によく見られたような、そういうクラシカルな手触りを持った作品で、とても嬉しくなりました。 何がクラシカルなのか? というと、「あっ、このパターンはもしや……?」と、一世を風靡した作品とつながる物語の展開が「読めて」しまうんです。 これだけ聞くと、「よくあるパターンなのか」と短所に思えてしまうのですが、さにあらず。 「あー……これか……」と思って読み進めていくと、実はそのパターンは最初に頭に描いたパターンではなく、別の一世を風靡した作品のパターンだと分かっていったりするんです。 分かりやすくいえば、クラシカルな物語の仕掛けをつかったミスリードの方法が優れているのです。 「こっちじゃなくて、あっちのパターンだったか!」とニヤリと出来ますし、どちらのパターンも、(特にフリーの)ノベルゲームではクラシックともいえるパターンですから、私のようなオールドファンはなんだかんだで楽しめちゃいますし、そこでもニヤリと出来る。 まさか、2016年も終わりになって「あのパターン」にお目にかかるとは思いませんでした。 2004~2007年くらいの時期にちょくちょく目にしたパターンで、私も勝手に名前を付けて呼んでいた、「あのパターン」です。 今日は少しネタバレを押さえて書きますが、ラストもとっても良かったんですよねぇ。 作品そのものに「選択肢」はないんですが、物語内で「最終的にどうなるか?」という選択肢ともいうべき未来が提示されている気がします。 そこには、クラシカルな作品に屡々見られたようなハッピーエンドでなく、寧ろ、どちらの未来への可能性も残しつつ終わるという、人間や人生の複雑さ、あるいはほろ苦さのような味わいがあります。 しかも、それを柔らかく、暖かく見守るような文章となっていて、そこは作者の九州壇氏さんの作品の大きな魅力でもあります。 一方気になった点ですが、一個目はちょっと言いがかりに近いものです。 本当に久しぶりにノベルゲームをプレイしてみて(しかもマシンも変わってる)、Nscripterデフォルト感溢れるインターフェイスに、「え? こんなだっけ?」と思ってしまったのですw ただ、一点言わせていただくとすれば、こういうしっとりとした物語ですから、フォントなどの「物語の埒外にあるもの」に少しこだわってみて、雰囲気を後押ししてもよかったのかな? という気はします。 二点目の気になった点とも、これは関わってくる問題かもしれません。 本作は、立ち絵も表示されますし、画面の上側に背景・立ち絵が表示され、メッセージウインドウに「文章」が表示される形式を採っています。 一方で、物語そのものは、テンポのよい軽快なやり取りを読ませていくというよりは、小説に近い「味わって読んでいく」タイプ。 すると、たとえば、 私 みたいな、「発話者」が明示されちゃうと、ちょっと雰囲気を損ねるような気もするんですよね。 もちろん、あった方が分かりやすい。けれども、ビジュアルノベルのような全画面方式や、あるいは発話者を明示しない形での会話文のほうが合っていたように思えるのです。 この辺りも好みの問題かもしれませんが、一応ということで。 決して派手さや人目を惹く演出などはありませんが、じんわりとしみ込んでくるような物語は、むしろ今だからこそ、とても価値のあるものに思えます。 物語や、その内容、雰囲気で勝負する、という本来的なノベルゲームの良さがギュッと詰まった作品です。ぜひ、プレイしてみてくださいね。 ■
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by s-kuzumi
| 2016-12-27 19:08
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2016年 04月 29日
