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久住女中本舗

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2015年 03月 22日

フリーサウンドノベルレビュー 『爆音の世代、沈黙の世界』

フリーサウンドノベルレビュー 『爆音の世代、沈黙の世界』_b0110969_165037.jpg

今日の副題 「考える作品」

ジャンル:強気っ子大集合・バイオレンス・アドベンチャー
プレイ時間:合計で9時間半程度。
その他:選択肢アリ。全四章(オマケルートあり)の作りになっている。18禁。
システム:らのべえ

制作年:2013/4/15(フリー公開)
容量(圧縮時):978MB




道玄斎です、こんにちは。
ここんとこずっとプレイしていた作品のご紹介。ジャンルには「強気っ子大集合・バイオレンス・アドベンチャー」なんてありますが、物語のテーマ(の一つ)として、民族問題があったりと実はかなりの社会派作品でした。
というわけで、今回は「Cosmillica」さんの『爆音の世代、沈黙の世界』です。ダウンロードはこのページからどうぞ。
良かった点

・同人ならではの、強烈なテーマ設定。

・物語が進むにつれ、色々と考えさせられる部分あり。


気になった点

・後半に行けばいくほどテーマがブレてくるような。

・主人公がほぼ無力(但し、考えを改めた部分もある。後述)。

ストーリーは、サイトのURLを張っておきましょう。こちらからどうぞ。

少しだけ味気ないので、補足しておきましょう。
民族問題で紛糾する社会、主人公とその仲間達の生活は危ういバランスによって、その平和が保たれていた。しかし、ある事件をきっかけにその平和は失われ、誰しもがこの国の抱える問題について無縁ではいられなくなる。その状況で果たして主人公、そしてヒロイン達はどのような選択をしていくのか……。

というような感じでしょうか。
一応、架空の国名や固有名詞を使って「現実社会とは関係がない」と主張しているのですが、明らかに本作の舞台設定は「日本」です。
そして、在日外国人の問題というのが大きくフィーチャーされてきます。何しろ、ヒロインの一人が在日外国人(というか、在日韓国人を模した在日外国人)なのですから、社会派というか、もの凄い攻めの姿勢を感じます。


まずは、概略的なところですが、本作は全部で四章の構成です。
選択肢もあるのですが、章とヒロインの女の子というのがセットになっています。
例えば、第一章ではジェシカのルート、第二章ではサクラのルート、というような感じです。恐らく、「一章から順番に見ていく」ような作りになっている為、バッドエンドは存在しても、選択肢の捌き方によって、いきなりサクラルート(第二章)から攻略していく、というのは出来ない……んじゃないかと思います。

当然、第一章でのエンドより、第二章、第二章より第三章のエンドの方が、物語全体のテーマ(これも、ちょっと作中でブレてるような気がするのですが)に近づいていく。そうした感触があります。


最初、私はプレイしながら、「ちょっと馴染めないな……」と思っていました。
というのは、前半部は割と古風なギャグテイストのテキストで、妙にテンポが悪くなってしまっている部分がある、ということ。そして、なにより、主人公の「みんな同じ人間なのに何故憎みあうんだ」的な、云ってしまえばお花畑思考に対して、軽くイライラしてしまったのです。

どちらの側にもそれなりの「正義」とか「大義」があるからこそ、対立が起こるし、それぞれがそれぞれに対して不平や不満を覚えるというのも、極々自然なことだと思うのです。
兎に角、対立というのは、それぞれの背景があって起こるわけですが、その背景にある問題というのが作品のテーマでありながら、割と軽く扱われており、しかも主人公は、ほぼ自動的に「在日外国人」の立場に拠って立っている、という状況なので「これはこれで一面的なものの見方なんじゃない?」と思ってしまった、ということです。


と、まぁ、そんな具合で、正直、あまり良い印象ではなかった作品だったのですが、読み進めていくうちに、少しづつ考えが変わってきました。
というのも、第一章や第二章をエンドというのは、「まだまだ問題が残っている」というのが前提となるエンドで、それに対しても自覚的だったからです。

作品タイトルの一部でもあり、作中で繰り返される「沈黙」という言葉ですが、「どうしようもない現実に対しての諦念」というような意味合いがあったはずです。
取り敢えずの表面的な問題は解決したように思えるけれども、実は根本的には解決されていない、あるいは解決が先送りになってしまっている……そうした状況が作中で幾度も描かれますが、そういう時に「沈黙」という言葉が出てくるのです。

だから、対になる「爆音」がまだ残っているんだな、と期待が持て、その「爆音」こそが最終章だったのです。
そうした意味では、実は結構凝った作りになっている、と云ってもいいと思いますし、章が進むにつれテーマが深くなっていく、というのは王道的でもあり、安心感が持てるものでした。


