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久住女中本舗

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2007年 08月 08日

フリーサウンドノベルレビュー 『ほしのの。』

フリーサウンドノベルレビュー 『ほしのの。』_b0110969_9412929.jpg


今日の副題「ほしのふるばしょで」


お勧め指数(五段階評価):四
ジャンル:田舎での生活と従姉との関係(?)
プレイ時間:一時間半~二時間くらい

※特記事項:フラッシュ作品・全四話




道玄斎です。おはようございます。

今日もまた一本、プレイ致しましたのでレビューをお届けしようかと思います。
今回は、あの『星のない空の下で』や『ごがつのそら。』で有名な、「むきりょくかん」さんの『ほしのの。』です。



良かった点

・文章が良い。特に田舎の描写は都会に住む人からすれば、興味深く、ギャグテキストの文章も嫌味がない。

・しっかりとストーリーが纏まっており、内容も良く練られている。

・一つ一つのエピソードをちゃんと活かしており、基本に忠実な作り。

・各章が四季を意識した作りで、季節感が上手に演出されている。


気になった点

・なんと言っても、フラッシュ作品なので読みにくさがある。

・第一話では、背景は画像だったが、段々と加工写真に変化していった。気にならない人は全く気にならないが、最初は少し戸惑うかもしれない。




さて、先ずストーリーをざっと概観しておきましょう。


両親の死がきっかけで、従姉の住む「星野」の親戚に引き取られる事となった、結城。
従姉の榛名は、そんな結城の「良い姉」になろうと決意し、明るく、姉として結城を引っ張っていく。そんな田舎での生活……。



こんな感じですね。
いいな、と思ったのが結城が死んだ両親の事を思い出したりする場面があるのですが、田舎の生活になじみ始めてからも、時々両親の事を思いだし、沈んでしまうという描写です。
ストーリー全体として、両親の死と田舎へ引き取られる事になった、というのは導入の部分です。が、結城の最初にあった「田舎へのなじめなさ」「榛名を含めた親戚へのうち解けられない」事の理由の一つとして両親との別離があるわけです。
田舎の生活に随分となじんできてからも、時々両親の事を思い出す、というのはやはりリアリティがあります。

割と、こういう両親との別離を導入部分としながらも、ストーリーの中でその別離が忘れ去られてしまっているような作品も多く見受けられるかと思います。
そういう意味で、丁寧な作品作りを象徴する描写となっていますね。
又、田舎になじみ、榛名との距離が縮まるにつれて、両親の事を思い出す事が少なくなってきます。こういう心情の動きをテキストで上手に表現していました。

丁寧な描写が本作の長所の一つだと思います。
第二話は、第一話から二年後の世界です。
第二話では、結城は田舎の生活に大分慣れてしまっていますが、第一話のラストでああいう形で、榛名との交流があったからこそ、二年後の田舎に、そして榛名になじんだ姿が違和感なく受け止められるのです。上手く言えないのですが、空白の時間を描写する力があるんですよね。


脇役達も、なかなか魅せてくれます。
『ごがつのそら。』のヒロイン「みのり」も出てきますし、学級委員長で結城の友人(?)のエキセントリックなw 存在は読者にちょっとした息抜きを与えてくれます。


ただ、「みのり」からの電話が掛かってくるエピソードは、もう少し使用しても良かったのではないでしょうか?
病気になった榛名の身を案じて、電話を掛けてきてくれたみのりですが、「また電話するね」と言っておきつつ、その後電話の描写がありませんでした。
どこかに一つでも、みのりからの電話の場面や描写があった方がいいかもしれません。


そうそう。
携帯電話の使い方が、上手いなと思いました。
壁一枚を隔てて、榛名と結城がチャットメールをする場面です。
榛名は声が出せないし、尚かつ結城と顔を合わせたくない。けれども、結城と繋がっていたい。その思いの結果として、二人は壁一枚を隔ててたわいないチャットを携帯で行います。
ちゃんと「チャットメールをする」必然性がある為に、とても良い場面になっていて印象的です。


何と言っても惜しいのが、フラッシュ作品だという事。
いや、『ごがつのそら。』も元々はフラッシュだったからねぇ……。
文章の読み返しがしづらいのが辛かったです。俺は割と早く文章を送っていってしまうタチなので、読み返しを使う事が屡々あります。
一応、読み返し機能はあるのですが、やはり使いにくい……。


田舎を舞台にして、成長と青春の物語。これはお勧めです。
ちなみに、従姉との恋愛という所は、気にしては駄目ですよw 『源氏物語』にも雲居雁と夕霧という例もありますし(いとこ同士の結婚は外聞が悪いと言われていましたが)、『Kanon』での祐一と名雪の例もありますから……。

多少の読みにくさはありますが、お勧めの作品です。
『ごがつのそら。』が好きな人は、プレイする価値が大です。
恐らく、人気が出れば又、「NScripter」版とかが出るかな??