![]() 道玄斎です、こんにちは。 ゴールデンウィークですから、ちょっと何かプレイしようかな? と思っていたところ、興味惹かれる短編作品を発見しました。 というわけで、今回は「aiGame」さんの『山中の宿』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。 私は、怖い話が結構好きです。 いや、ウソです。とっても好きです。 怖い話といっても、色々なジャンルがありまして、代表的なものとしては厳密には分けがたいものの、「都市伝説」のようなタイプ、「お化けや幽霊」の話、「妖怪などにまつわる話」、そして「実話の猟奇的な話」といったものがあります。 こうした怖い話のジャンルのなかで、ここ数年で一気に台頭してきたのが「意味が分かると怖い話」です。 一見すると、何の変哲もないような話。特にオチもなかったりする。けれども、ちょっと頭をひねったり、その話の中に出てくる特定のキーワードに着目することで、「もう一つの意味」が浮かび上がってきて……というタイプの作品です。 この手の「意味が分かると怖い話」には、一つ短所があって、それは「意味が分からないと全く面白くない」というもの。 そういうわけですから、このタイプの怪談では、ちょっとした工夫が必要となります。 たとえば、よく目にするのが「そもそもの文章がなんだか意味深」。 これは、「意味を分かってもらうため」に読者に考えることを促している、と考えられます。 また、「真相につながる特定のキーワードや、事象をしつこくない程度に強調しておく」なんてのもありますよね。これも意図は同じです。 第三の工夫は、ちょっと力技なのですが、「解説」を付けちゃうというもの。 これは、スマートフィンのアプリタイプの「怖い話」にはよくあります。お話を読んだあと「解説」をタップすると、すっきりと裏に隠れた意味が分かるというわけです(ネット上で見ることが出来るそれは、読者が考察した「解説」が付いていることも多いです)。 長々と前置きを書いてしまいましたが、本作『山中の宿』は、こうした「意味が分かると怖い話」を5編集めた、短編集というかショートショート集というか、そういう趣。 そして、それぞれの話のあとに「解説」が入り、「この話、意味わかんねーな?」という事態を防いでいます。 本作の特徴は、ただ単に「意味が分かると怖い話が5本あるから読んでね」ではなく、ちゃんと物語としてのガワがあって、いわば「物語内物語」として怪談が提示されている、というところでしょう。 タイトルに如実なように、主人公は道に迷い、山中にある洋館形式の宿に泊まることになります。 その客室に置いてあった本の内容、それが本作で提示される怪談、というわけです。 そうした「設定」の部分はゆかしいものがあったのですが、怪談そのものはそこまで怖くなかったかな? という気がしますね。 一つは、「文章そのものが理解しにくい」というところにあります。 意味深長な部分を作ろうとするあまりに(?)、その怪談の「表の意味」そのものが分かりにくくなっている印象がありました。 なので、もうちょい読みやすい文章であると、裏の意味の怖さもクッキリとしてくるんじゃないかな、なんて思いました。 あとは、魅力的な「ガワの設定」があるので、そこを活かす方向も考えられます。 たとえばの話ですけど、一話怪談を読むと、「洋館チャプター」が出てきて洋館のメイドさん(?)とのやり取りがちょこっと挟まったりして、最後の「オチ」にさらにインパクトを与える、みたいなね。 色々書いてしまいましたが、スッキリ10分未満で読了出来る尺は魅力。 また、「意味が分かると怖い話」をノベルゲームで表現しているという部分も楽しいですよね。今後も、こういうホラー作品、どんどん出てきて欲しいなぁ。 どうやら、かなり多産な作者さんのようですので、また面白そうな作品プレイしてみようと思います。 それでは、また。 ■
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by s-kuzumi
| 2016-04-29 14:16
| サウンドノベル
2016年 02月 29日
![]() 今日の副題 「不思議ですごい物語世界」 ジャンル:ボーイミーツガール(らしい) プレイ時間:二時間未満(私がプレイして1時間40分) その他:選択肢なし、一本道 システム:YU-RIS 制作年:2016/2/23 容量(圧縮時):216MB 道玄斎です、こんばんは。 今日は、ちょっと不思議な感触の作品をプレイいたしましたので、ご紹介。 「電脳詐欺」さんの『路地裏の不思議な少女』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。 良かった点 ストーリーはふりーむの方から引用しておきましょう。 走るのは少年。 こんな感じ。 