作品の中には、色々なテーマが入り込んでいるのですが、主人公を軸にして考えて、オーソドックスに「主人公の成長物語」と捉えていくことも勿論可能です。
最終章以前の主人公は、ラストに至っても「社会というシステムの中に呑み込まれていく個人」という枠の中に収まっているんですよね。

「大人になる」って色んな考え方、捉え方があるわけですけど、皮肉な見方をすれば「物わかりが良くなる」というか、「割り切りが出来るようになる」とか、そういう部分ってありますよね。
先に述べた「諦念」とも一脈通じてるわけで、そこで、「俺は俺のやりたいようにやる」とか、「自分が今感じている気持ちに素直でいたい」とか、少年漫画の主人公宜しく頑張っちゃうと、「青臭い」とか「子供っぽい」とか、はたまた「現実が見えてない」とか云われちゃう。

で、そういう「気持ち」だけでは何も解決しない、というのもまた事実なんです。自分の出来る事/出来ない事に境界線を設けないと、自分がボロボロになっちゃいます。
けど、ゲームの中でも「物わかりの良い大人」になってしまうっていうのも、またつまらない部分ってきっとあります(逆の方向性で、そういうのに主人公が呑み込まれていく作品っていうのも、また面白そうな気もするんですが)。

最終章の最後の最後では、主人公も頑張ってくれるんです。
物語の主人公らしくなる、と言い換えてもいいのですが、それ以前は、「ヒロイン」こそが主役に相応しい描かれ方をしているんですよね。
結局主人公には、何の力もなく、女の子達の闘いにただ巻き込まれていく感じ。結局、この物語世界を動かしているのは、メインとなる女の子達だけなのだ、と思わず云いたくなってしまうような……。

そんな主人公ですが、最後の最後で主人公らしくなる。
それを「成長」と捉えていいのかどうか、という問題もありますが、少なくとも「ノベルゲームの主人公らしく」なる、というのは間違いないでしょう。


それはさておき、この無力な主人公に対しても、私は「なんか主人公っぽくないなぁ」なんて思っていました。
実際に行動を起こし、世界を変えていこうとするのはヒロインであり、謂わば、主人公は「優しさはあれど、無力な市井の一人」だったわけで、だったからです。

よくあるタイプのノベルゲームでは、主人公はバカだけども、気持ちだけは熱い。
で、ヒロインの女の子は、何かをその心の中に抱え込んでいるけど、行動を起こすのを躊躇っている。そこに主人公が持ち前の熱さで彼女を感化させ、二人は幸せに……みたいなのってありますよね。

この男女を逆にしたパターンが、本作の主人公とヒロインに近いのかな、と考えたら、それはそれで「アリ」なんじゃないかな、逆にその主人公の「普通さ」が、ヒロインの癒しになって、間接的に手助けしているんじゃないかな、なんて考えるようになりました。

ですので、「主人公があまりにヘタレ」という批判は、本作に対してあると思うのですが、私は段々その部分は気にならなくなっていったのでした。


ただし、物語が進むにつれて、テーマがブレて分かりにくくなっていったというのは恐らく多くの方が感じると思います。
物語の冒頭部、前半部ではやはり「民族問題」が押し出されていき、「共存」の方法を探るというか、そういうテーマを持って進んでいたはずが、途中で『ガンスリンガーガール』的な話と混ざっていき……焦点がボケてしまったような部分があります。

特に、ストーリーのターニングポイントとなる事件の真相で、「え?」と思わず口にしてしまいましたw
これは、好意的に考えるならば、「現実の複雑さを描こうとした」のかもしれません。現実はストーリーの思惑を越えて、意外な所から意外なことが起こるんだ、というメッセージを感じ取ることも出来るわけですよね。

ただ、段々と複雑になっていくストーリーで、拠って立つ足場のようなものが、現実と同じような不安定感を持っていると、読みづらさを感じてしまうし、逆にストーリーの焦点が分かりにくくなってしまうこともあります。
そうしたものを、分かりやすく納得のいく形で描ける人がいたら、その人は物凄い上手な描き手なんだろうな、とも。


長々と私自身も纏まりのないまま書いてきましたが、向き合い甲斐のある作品だと思います。
今も私は「こっちとこっちが和解して共存の道を歩むのはいいのだけど、その為に共通の敵、別のターゲットを策定しなきゃいけないっていうのは、なんかなぁ」なんて、グジュグジュ考えていますw

