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久住女中本舗

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2016年 02月 18日

フリーサウンドノベルレビュー 『象牙の乙女』

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今日の副題 「クラシカルだけど重層的な優しい物語」

ジャンル:売れない劇作家と機械人形の物語
プレイ時間:約1時間ほど
その他:選択肢なし、一本道
システム:LiveMaker

制作年:2015/11/28
容量(圧縮時):41.1 MB



道玄斎です、こんばんは。
今日は1時間くらいの比較的小粒な作品ですが、重層的で満足感のある物語をプレイしたのでご紹介。
というわけで、今日は「Lapree」さんの『象牙の乙女』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・入れ子構造の上に、舞台(演劇)と主人公たちの実生活が重なる重層的な作り

・やっぱり嬉しいハッピーエンド


気になった点

・主人公フレッドが、ヒロインであるガラティアに惹かれる描写はもうひと押し欲しい

ストーリーは、私が簡単にまとめておきましょう。
フレッドは売れない劇作家。
劇団長に台本を提出するもボツを食らい、家賃すら払えない日々を送っている。

そんなある日、謎の男たちがフレッドの部屋に棺のようなものを運び込む。
そのなかには……美しい少女の自律機械人形(オートマタ)のガラティアが入っていた。

どうやら、ガラティアを制作したのは、フレッドの父親らしいのだが……。

こんな感じでしょうか?

昨日に引き続いて、今日もある意味で「少女との同居型」の作品ですね。

さて、その少女ことガラティアが、機械人形だということで、本作の一つの特徴となっていました。
うんと粗雑に云ってしまえば、『鉄腕アトム』以来の「機械に心はあるのか?」というような問題にも踏み込んでいる部分もあり、その意味では割とクラシカルなテーマ設定だと云えるかもしれません。

機械(ロボット)と心、というテーマは、結構色々なところでおなじみですよね。
やはりクラシックになりますが、『われはロボット』という超有名SFでも、そうしたテーマが見られました。近年(でもない?)では『ちょびっツ』というCLAMPのマンガもありましたよね。

こうした問題設定の魅力は、「人間によって人間を語る」のではなく、「ロボットによって逆に人間が見えてくる」ようなところにあるんじゃないかと思います。

人間同士では気づかない、分からない「人間らしさ」とでも言うべきものが、ロボット相手だと逆に浮き彫りになって見えてきたりする。
そして、ロボットと人間との境界はますます不確かなものになっていく……。

こういう問題設定は、クラシカルでこそありますが非常に興味深いものです。
問題設定そのものはともかく、作者の力量次第で色々な物語の広がりを見せてくれるテーマでもあります。


実は本作は入れ子構造になっておりまして、ゲームを起動すると、主人公フレッドが「過去を回想し」、物語の本編を語る、という体裁を採っています。

これだけならば、比較的よくみられる手法なのですが(個人的には結構好き)、本作の場合、フレッドの職業と関わる「演劇」が作中で重要な役割を果たしています。

つまり、物語それ自体がすでに入れ子構造でありながら、その本編内部においても、「舞台の上」と「舞台の外」の物語がつながる、重層的な構造を採っているのです。

これはラストの部分なのですが、手が込んでおり、これはいいなぁ、と素直に思ってしまいました。
また、物語の最後でも、ちゃんとハッピーエンドであることが暗示され、温かい気持ちで読了出来たのです。


一方、気になった点は、やはりフレッドとガラティアの交流といいますか、もっと云ってしまえば、フレッドがガラティアにグッと惹かれていく、そのエピソードは欲しかったかな、という点です。

それは例えば、気になるけれど作中であまり語られなかった、フレッドと父親との関係や、何故、ガラティアがフレッドの家に送られてきたのか? といった問題と絡めて掘り下げていくことが可能だったのではないかと愚案致します。


そういえば、ロンドンを思わせる街の雰囲気だったり、小さな小屋の端役の女優さんなど、「作品世界の雰囲気」がとてもよかった、ということも併せてお伝えしておきます。


というわけで、今日はこのへんで。



それでは、また。

# by s-kuzumi | 2016-02-18 21:30 | サウンドノベル | Comments(2)
2016年 02月 17日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『ephemeral you~閉ざした記憶~』