こうしたストーリーの発端部分を読むと、「あっ、行き倒れ少女を拾って同居するタイプだ!」と思ってしまうのですが、実はあまり目にすることのないタイプの作品だったのです。 確かに、「謎の少女を拾う→同居する」という流れ自体はあるのですが、主人公は「一人暮らし」ではありません。 シェアハウスの管理人をしているただの高校生なのです。 そして、シェアハウスの住人は主人公以外は女性ばかり。 この段階から既に、「ちょと違う」のが分かるのですが、さらにその「シェアハウス自体」が「能力者」たちの一つの拠点になっていることも判明します。 そう、本作は異能力ものの趣があり、秘密の組織や秘密の都市といったキーワードも登場するのです。 その意味ではどこかSF的な世界であり、また独特の水彩風のイラストによって、現代日本が舞台であるにも関わらず、ファンタジーの雰囲気すら漂っています。 プレイしていると、それが「現代日本」であることをどこか忘れてしまうような、何とも言えない不思議な作品世界。そしてそれはシェアハウス内部の背景イラストや、タイトルにもある「路地裏」の背景イラストでも確認できます。 普通の家の構造……とはちょっと違っていて、また路地裏も、それが道であることはわかるのですが、どこか現実感に乏しいような、一見すると奇妙な感じ。 それはもちろん、本作に於いて「マイナスポイント」というのではなく、「こういうのって今までなかったよね」と感じさせてくれるような、表現だったのではないかと思います。 一応ふりーむの作品一行説明を見てみると「とある夏のボーイ・ミーツ・ガール」」と書かれているのですが、ちょっとそれは単純すぎるかもしれません。しっくりくるジャンルがなかなか見つかりませんし、こういう作品の場合「ジャンル」を無理に当てはめないほうが自然ですよね。 さて、内容に関しては、登場人物がそれなりに多いのですが、どのキャラクターにもしっかりとした存在感があってよかったな、と思いました。 割と登場人物が多いノベルゲーム/サウンドノベルでは、一部のキャラクターにのみ「存在感」というか「存在理由」が偏ってしまい、その他のキャラはただの「にぎやかし要員」になったりもするのですが、本作の場合、そうしたこともなく、しっかりとどのキャラも個性が立っていて、そこはすごくいいポイントだと思います。 個人的には、ちょっとクセはありますが、個人的には「まゆ」、そして「佐藤」が好きかな。 さて、気になった点ですが、ちょっと誤字が多めかも。 たとえば、「夜中」に主人公ハジメが外出しているシーンから、物語は始まりますが、その際、「午後一時」なんて書かれてるんですよね。 これは夜中ですから、「午前一時」の誤りでしょう。あっ、これは誤字ではなく誤謬か。 ともあれ、ちらほらと、誤字が出てきていて、あれ? というようなことがありました。 もう一点は、私はあえて気になった点に挙げてしまったのですが、「割とあっさり目のストーリー進行」だということです。 作品後半で大事件が起こり、グググッとお話しが盛り上がって、ラストに向けて収束していく。 というよりは、もう少し淡々とした感じ。 もちろん、ちゃんと物語には起承転結とでもいうべき、きっかけや事件は起きるんです。 そして、それらが絶妙に配置されていることによって、プレイしていてダレない、というのも事実です。 秘密の組織が明らかになって以降、話は急速に面白くなっていきますし、比較的最初のほうで張られた伏線が、最後にちゃんと回収されるなど、丁寧な作りでもあって、本当に面白いんです。 しかし、なんかそうした事件は比較的あっさりと描かれ(バトルシーンもあるのですが、そこにはすごい力が入っていたように思います!)、なんとなくの感触ですが「淡々」という印象があるんですよね。 でも……。 気になった点に挙げておいてなんですけど、本作の雰囲気そのものが「ファンタジックで、SF的な要素もあって、ちょっと不思議」なものですから、むしろこの「淡々」さはそこにマッチしている、と考える人もきっといるはずです。 実際私も、そういう風に思えなくもないのです。 ですので、意外と「気になった点」を挙げるのって難しいんですよね……。 おおよそ、こんなところでしょうか? 物語の最初の流れだけ取り出してみると、「お決まり」のパターンではあるものの、ふたをあけると、今までみたことのないような、なんとも不思議で魅力ある世界が広がっている。そんな作品でした。 これはちょっとプレイしてみる価値がありますよ! というわけで、今日はこのへんで。 それでは、また。 ■