※8日午前九時半頃、画像サイズの変更。

# by s-kuzumi | 2007-08-08 07:07 | サウンドノベル | Comments(0)
2007年 08月 06日

フリーサウンドノベルレビュー 『僕の心は雨のち晴れ』

フリーサウンドノベルレビュー 『僕の心は雨のち晴れ』_b0110969_208369.jpg

今日の副題「留まることと進むこと」

※吟醸
ジャンル:少年の成長(?)
プレイ時間:一時間半~
その他:選択肢無し、一本道。

システム:Windows/PSP対応 Hybrid Mini-novel
容量(圧縮時):53.9MB




道玄斎です、こんばんは。
随分長い間、サウンドノベルのレビューを書いていなかった気がします。
先週は凄く忙しくて、なかなか纏まった時間が取れなかったのが原因でした。

本日は、日曜日でしたので(もう月曜日になってますが)、一本、プレイしてレビューを書きたいと思います。
今日は、『僕の心は雨のち晴れ』です。7/26日のレビューで書いた『楽園』と同じ「Team Eye mask」さんの作品です。以前にプレイした事のある作品ですが、改めてレビューを書くにあたって、プレイし直しました。

ちなみに俺がプレイしたのは「for Windows」というヴァージョンで、例によってPSPでプレイ出来るバージョンもありますよ。驚くべきは、どうやら携帯でもプレイ出来るらしい事です。
対応する機種を持っている人は、是非インストールしてみて下さい。

では、またいつものように……。



良かった点

・音楽が場面場面にマッチ

・しっかりとした構成。効果的に、そして丁寧に主人公達の気持ちを追っていくので、纏まりのあるストーリーとなっている。

・美麗なイラスト。好みの問題は勿論あるけれども、フリーで配布されているこうしたゲームの中で、間違いなく高水準のイラストが付いています。個人的には、ハルヒと長門に見えるのだけれども……。



気になった点

・前半のドタバタ劇がちょっとくどい。担任教師までもが主人公イジメw に走るのはいただけない。

・ちょっと気になる誤字脱字。



こんな所です。
物語の全体像としては、『ぼたんゆき』に似ていますね。ついでに述べさせて貰うと『ぼたんゆき』も名作です。

『ぼたんゆき』も本作も、或る意味、ベタな展開なのですが、そこはしっかりとした描写やストーリーの確かさで、新鮮な感動を与えてくれます。
ベタな設定でも、細かい味付けや丁寧な描写、そして「工夫」があれば作品はオリジナリティ溢れるものに成るはずです。

前半部分をプレイしていると、ベタベタなドタバタ展開で、決して作品自体のレベルが低くはないのですが、どうにも「よくある」タイプの描写となってしまっていました。又、それに付随するギャグというか、そういうのも冗長な気がしました。

ただ、後半から一気に「一個のゲーム」としての水準が上がります。
選択肢が存在しない、一本道ノベルですけれども、後半の描写は秀逸です。効果的に配置された過去の描写、そして今の自分の気持ちの変化。
物語のキーパーソンである夢乃という女の子も、前半ではただ単に騒がしい子だったのですが、後半に入ってからグッと魅力を増してきます。
テキスト自体の質も、後半で向上しているようです。前半は特に粗はないものの、どうにも読みにくさみたいなものを感じたのですが、後半以降はそうした印象を与える事はありませんでした。

正直、前半~中盤までプレイした時点で「これは評価は三かな」と思っていたのですが、後半部が素晴らしく、前半部を十分フォローしているので「四」としました。


何か大切なモノを失ってしまった時、人はそこに留まろうとするか、無理をしてでも前に進もうとするか、大体この二択な気がします。
けれども、この二つは真逆なようで、実は同じ行為なのです。
結局は、自分の中でその失ってしまったモノに対して、折り合いをつけれず、逃げてしまっているという意味で。

本作には、方向性は違うけれども、主人公の空と、その幼なじみ永海が、恋人/友人であった美湖から逃げつつ日々を送っています。
この二人、それぞれの視点から喪失体験を描く手法は良かったですね。

過去を捨てる事なく、前向きに歩き出す。
そんなテーマが作品に通底しています。
一見、ちょっとジメジメして見えますが、とても前向きで明るい作品です。明るいといってもカンカン照りの太陽ではなくて、ほんのり明けゆく朝日のような、そうした明るさなのです。

前半部で、「ちょっと合わないかも?」と思っても、是非最後までプレイしてみて下さい。
きっと後半からがらっと評価が変わる筈です。

そうそう。誤字脱字についても少し。
クライマックス部に、テキストの「打ち間違い」みたいのがありました。かなり良いシーンだったので残念です。
又、これは本作に限らず、他のサウンドノベルの作品でも往々にして見られる事なのですが、「却って目立つ」というような文章を「返って目立つ」としてしまっているケースがありました。

「却って」と「返って」。
この二つの区別がついていない作品は、相当な数があります。読み方が同じですし、混乱してしまうのですが、気になる人は気になってしまうので、出来たら直した方が良いでしょう。


本作は、特に悲しい経験をした人にお勧めです。
好きだった人との別離などを経験して方に、是非読んでもらいたいです。
少しだけ、心に晴れ間が見えるかもしれませんよ?