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『ephemeral you~閉ざした記憶~』_b0110969_17522634.jpg



道玄斎です、こんばんは。
今日は久しぶりのノベルゲームレビュー。プレイしてみて30分ほどの尺でしたので、番外編ということで。
というわけで、今回は「不思議ノベル制作部」さんの『ephemeral you~閉ざした記憶~』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。


さて、タイトルにも使われている「ephemeral」という言葉、あまり馴染みがないかたも多いのではないでしょうか? 名詞形の「ephemera」は「カゲロウ」を意味する言葉でして、「ephemeral」のほうも「儚い」なんて意味を持っています。
作中でも何度か、この「儚い」という言葉が出てきましたね。


……と、そんな話はさておいて。
ちょっとプレイしてみると、「あっ! このパターンは!」と分かってしまうようなオーソドックスな作品でした。

簡単に言ってしまえば「幽霊との同居もの」ということになりましょうか。

作中冒頭で、主人公晃は、自らを指して「極々平凡で、男子学生Dみたいな存在」というようなことを言っていましたが、「親と離れ一人で暮らしている」「帰宅部」「基本ものぐさ」な性質を備えているわけで、それはまさに「ノベルゲームの主人公」の資質といっていいでしょうw


そんなわけで、かなりオーソドックスでテンポよく進む作品でした。
読みにくさなどは皆無。伏線なども分かりやすく、無駄なよどみがなく、ストレートに楽しめます。

もうちょっと、幽霊の美里との「同居感」があると、さらに物語としての面白さや深みが出たのかもしれませんね。かなり、ハイテンポで物語が進んでしまうため、「幽霊としての美里と主人公」との交流にもう少し筆を割くことで、ラストの印象も変わるはずです。


さて、ラストでは、ちょっと一ひねりしてあり、そこが本作の一番の特徴かもしれませんね。
しかし、一方で、ちょっと悲壮感が出てるエンドでしたので(けど、決してバッドエンドというわけじゃない)、もう少し希望のあるエンドの見せ方のほうが良かったかな? と若干思いました。


オーソドックスということ、お話ししましたが、「オーソドックスだから悪い」ということは絶対にないのです。
シンプルで、お馴染みの設定であっても、「あっ、なんかいいな」と思える作品も世の中にはたくさんあります。

本作もシンプルながら、どこかホッと出来る作風で、30分という時間を暖かい気持ちで過ごすことが出来ました。


というわけで、今日はこのへんで。



それでは、また。

# by s-kuzumi | 2016-02-17 20:50 | サウンドノベル | Comments(0)
2016年 01月 04日

フリーサウンドノベルレビュー 『Sカレ、Mカレ』

フリーサウンドノベルレビュー 『Sカレ、Mカレ』_b0110969_14125765.jpg

今日の副題 「男性も楽しめる、ハイクオリティ女性向け恋愛ゲーム!」

※吟醸
ジャンル:等身大の高校生の甘酸っぱい青春ストーリー
プレイ時間:フルコンプで4時間程度
その他:選択肢により「S」ルート、「M」ルートに分岐後述)、いじめ描写アリ
システム:自作エンジン

制作年:2015/11/28
容量(圧縮時):371 MB




道玄斎です、こんにちは。
今日は、昨年末あたりから気になっていた作品をプレイしたので、そのご紹介。

スクリーンショットをご覧いただければ、そのハイクオリティさの一端が十分伝わるんじゃないかな、と思います。
というわけで、今回は「アシナガおじさん」の『Sカレ、Mカレ』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・フリーなのが信じられないほど、全体的にハイクオリティ。

・男性がプレイしても全然楽しめる

・重たい内容はあるが、軽快にプレイ出来て楽しい


気になった点

・ラストですっきりしない部分が若干ある

・インストールを要求するタイプのソフト

ストーリーは、少し長めですが、公式サイトのほうから引用しておきましょう。
「俺にもっと勇気があれば、彼女をあんなにも泣かせることはなかったのに……」

中学3年生の冬、砂川 湊(すながわ みなと)はクラスメイトの小栗 咲希(おぐり さき)がいじめに遭っている場面を偶然目撃してしまう。
しかし、人付き合いが苦手でほとんど一人で過ごして来た湊は、ただ泣きじゃくる彼女を見守るだけで何も出来なかった。