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by s-kuzumi
| 2016-02-29 21:46
| サウンドノベル
2016年 02月 23日
![]() 道玄斎です、こんばんは。 今日は、尺がだいたい30分くらい……なので、通常レビューにしようか番外編にしようか迷ったのですが、番外編ということで。短いながらも、色々と心を揺さぶってくれるとてもよい作品だったと思います。 というわけで、今回は「おざしきわらし製作所」さんの『森の奥に住む座敷童子は報われない』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。 短いながらも、重量感のある物語でした。 本作の面白いポイントはいくつかあるのですが、タイトルと関わるところでは「座敷童という存在が、人間社会で認知されている」という点、そして「幸運ではなく不幸をもたらしてしまう座敷童がいる」という点でしょう。 当然、タイトルが予感させる通り、「不幸をもたらす座敷童」たちは森の奥でひっそりと暮らしています。 さらによかったのは、なんといっても、単調さがなかったという点です。 特に30分程度の短編ですと、後半の盛り上がりに「事件」を持ってきて、それまでは状況説明や、日常生活の延長のような形になることが多いのですが、本作の場合、エピソード(なかには結構重いものもあるし、伏線になっているのもある)がうるさくない程度に挟み込まれていて、興味が持続するというか。 プレイしていて、「え? こうなるの?」とか、「そうだったのか」とか、プレイヤーの気持ちを揺さぶってくれる、そんなストーリーメイキングが、本作に重量感を感じた理由です。 そうした意味で、本作は一時間、あるいは一時間半くらいの尺としてボリュームのある作品に仕立て直すことも十分可能でしょう。 ストーリーの流れこそシンプルに見えますが、そこには色々な要素があり、また単調にならずに最後まで読める、というわけですね。 気になった点としては、やはり「少年」との「密会」にもう少し密度があったらなぁ、とは思いました。 けど、どうやら、本作には18禁版もあるようで、「少年」との交流はそちらで上手く表現されているんじゃないかな、とも思います。 あとはシステム面でバックログなんかはあってもよかったかな、と。 30分という尺で、さらにシンプルな作りですが、重みがあり、また切ないラストが魅力の作品でした。 ぜひぜひ、プレイしてみてください。 ■
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by s-kuzumi
| 2016-02-23 21:37
| サウンドノベル
2016年 02月 18日
![]() 今日の副題 「クラシカルだけど重層的な優しい物語」 ジャンル:売れない劇作家と機械人形の物語 プレイ時間:約1時間ほど その他:選択肢なし、一本道 システム:LiveMaker 制作年:2015/11/28 容量(圧縮時):41.1 MB 道玄斎です、こんばんは。 今日は1時間くらいの比較的小粒な作品ですが、重層的で満足感のある物語をプレイしたのでご紹介。 というわけで、今日は「Lapree」さんの『象牙の乙女』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。 良かった点 ストーリーは、私が簡単にまとめておきましょう。 フレッドは売れない劇作家。 こんな感じでしょうか? 昨日に引き続いて、今日もある意味で「少女との同居型」の作品ですね。 さて、その少女ことガラティアが、機械人形だということで、本作の一つの特徴となっていました。 うんと粗雑に云ってしまえば、『鉄腕アトム』以来の「機械に心はあるのか?」というような問題にも踏み込んでいる部分もあり、その意味では割とクラシカルなテーマ設定だと云えるかもしれません。 機械(ロボット)と心、というテーマは、結構色々なところでおなじみですよね。 