# by s-kuzumi | 2007-08-06 01:29 | サウンドノベル | Comments(0)
2007年 08月 04日

短冊と色紙

こんばんは、久住です。

道玄斎さんから、古本市の情報を聞いたのでわたしもめぼしいものが無いかチェックしてきました。真偽不明の源三位頼政の古筆切よりも、時代はあたらしくともちゃんとしたものが欲しかったのです。

さて、話に聞いていたのよりずいぶんと、品数が薄くなっていた印象です。
わたしは、迷った末に、池辺義象の色紙と賀茂季鷹の短冊を一枚かいました。
前者は幕末生まれの国学者、後者は上賀茂神社の神官のようです。

http://www.sankei.co.jp/chiho/kyoto/070629/kyt070629000.htm

こういうニュースで名前が出てくる人です。
他の短冊は割と読みやすかったのですが、何故か一番解読するのが難しいものを買ってしまいました。これから辞典をたよりに解読してきます。

# by s-kuzumi | 2007-08-04 19:20 | 日々之雑記 | Comments(0)
2007年 08月 03日

頼政射怪鳥事

道玄斎です。こんばんは。

今日は、某都心部のデパートの古書市に寄ってきました。
で、あの鵺退治で有名な「源頼政」別名「源三位頼政」が書いた古筆切を購入。

尤も、「伝頼政筆」なので、信憑性はアレなんですが……。
お値段は、これがもし本物の頼政筆であったら、大変お値打ち価格でした。

ちなみに書かれている和歌は『古今集』の仮名序の黒主の和歌です。

気になる点が何点かあります。



①気になったので、Googleで調べて他の「伝頼政筆」のものと見比べてみたのですが、どうにも他の「伝頼政筆」のものと書体が違う気がする。

②和歌の下に作者を示す「志賀黒主」という書き込みがある。
調べてみると、鴨長明の『無明抄』にて、黒主が「志賀で没した」という記事が見え、中世期に流布した伝説の類である事が分かり、それに準拠する形で「志賀黒主」と書かれているものと推測される。
しかし、『無名抄』が書かれたのが1212年の『方丈記』と同時期である事から、1180年に没した頼政がこの伝説を知っていたのか疑わしい。

③古本市は、今日で二日目である。一日目に専門家が押し寄せてめぼしいものは購入している筈なので、二日目にあの「頼政」のものが残っている、というのは、専門家からみて頼政真筆でない可能性の方が高い、と判断されたからではないか。



考えれば考える程に、偽物の気配が……。
いや、けれどもこういうのは正体を見極めずに「伝頼政筆」という夢を大事にした方がいいのかな、なんて思ったり思わなかったり……。

ま、深く考えずにコレクションとして持っておこうっと。
画像を載せてもいいのだけれども、詳しい人が「偽物だ!」って言ってくるとちょっときまりが悪いので、敢えて載せずに。
気が向いたら、画像をアップロードするかもしれません。

# by s-kuzumi | 2007-08-03 20:57 | 日々之雑記 | Comments(0)
2007年 08月 02日

『Noble Flowers 2001- 2006』 CLOSET CHILD 同人誌

道玄斎です、こんばんは。

やはり、今週は忙しくて、フリーのノベルゲームのレビューを書いたりは出来てませんね……。
何度か書きましたように、商業モノでは『リトルバスターズ!』をちょこちょこっとやっていたのですが、それも今は中断しています。二つ、三つシナリオをクリアしたのですが、やっぱり全部のシナリオを見た上じゃないと、レビューも何もないですからね。

久住に任せっぱなしというのもアレなので、今日は同人誌の紹介でもしてみようかな、と。
先日、某そういうお店に行った時に、見つけたオリジナル同人誌です。

一年に一冊くらいの割と遅めの刊行ペースだったらしいのですが、一区切りというか総集編というか、過去にリリースされた「CLOSET CHILD」さんの『Nobel Flowers』を一冊に纏めたオトクな一冊です。

一応、メイドものです。
が、寧ろメイドというよりも、百合っぽい感じもしたりしますねぇ。
去勢済みの男(女の子にしか見えない。ちなみに職業メイド)とか、やさぐれメイドとか、「お嬢様」とかかなり色々な属性をぶち込んでいます。

絵柄も後半に行くに従って洗練されてきます。
今のところは、オムニバスメイドショートストーリー(?)という趣です。
ほんわかした感じで、なかなか好感が持てますね。18禁じゃない、というのもポイントです。読み応えもありますし(総ページ数で75ページくらい)、お勧めの一冊です。

今サイトの方を確認してみたのですが、プロの絵師さんだったんですね。
今の内に、チェックしておくと良いかもしれませんよ??

# by s-kuzumi | 2007-08-02 20:01 | 読書 マンガ | Comments(0)