本作の主張に賛同する人もいるだろうし、逆に「ただの理想論じゃねーか!」と寧ろ、怒ってしまう人だって多いと思うのです。
それでも、この作品が、現代社会を考えるにあたって、一つの機会を提供してくれる、というのも亦間違いない事実であって、本作が同人ゲームたる所以なのでしょう。

社会派で、重めのテーマを持った作品です。
合う/合わないは物凄く別れるとおもいますが、無心に向き合ってみる価値はある、そんな作品だと思いますよ。



それでは、また。


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# by s-kuzumi | 2015-03-22 16:05 | サウンドノベル | Comments(0)
2015年 03月 09日

フリーサウンドノベルレビュー 『一生に一度の、』

フリーサウンドノベルレビュー 『一生に一度の、』_b0110969_19562062.jpg

今日の副題 「神様らしさが決め手です」

※吟醸
ジャンル:神様と生活するノベル(?)
プレイ時間:1時間ちょいといった所。
その他:選択肢なし、一本道。
システム:NScripter

制作年:2015/2/23(ふりーむ登録)
容量(圧縮時):98.0MB




道玄斎です、こんばんは。
今日はタイトルがとても素敵だったので、ダウンロードしておいた作品をプレイ。
勿論、タイトルだけでなく、作品内容もとっても良いものでした。というわけで、今回は「都築製作所」さんの『一生に一度の、』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・神様のキャラクターが非常に良かった(後述)。

・伏線などはあるが、基本、素直な作りでそれ故の良さが十全に発揮されていた。


気になった点

・げんこつシーンが多少くどいかも。

・ワイド画面でなくても良かったような……。


ストーリーは今回は私が簡単にまとめておきましょう。
会社をクビになり、ニート生活を送るも、藤吉郎は、今、運気の絶好調にあった。
賭け事では大勝ちし、高級な弁当をタダでもらう……。
人里離れた場所で、その弁当をビールと共に楽しもうとした瞬間、藤吉郎は、そこにあった祠を壊してしまう。そして、その「祠の神様」を自称する女の子が現れ、「祠を建て直せ!」と要求してくるのだが……。

大体、このようなストーリーになっています。


久々に、物凄くグッとくる作品をプレイしたように思います。
冒頭でも書きましたが、何と云ってもタイトルが既に素敵なんですよね。『一生に一度の、』なんて、中々出てくるタイトルじゃありません。
或る意味では、シンプルなタイトルワークでもあると思うのですが、「、」と、少し含みを持たせている所とか、「一生に一度」という言葉の持つ力強さが、プレイする前から期待感を煽ってくれます。

作品内容の方も、とっても素敵で、私好みのものでした。
序盤は比較的賑やかというか、ギャグっぽいテイストですが、徐々にシリアスになっていく、というような流れもしっかりしていますし、強烈で刺激的などんでん返しこそないものの、伏線が張られ、それがラストにちゃんと結びつく作りは、本作が丁寧に作られた事を感じさせます。

又、一時間ちょい(私がプレイした所、一時間15分でした)という尺も良かったですね。
変な引き延ばしや、よどみがなく、すんなりと読了出来てしまいます。
これは、「祠を建て直す」という目的が明確に示されているからでしょう。この目的の遂行に沿う形で、藤吉郎、そして「神様」との同居生活があり、その果てに「一生に一度の願いを叶える」という神様の約束が示されるわけです。


こうした物語の仕掛けも良かったのですが、何より、私が気に入ってしまったのは、神様のキャラクターそのものです。
外見が可愛い、とかそういうのも勿論ありますが、印象的なセリフ(これが後々効いてくるんです)もありますし、藤吉郎とバカをやったりしつつも、そこに「神様らしさ」を凄く感じさせてくれる、そこが何より良かったと思います。

作品のキモとも云える一生に一度の願いに関しても、それがどんな利己的なものであれ受け入れる。
神様という、人間よりも(まぁ、表現するのが難しいのですが)「上」の存在であるにも関わらず、上から目線ではなく、「神様としての目線」に立ち続けるというか。
そういう、一本筋が通った、人間っぽくても、やはり人間とは違う神様のスタンスがこそが、彼女の本当の魅力だったのではないか、と愚案する次第です。


後半からラストに掛けて、それまでに張られていた伏線が回収されていったりと、物語的に展開があるわけですが、それは、奇を衒ったようなものではなく、寧ろ或る意味では予定調和的とも云えるものになっています。
そして、私は個人的に、その予定調和が非常に好ましく感じたのです。

ノベルゲームも段々と進化してくると、所謂(定義は非常に難しいですが)オーソドックスなシナリオに対する抵抗感というのも生まれてきます。
プレイする側からすれば「またこのパターンかよ」という反応だったり、作る側に立てば「このシナリオで受け入れてもらえるだろうか?」という不安が生まれる、とでも云いましょうか。
故にそこに、ヒネリを加えるという事が行われるわけですけど、それもまたいつしか飽和していき、限りなくtoo muchになっていく……。