やはりクラシックになりますが、『われはロボット』という超有名SFでも、そうしたテーマが見られました。近年(でもない?)では『ちょびっツ』というCLAMPのマンガもありましたよね。 こうした問題設定の魅力は、「人間によって人間を語る」のではなく、「ロボットによって逆に人間が見えてくる」ようなところにあるんじゃないかと思います。 人間同士では気づかない、分からない「人間らしさ」とでも言うべきものが、ロボット相手だと逆に浮き彫りになって見えてきたりする。 そして、ロボットと人間との境界はますます不確かなものになっていく……。 こういう問題設定は、クラシカルでこそありますが非常に興味深いものです。 問題設定そのものはともかく、作者の力量次第で色々な物語の広がりを見せてくれるテーマでもあります。 実は本作は入れ子構造になっておりまして、ゲームを起動すると、主人公フレッドが「過去を回想し」、物語の本編を語る、という体裁を採っています。 これだけならば、比較的よくみられる手法なのですが(個人的には結構好き)、本作の場合、フレッドの職業と関わる「演劇」が作中で重要な役割を果たしています。 つまり、物語それ自体がすでに入れ子構造でありながら、その本編内部においても、「舞台の上」と「舞台の外」の物語がつながる、重層的な構造を採っているのです。 これはラストの部分なのですが、手が込んでおり、これはいいなぁ、と素直に思ってしまいました。 また、物語の最後でも、ちゃんとハッピーエンドであることが暗示され、温かい気持ちで読了出来たのです。 一方、気になった点は、やはりフレッドとガラティアの交流といいますか、もっと云ってしまえば、フレッドがガラティアにグッと惹かれていく、そのエピソードは欲しかったかな、という点です。 それは例えば、気になるけれど作中であまり語られなかった、フレッドと父親との関係や、何故、ガラティアがフレッドの家に送られてきたのか? といった問題と絡めて掘り下げていくことが可能だったのではないかと愚案致します。 そういえば、ロンドンを思わせる街の雰囲気だったり、小さな小屋の端役の女優さんなど、「作品世界の雰囲気」がとてもよかった、ということも併せてお伝えしておきます。 というわけで、今日はこのへんで。 それでは、また。 ■
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by s-kuzumi
| 2016-02-18 21:30
| サウンドノベル
2016年 02月 17日
![]() 道玄斎です、こんばんは。 今日は久しぶりのノベルゲームレビュー。プレイしてみて30分ほどの尺でしたので、番外編ということで。 というわけで、今回は「不思議ノベル制作部」さんの『ephemeral you~閉ざした記憶~』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。 さて、タイトルにも使われている「ephemeral」という言葉、あまり馴染みがないかたも多いのではないでしょうか? 名詞形の「ephemera」は「カゲロウ」を意味する言葉でして、「ephemeral」のほうも「儚い」なんて意味を持っています。 作中でも何度か、この「儚い」という言葉が出てきましたね。 ……と、そんな話はさておいて。 ちょっとプレイしてみると、「あっ! このパターンは!」と分かってしまうようなオーソドックスな作品でした。 簡単に言ってしまえば「幽霊との同居もの」ということになりましょうか。 作中冒頭で、主人公晃は、自らを指して「極々平凡で、男子学生Dみたいな存在」というようなことを言っていましたが、「親と離れ一人で暮らしている」「帰宅部」「基本ものぐさ」な性質を備えているわけで、それはまさに「ノベルゲームの主人公」の資質といっていいでしょうw そんなわけで、かなりオーソドックスでテンポよく進む作品でした。 読みにくさなどは皆無。伏線なども分かりやすく、無駄なよどみがなく、ストレートに楽しめます。 もうちょっと、幽霊の美里との「同居感」があると、さらに物語としての面白さや深みが出たのかもしれませんね。かなり、ハイテンポで物語が進んでしまうため、「幽霊としての美里と主人公」との交流にもう少し筆を割くことで、ラストの印象も変わるはずです。 