自分を不甲斐なく思った湊は変わろうと決意をする。

数ヶ月後、高校デビューを果たした彼を待っていたのは、たくさんの友だちや女の子に囲まれたリア充ライフ。
それは今まで湊が感じたことがない心地の良い世界だった。
いつしか、変わろうとした時の純粋な意識は薄れ、小さな嘘で自らを偽り“良い人”を演じるようになっていた。

そんな中、湊は咲希と再会する。
咲希は中学の時のような明るさはなくなっており、誰とも関わらず一人で過ごしていた。

過去のことに負い目を感じつつも、彼女の口から中学時代の黒歴史をばらされたくない湊は行動に出る。

こんなストーリーになっています。


とってもハイクオリティな作品でびっくりしました。
これがフリーなんて信じられないくらいです。

リアル路線の美しい立ち絵は、「動き」を伴い、髪の毛が揺れたり、口パクもします。
さらに、素晴らしいボイスが作品を彩ります。

本作は、いわゆるフルボイス作品なんですが、声優さんの演技がまた凄くいいですよね。
ヒロインの咲希なんて、ビジュアルと声がぴったりハマっていて、その魅力を最大限に発揮していました。

割と重めのテーマを持っているのも確かなのですが、サクサクと読んでいくことが出来、なんだか「楽しい」感じがする、というのも見逃せないポイントです。


さて、本作の特徴について軽く説明しておきましょう。

タイトルが示すように、本作は選択肢の選び方で「Sカレルート」、「Mカレルート」に大きく分岐します。
主人公湊の性格というか性質が、早い段階で決定されるのです。

「Sカレルート」に進むと、湊はちょっと強気で、若干腹黒いヤツになります。
ヒロイン咲希に対しても、ちょっとグイグイ攻めていくような感じ。

一方「Mカレルート」では、湊はヘタレになり、色々と戸惑いながら咲希と向き合っていくことに。

これは私の感想ですが、個人的には「Mカレルート」の湊のほうが親近感が湧きまして、そちらのルートのほうから攻略していきました。


各ルート(Sカレ、Mカレルート)に入ってからも、選択肢は出てきます。
もちろん、その選び方でバッドエンドになってしまったり、ちょっと試行錯誤を余儀なくされる部分はあるのですが、プレイ中にいつでも見られる「フローチャート」があり、自分がいま、このチャプターのどこまで来ているのか? どの選択肢を選んだのか? そしてそれはバッドエンドへの選択肢なのか? といった情報が一目でわかるようになっています。

また、「トゥルールート」へ行くための選択肢を選ぶと、「音」がなります。
ですので、フローチャート、そして選択肢の「音」をたよりとすることで、プレイの難易度はグッと下がります。

とはいえ、「前のチャプター」で正しい選択肢を選ばないと、それ以上先に進めないということもあったので、場合によっては、かなり前の段階から選択肢を選び直さないといけない、ということもあると思います。

「詰まったら、それ以前のチャプターからやり直す」というのが、コンプリートのヒントになるかと。
ちなみに、私はMカレルートの、チャプター4で詰まってしまって、ずいぶんそこで時間を使ってしまいました。


さて、本作のいいところの1つは、「男性がプレイしても全然楽しめる」というところでしょう。

何しろ、主人公(つまり視点人物)は男の子なのです。
そして、ヒロイン咲希はとても美しい。

ストーリー的にも、湊が、咲希の不可解だったり、不思議な行動に頭を悩ませる様子がとてもリアル。
男の子が恋におちる、ってまさにこういう時ですよね。

「こいつ何考えてんだろう?」とか考えだしたらもうダメですねw
相手に対してイライラしたりする時もあるんだけど、相手のことを「知りたい」、「理解したい」と思ったら、もうその時には完全に恋におちてる、と言ってもいいでしょう!

