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2020年 08月 15日

フリーノベルゲームレビュー 『吹き溜まりの彼女』

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今日の副題「“種”としてのノベルゲーム」

ジャンル:少し悲惨な純愛(?)ノベルゲーム
プレイ時間:30分前後
その他:選択肢なし、一本道。15禁
システム:ティラノビルダー
制作年:2020/8/10
容量(圧縮時:108MB


道玄斎です、こんばんは。
今日はタイトルと、そしてイラストに惹かれた作品をプレイしてみました。
予想していたよりも尺が短く、また物語内容も少し悲惨なものでしたので、取り上げようか迷ったのですが、なんかノベルゲームそのものや、リアルな世界、あるいはそれを創作としてどう加工するのか、といったようなところを話す土台として、凄く適している作品なんじゃないかな、と思ったので通常の枠で取り上げようと思います。

というわけで、今回は霜枯草さんの『吹き溜まりの彼女』です。

良かった点
・より尺の長い作品の土台となるような、可能性を持った作品

・現実は悲惨である、という点でのリアリティを感じる


気になった点

・ある意味で救いようのないラスト

・もう少し過去の描写に厚みがあると、よりよかった

ストーリーは、今回は私が簡単にまとめておきましょう。

主人公は大学四年生。就職活動も上手くいかず、悶々とする日々を過ごしていた。
そんな時、何気なく出会い系サイトを使い売春をしている少女と出会う。なんと、その少女は、主人公がずっと思い続けてきた、10年前離ればなれになってしまった幼馴染だった……。

と、こんな感じ。


すごくシンプルなスーリーを持った作品です。
生き別れの少女との出会い、同棲、そして別離、と、少女を軸にして三段階で内容を示せるくらい。


けど、のりしろというか、膨らませ方がたくさんあるなぁ、という可能性を感じます。
例えば、作中ではさらっと、自分と少女の過去が描写されるだけですが、そこにもっと筆を割くことで、物語全体の厚みを増すことが出来ます。
なぜ、主人公があれほどまで、彼女を想っていたのか? その説明を補強してあげるだけでも、作品はグッと締ってきますし、ちょっと病的なまでの主人公の思い入れの説明にもつながります。


実際のところ、10年離れていた女性と出会って、すぐにそれと分かるのかどうか。
相手が中学生の頃に離れているわけですから、女性のそこからの10年って物凄い変化がありますよね。
非常にありがちだと思いますが、最初は「あれ……なんだか誰かに似ている……」くらいにしておいて、過去のエピソードで出てきた、たとえばほくろの位置とか、あるいは主人公が彼女を守ろうと決心するきっかけになった怪我の痕とか、そういうのを出して、「目の前の女性は、あの子なんだ」というのを確定させる、という手があります。
で、女の子のほうは、最初から主人公のことに気が付いていた、とかね。


なので、過去のエピソードを厚くすることで、現在の物語も平坦ではなく、少し起伏を持たせながら肉付けしていくことが出来るというわけです。
ふりーむの説明書きには、約小一時間~一時間くらいの尺が示されていましたが、実際は30分程度。
しかし、そうした必要な部分でのエピソードの追加や、描写の追加を入れてあげれば、一時間半、あるいは二時間近くの物語に変化させられ得る、そういう可能性を感じました。


作品自体は、割と悲惨でw
救いようのないエンドを迎えるわけですが、どうしようもない不条理さみたいなものはヒリヒリと伝わってくるんですよね。
特に女性との関わりで男性に訪れる「どうしようもない現実」というやつです。
一方で、「その悲惨さをそのまま悲惨なまま作品にしちゃう」というのも、せっかくのノベルゲームという媒体にしている意味が薄れてしまうような気がします。


これもよくあることですが、一回目は悲惨なままのエンド。
二回目以降、随所に選択肢が出てきて、幸せになる道が拓かれていくとかがポピュラーな形でしょう。
ノベルゲームだからこそ、「読み物」としての存在を保持しながら、選択肢を提示して、それを回避していく道も模索出来るという。


いや、もちろん、悲惨なものは悲惨なものとしてそのまま提示するという方法もあるんです(私がそういうのが好きだっていうのも、みなさんご存知でしょう?)。
が、そこには一工夫あってもいいわけで、本作の場合ですと、作中でちょこちょこっと顔を出すあるアイテムがあります。
それはサボテン。就活が上手くいかない主人公の心情に対応するかのように元気のないそのサボテンを上手く活用してやれば、より印象に残るエンタメ作品としての締め方も出来るんじゃないかな? と愚案する次第。


私がパッと思いついたのは、サボテンをヒロインが世話し始める、みたいな回想が入るんですよね。
主人公の世話の仕方が悪かったのか、その元気のないサボテンが、ヒロインの手によって元気を取り戻していくみたいな描写をちょろっと入れておくんです。
そして、悲惨な結末を迎え、最後の最後の場面で、無人の部屋の中、夜にサボテンが花を咲かせる……。みたいなね。


理屈はともあれ、なんか「締め!」って感じはしますでしょう?
こういうことを上から目線でつらつらっと書いてしまうくらい、「色んな可能性にあふれた作品だなぁ」という印象があったのです。
現段階でもいいものがある、というのが分かるものの、まだそれは種や、枠組みといった感じ。


本当に、本作をもっと肉付けして、厚みを増したものを読んでみたいという気がしますね。
イラストも愛らしいですし、今後大きく伸びていかれる作者さんではないかと思います。


そんなわけで、今回はこの辺で。
ちょっと上から目線で書いちゃったなと反省はしています。
けど、少しでも本作が気になった方は、是非プレイしてみてください。今のうちから目をつけておくといい作者さんだと思いますよ。

※そういえば、タイトル画面に「吹き溜まり」に相当するであろうshady pleceという言葉があるんですが、shady placeではないでしょうか? 蛇足。


by s-kuzumi | 2020-08-15 23:18 | サウンドノベル