さて、ラストでは、ちょっと一ひねりしてあり、そこが本作の一番の特徴かもしれませんね。 しかし、一方で、ちょっと悲壮感が出てるエンドでしたので(けど、決してバッドエンドというわけじゃない)、もう少し希望のあるエンドの見せ方のほうが良かったかな? と若干思いました。 オーソドックスということ、お話ししましたが、「オーソドックスだから悪い」ということは絶対にないのです。 シンプルで、お馴染みの設定であっても、「あっ、なんかいいな」と思える作品も世の中にはたくさんあります。 本作もシンプルながら、どこかホッと出来る作風で、30分という時間を暖かい気持ちで過ごすことが出来ました。 というわけで、今日はこのへんで。 それでは、また。 ■
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by s-kuzumi
| 2016-02-17 20:50
| サウンドノベル
2016年 01月 04日
![]() 今日の副題 「男性も楽しめる、ハイクオリティ女性向け恋愛ゲーム!」 ※吟醸 ジャンル:等身大の高校生の甘酸っぱい青春ストーリー プレイ時間:フルコンプで4時間程度 その他:選択肢により「S」ルート、「M」ルートに分岐後述)、いじめ描写アリ システム:自作エンジン 制作年:2015/11/28 容量(圧縮時):371 MB 道玄斎です、こんにちは。 今日は、昨年末あたりから気になっていた作品をプレイしたので、そのご紹介。 スクリーンショットをご覧いただければ、そのハイクオリティさの一端が十分伝わるんじゃないかな、と思います。 というわけで、今回は「アシナガおじさん」の『Sカレ、Mカレ』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。 良かった点 ストーリーは、少し長めですが、公式サイトのほうから引用しておきましょう。 「俺にもっと勇気があれば、彼女をあんなにも泣かせることはなかったのに……」 こんなストーリーになっています。 とってもハイクオリティな作品でびっくりしました。 これがフリーなんて信じられないくらいです。 リアル路線の美しい立ち絵は、「動き」を伴い、髪の毛が揺れたり、口パクもします。 さらに、素晴らしいボイスが作品を彩ります。 本作は、いわゆるフルボイス作品なんですが、声優さんの演技がまた凄くいいですよね。 ヒロインの咲希なんて、ビジュアルと声がぴったりハマっていて、その魅力を最大限に発揮していました。 割と重めのテーマを持っているのも確かなのですが、サクサクと読んでいくことが出来、なんだか「楽しい」感じがする、というのも見逃せないポイントです。 さて、本作の特徴について軽く説明しておきましょう。 タイトルが示すように、本作は選択肢の選び方で「Sカレルート」、「Mカレルート」に大きく分岐します。 主人公湊の性格というか性質が、早い段階で決定されるのです。 「Sカレルート」に進むと、湊はちょっと強気で、若干腹黒いヤツになります。 ヒロイン咲希に対しても、ちょっとグイグイ攻めていくような感じ。 一方「Mカレルート」では、湊はヘタレになり、色々と戸惑いながら咲希と向き合っていくことに。 これは私の感想ですが、個人的には「Mカレルート」の湊のほうが親近感が湧きまして、そちらのルートのほうから攻略していきました。 各ルート(Sカレ、Mカレルート)に入ってからも、選択肢は出てきます。 もちろん、その選び方でバッドエンドになってしまったり、ちょっと試行錯誤を余儀なくされる部分はあるのですが、プレイ中にいつでも見られる「フローチャート」があり、自分がいま、このチャプターのどこまで来ているのか? どの選択肢を選んだのか? そしてそれはバッドエンドへの選択肢なのか? といった情報が一目でわかるようになっています。 また、「トゥルールート」へ行くための選択肢を選ぶと、「音」がなります。 ですので、フローチャート、そして選択肢の「音」をたよりとすることで、プレイの難易度はグッと下がります。 とはいえ、「前のチャプター」で正しい選択肢を選ばないと、それ以上先に進めないということもあったので、場合によっては、かなり前の段階から選択肢を選び直さないといけない、ということもあると思います。 「詰まったら、それ以前のチャプターからやり直す」というのが、コンプリートのヒントになるかと。 