ま、それはともかく、そういう甘酸っぱい恋愛のフレーバーもしっかり効いていて、男性向けの恋愛ゲームとして楽しむことも十分可能だということです。

そうそう、Sカレルートでも、Mカレルートでもトゥルーエンドを見ると、「咲希視点」からも物語を見ていくことが出来るので、女性も安心してプレイしていただけます!
この咲希視点では、クールで控えめな印象を持つ咲希のイメージがかなり変わります。意外と普通の女の子っぽいところがあったり、妄想癖があったり、ちゃっかりしてたり……。
けど、人間ってそんなもんで、そういう咲希もまた魅力的なのです。


もちろん、ただ甘酸っぱいだけの恋愛で終わらないところも、本作の大きな特徴でしょう。
たとえば、湊が「高校デビュー」であることをひた隠しにしている、という前提があって築いてきた交友関係とか、咲希の「過去」や、その過去によって現在も縛られている状況とか、恋愛の背後には、色々な文脈があり、物語に深みを与えています。

で、逆に気になった点の1つはそこにあります。
というのも、恋愛が成就すると、背後にあった文脈に対するフォローがあまりないまま、物語は終わってしまうのです。

咲希にしつこく言い寄ってくる男や、嫌がらせをしてきた女子、あるいは湊のバレてしまった「高校デビュー」など、二人を取り巻く問題はまだ残っているはずなのですが、そこはほとんど触れられないまま、物語が終わり、アフターストーリーでもフォローはあまりありません(ただ、いわゆる悪友ポジションの悟士は、以前と変わらず湊に接してくれていることはわかります)。

ほんの少し、その点フォローの文言があるだけで納得感が大幅に増したと思うので、そうした周囲の状況も含めた形でのハッピーエンドが見たかったかな、と。


一昨年辺りから、「最近、女性向けゲームが凄い」と、私は言い続けているんですけど、そういう女性向けゲームの凄さや、盛り上がりを体現してくれているような作品でした。

本当にクオリティの高い作品です。
一応、女性向け、乙女ゲームというくくりではあると思うのですが、男性がプレイしても楽しめること請け合い。
是非、遊んでみてください。



それでは、また。

# by s-kuzumi | 2016-01-04 14:13 | サウンドノベル | Comments(2)
2016年 01月 02日

謹賀新年

道玄斎です、こんばんは。


あけましておめでとうございます!

昨年も相変わらずあまり更新をしなかったのですが、それでもフリーのノベルゲームの関係で、色々な方とつながったり、お話しを聞けたり、仲良くさせて頂いたり、と貴重な経験が出来ました。

多分、本年もそんな感じで、のんびりマイペースに色々やっていくと思います。



というわけで、短いですが、新年のご挨拶ということで。
それでは、お正月をお楽しみくださいませ~。



道玄斎敬白

# by s-kuzumi | 2016-01-02 17:02 | 日々之雑記 | Comments(0)
2015年 12月 26日

フリーサウンドノベルレビュー 『サクとマツリの赤道儀』

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今日の副題 「ちょっぴりモヤモヤ強烈な読後感」

※吟醸
ジャンル:星を撮りに行くフルボイスノベルゲーム
プレイ時間:1時間ほど
その他:選択肢なし一本道。フルボイス。
システム:Yu-ris

制作年:2014/1/?
容量(圧縮時):233MB




道玄斎です、こんばんは。
今日は、短めではあるのですが、プレイ後にうまく言葉に出来ないけれども、強烈な印象を残す作品をプレイしたのでご紹介。ここまで読了後に色んな感情が残る作品って、珍しいのではないでしょうか?

というわけで、今回は「Custom Games」さんの『サクとマツリの赤道儀』です。
ダウンロードは上記サイトからどうぞ……と言いたいのですが、現在ダウンロードが出来なくなっています。また、同時に公開されている「設定資料集」も同様です。

恐らく、また何かのタイミングでダウンロード可能になると思いますので、その時は是非ぜひ。
また、android端末をお持ちのかたは、ストアから「スマホ版」をダウンロードできるはずです。
良かった点

・読了後に、何ともいい難い感情が押し寄せてくる。

・非常に丁寧に作られており、音声にも大きなこだわりが。


気になった点

・同時配布されていた「設定資料」を読まないと、理解できない箇所がある?)。

ストーリーは、私が簡単にまとめておきましょう。
サクは写真が好きな小学五年生。
彼のクラスには「魔女」と呼ばれている女子マツリがおり、クラスメイト達から陰湿な嫌がらせを受けている。
しかしマツリはそうした嫌がらせに対し、何も反応を見せようともしない。