ちなみに、私はMカレルートの、チャプター4で詰まってしまって、ずいぶんそこで時間を使ってしまいました。 さて、本作のいいところの1つは、「男性がプレイしても全然楽しめる」というところでしょう。 何しろ、主人公(つまり視点人物)は男の子なのです。 そして、ヒロイン咲希はとても美しい。 ストーリー的にも、湊が、咲希の不可解だったり、不思議な行動に頭を悩ませる様子がとてもリアル。 男の子が恋におちる、ってまさにこういう時ですよね。 「こいつ何考えてんだろう?」とか考えだしたらもうダメですねw 相手に対してイライラしたりする時もあるんだけど、相手のことを「知りたい」、「理解したい」と思ったら、もうその時には完全に恋におちてる、と言ってもいいでしょう! ま、それはともかく、そういう甘酸っぱい恋愛のフレーバーもしっかり効いていて、男性向けの恋愛ゲームとして楽しむことも十分可能だということです。 そうそう、Sカレルートでも、Mカレルートでもトゥルーエンドを見ると、「咲希視点」からも物語を見ていくことが出来るので、女性も安心してプレイしていただけます! この咲希視点では、クールで控えめな印象を持つ咲希のイメージがかなり変わります。意外と普通の女の子っぽいところがあったり、妄想癖があったり、ちゃっかりしてたり……。 けど、人間ってそんなもんで、そういう咲希もまた魅力的なのです。 もちろん、ただ甘酸っぱいだけの恋愛で終わらないところも、本作の大きな特徴でしょう。 たとえば、湊が「高校デビュー」であることをひた隠しにしている、という前提があって築いてきた交友関係とか、咲希の「過去」や、その過去によって現在も縛られている状況とか、恋愛の背後には、色々な文脈があり、物語に深みを与えています。 で、逆に気になった点の1つはそこにあります。 というのも、恋愛が成就すると、背後にあった文脈に対するフォローがあまりないまま、物語は終わってしまうのです。 咲希にしつこく言い寄ってくる男や、嫌がらせをしてきた女子、あるいは湊のバレてしまった「高校デビュー」など、二人を取り巻く問題はまだ残っているはずなのですが、そこはほとんど触れられないまま、物語が終わり、アフターストーリーでもフォローはあまりありません(ただ、いわゆる悪友ポジションの悟士は、以前と変わらず湊に接してくれていることはわかります)。 ほんの少し、その点フォローの文言があるだけで納得感が大幅に増したと思うので、そうした周囲の状況も含めた形でのハッピーエンドが見たかったかな、と。 一昨年辺りから、「最近、女性向けゲームが凄い」と、私は言い続けているんですけど、そういう女性向けゲームの凄さや、盛り上がりを体現してくれているような作品でした。 本当にクオリティの高い作品です。 一応、女性向け、乙女ゲームというくくりではあると思うのですが、男性がプレイしても楽しめること請け合い。 是非、遊んでみてください。 それでは、また。 ■
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by s-kuzumi
| 2016-01-04 14:13
| サウンドノベル
2015年 12月 26日
![]() 今日の副題 「ちょっぴりモヤモヤ強烈な読後感」 ※吟醸 ジャンル:星を撮りに行くフルボイスノベルゲーム プレイ時間:1時間ほど その他:選択肢なし一本道。フルボイス。 システム:Yu-ris 制作年:2014/1/? 容量(圧縮時):233MB 道玄斎です、こんばんは。 今日は、短めではあるのですが、プレイ後にうまく言葉に出来ないけれども、強烈な印象を残す作品をプレイしたのでご紹介。ここまで読了後に色んな感情が残る作品って、珍しいのではないでしょうか? というわけで、今回は「Custom Games」さんの『サクとマツリの赤道儀』です。 ダウンロードは上記サイトからどうぞ……と言いたいのですが、現在ダウンロードが出来なくなっています。また、同時に公開されている「設定資料集」も同様です。 恐らく、また何かのタイミングでダウンロード可能になると思いますので、その時は是非ぜひ。 また、android端末をお持ちのかたは、ストアから「スマホ版」をダウンロードできるはずです。 良かった点 ストーリーは、私が簡単にまとめておきましょう。 サクは写真が好きな小学五年生。 だいたい、こんな感じ。 いやぁ、凄くいい作品でした。 タイトルが気になっていて、あらかじめダウンロードしておいたのですが正解でしたね。 尺としては1時間程度の、比較的小粒なサイズではあるのですが、非常に密度の高い作品になっていました。 タイトルやストーリーの概略から、「ちょっと変わった女の子と星を撮影しにいく感動ノベル」みたいな雰囲気を感じ取る人もいると思いますが、「それ以上」のものを感じさせてくれる、と断言できます。 実は、単純に星を撮影しにいく、というわけではなく、そこに至るまでに色々なエピソード(父親がカメラをやめてしまった理由や、学校のハムスターの話)があるんですよね。 それを丁寧に追っていきながら、本作の山場「星の撮影」に移っていく作りは、非常に丁寧なものを感じさせます。 どのエピソードも単発でどこか「浮いている」というわけではなく、読了した時に、「作品のテーマにしっかりとつながっているんだな」と感じさせてくれる、そういうものなのです。 ただ、それは「これが○○だから、あの△△と□□の意味でつながっている」と理解していく、というよりは直感的に感じさせるものであった、というのも確かでしょう。 それが故に、本作を貫く少しヒリヒリとした雰囲気や、読了後のなんともいえない不思議な感触が味わえるんじゃないかと思います。 ちなみに、本作品はフルボイスです。 ものすごい名演だったと思います。本当に「小学生」っぽい雰囲気が出ていて、「リアルさを感じさせる」ボイスアクトでした。 また、その編集も非常に巧みで、声の音量やリバーブ感で「人物間の距離」を演出したり、パンを振り、右から左へボイスが流れていくことで「移動」を表現したりと、他のノベルゲーム作品ではあまり見られない、音声に対するこだわりをひしひしと感じることが出来ました。 こういう音声演出って、もしかしたら他の作品にもあるのかもしれませんが、本作のそれは「サラッとしている」感じがあるんですよ。「わざとらしさ」や「いやみ」がない、というか。 だからこそ、「リアルさ」を感じさせてくれるものになっているんじゃないかな、と感じましたね。 一方で、読了後に感じる「不思議な気持ち」はそれはそれとして、ややスッキリしない部分が残っています。スッキリしないからこそ、不思議な感情が湧いてくるってことなんですけど、ここについては、ちょっと考え込んでしまいます。 どうやら、「設定資料集」を読むことで、そのモヤモヤは解消されるらしいのですが、「設定資料集まで読んだ上でないと作品の真価が分からない」というものについて、ちょっとだけ考えないこともないのです。 しかも、その「設定資料集」は単なる「データ集」ではなく、「物語の理解」へ直結してるからなんですよね。 つまり、ここに於いて、この作品の「読了」には2種類あるということになります。 ・普通に「ノベルゲーム」を読了した状態 ・「ノベルゲーム」読了後、設定資料まで読んだ状態 です。 そして、今……必然的に前者を選択せざるを得ない状況にあるわけで、ちょっとだけフラストレーションはたまりますね……。 そうはいっても、この作品はなんだか心に染み込んできますし、冒頭でもお話ししました通り、強烈な印象を残します。 ただ、「設定資料集」が残っているということは、その作品を100%理解していないわけで、その辺りで微妙に考えたり、葛藤があったりするのですw ゲームそれ自体でしか判断出来ない、というのも1つの真実だと思うけれども、「これも読んでね!」とか「これを読んで100%」ってものがあった場合、その作品の理解をどこに依拠したらいいんだ? って感じです。 ま、これはつまらない蛇足ですね。 単純な感動モノ、とは絶対に言えない、ヒリヒリとした感触、ほろ苦い部分、痛い部分。 色んなものを感じさせてくれる作品です。 是非ぜひ、お読みくださいませ(今だったらandroid版がおすすめ)。 それでは、また。 ■
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by s-kuzumi
| 2015-12-26 18:17
| サウンドノベル
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