サクはマツリと一緒に、学校の課題である「写真撮影」を行うことになっているのだが……。

だいたい、こんな感じ。


いやぁ、凄くいい作品でした。

タイトルが気になっていて、あらかじめダウンロードしておいたのですが正解でしたね。

尺としては1時間程度の、比較的小粒なサイズではあるのですが、非常に密度の高い作品になっていました。

タイトルやストーリーの概略から、「ちょっと変わった女の子と星を撮影しにいく感動ノベル」みたいな雰囲気を感じ取る人もいると思いますが、「それ以上」のものを感じさせてくれる、と断言できます。

実は、単純に星を撮影しにいく、というわけではなく、そこに至るまでに色々なエピソード(父親がカメラをやめてしまった理由や、学校のハムスターの話)があるんですよね。
それを丁寧に追っていきながら、本作の山場「星の撮影」に移っていく作りは、非常に丁寧なものを感じさせます。

どのエピソードも単発でどこか「浮いている」というわけではなく、読了した時に、「作品のテーマにしっかりとつながっているんだな」と感じさせてくれる、そういうものなのです。

ただ、それは「これが○○だから、あの△△と□□の意味でつながっている」と理解していく、というよりは直感的に感じさせるものであった、というのも確かでしょう。
それが故に、本作を貫く少しヒリヒリとした雰囲気や、読了後のなんともいえない不思議な感触が味わえるんじゃないかと思います。


ちなみに、本作品はフルボイスです。
ものすごい名演だったと思います。本当に「小学生」っぽい雰囲気が出ていて、「リアルさを感じさせる」ボイスアクトでした。

また、その編集も非常に巧みで、声の音量やリバーブ感で「人物間の距離」を演出したり、パンを振り、右から左へボイスが流れていくことで「移動」を表現したりと、他のノベルゲーム作品ではあまり見られない、音声に対するこだわりをひしひしと感じることが出来ました。

こういう音声演出って、もしかしたら他の作品にもあるのかもしれませんが、本作のそれは「サラッとしている」感じがあるんですよ。「わざとらしさ」や「いやみ」がない、というか。
だからこそ、「リアルさ」を感じさせてくれるものになっているんじゃないかな、と感じましたね。


一方で、読了後に感じる「不思議な気持ち」はそれはそれとして、ややスッキリしない部分が残っています。スッキリしないからこそ、不思議な感情が湧いてくるってことなんですけど、ここについては、ちょっと考え込んでしまいます。

どうやら、「設定資料集」を読むことで、そのモヤモヤは解消されるらしいのですが、「設定資料集まで読んだ上でないと作品の真価が分からない」というものについて、ちょっとだけ考えないこともないのです。
しかも、その「設定資料集」は単なる「データ集」ではなく、「物語の理解」へ直結してるからなんですよね。

つまり、ここに於いて、この作品の「読了」には2種類あるということになります。

  ・普通に「ノベルゲーム」を読了した状態

  ・「ノベルゲーム」読了後、設定資料まで読んだ状態

です。
そして、今……必然的に前者を選択せざるを得ない状況にあるわけで、ちょっとだけフラストレーションはたまりますね……。


そうはいっても、この作品はなんだか心に染み込んできますし、冒頭でもお話ししました通り、強烈な印象を残します。

ただ、「設定資料集」が残っているということは、その作品を100%理解していないわけで、その辺りで微妙に考えたり、葛藤があったりするのですw

ゲームそれ自体でしか判断出来ない、というのも1つの真実だと思うけれども、「これも読んでね!」とか「これを読んで100%」ってものがあった場合、その作品の理解をどこに依拠したらいいんだ? って感じです。

ま、これはつまらない蛇足ですね。


単純な感動モノ、とは絶対に言えない、ヒリヒリとした感触、ほろ苦い部分、痛い部分。
色んなものを感じさせてくれる作品です。

是非ぜひ、お読みくださいませ(今だったらandroid版がおすすめ)。



それでは、また。

# by s-kuzumi | 2015-12-26 18:17 | サウンドノベル | Comments(4)