けど、オーソドックスなものも、ヒネリを加えたものも実は表裏一体なのです。
オーソドックスな作品という基盤があるからこそ、ヒネリを効かせたものが存在感を持つし、逆も又然り、というわけです。

それに、ノベルゲームに限りませんが、ヒネリの効いたものばかり読んだり見ていたりすると、それはそれで飽きてしまうのです。
そうした時、オーソドックスの良さが再認識されたりする事が多いですね。オーソドックスというか、そのオーソドックスさを作った元祖的なものというか。そうしたオーソドックスではあれど「力のある」物語を皆が求める時期っていうのもあるんじゃないでしょうか。

……と、随分脱線してしまいましたが、本作の場合、私は変にひねったものよりも、断然、現在の結末の方がいいと思ってます。例えそれが予定調和的なものであっても、丁寧に積み重ねられた物語は、ちゃんと感動を与えてくれるのです。


気になった点に関しては、先に挙げた通りなのですが、割と、神様と藤吉郎がじゃれ合うというか、そういうシーンが多くて、しょっちゅう藤吉郎は余計な一言を口に出して、神様に殴られてますw
中盤くらいまで、二人が会話すれば殴られる、という状況が続くわけで、ちょっとくどいかも、と思ったのが一点。

もう一点は、ワイド画面の問題です。
ワイド画面を採用しているのですが、スクリーンショットをご覧頂ければ分かる通り、メッセージウインドウはその「枠」と比してかなり小さいですし、そのワイドさが物語に寄与している部分は、あまり無かったんじゃないかな、と。それならば普通に800×600でも良かったような……といういつもの私の主張ですw


つらつらと書いてきましたが、こういう作品に対しては、自分の考えたことや、その良さを言葉を尽くして書こうとすればするほど、その本質から離れていってしまうような、そんなもどかしさを感じる事があります。
ひとへに、私の文章能力の稚拙さに拠るものですが、「考えるんじゃない、感じるんだ」というようなタイプの作品もやはり、あると思いますし、本作はまさにそれだとも思っています。

とってもお勧めの作品です。
一応、吟醸ではあるのですが、もう少し考えて、大吟醸にするかもしれません。



それでは、また。


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# by s-kuzumi | 2015-03-09 19:56 | サウンドノベル | Comments(2)
2015年 03月 06日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『昼の国、夜の国』

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『昼の国、夜の国』_b0110969_19305991.jpg

道玄斎です、こんばんは。
今日はリハビリがてらに、気になっていた作品をプレイしてみました。
尺こそ15分程度ですが、15分という尺の中に考える材料というか、言い換えるならば、テーマがギュッとつまっていた、そんな印象があります。
というわけで、今回は「晴れ時々グラタン」さんの『昼の国、夜の国』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。


一言で云ってしまえば「荘子的」というか、或いはSFに詳しい方なら『高い城の男』的な世界です。
それ故、舞台は西洋なのですが、どこか微かに東洋的なミステリアスさのある作品になっていたんじゃないかと思います。

冒頭部で語られる主人公の状況は、「妻の忘れ形見の娘が死んでしまった」、というもの。
主人公はこれから一人で生きていかなければいけないわけです。

更に、主人公を気遣ってくれる友人とのやり取りを通して、主人公が「不思議な夢を見ている」という事が明かされます。

タイトルに顕著なように、ここに「二つの世界」が現出する事になるわけです。
つまり、「娘が死んでしまった世界」、そして「娘が生きている世界」です。それをそれぞれ「昼の国」「夜の国」としている、という構造です。


この作品の面白さの一つは、その「昼の世界」「夜の世界」に主従関係が見られないところにあるんじゃないかな? と思いました。
普通、こうした云ってしまえば「パラレルワールド」があるような作品って、割とそれと分かるような感じで「基本の世界」というか、「主」の世界があって、それとは別の「もう一つの世界」(=従の世界)がある、という語られ方をするモノが多いのですが、本作の場合、読み進めていく内に、どっちがどっちなのか、分からなくなってしまうようなところがあるのです。

勿論、冒頭で示された、娘が死んでしまって呆然としている、という状況あってこその物語の展開ですから、その意味で、「昼の世界」が「主」の世界なんだ、と云う事も出来るわけです。
しかし、読み進める内に、そうした最初の状況設定そのものも、何だかあやふやで捉え所がないように思えてくるから不思議です。


また、ラストが他のパラレルワールドモノ(と云ってもいいのかどうか、少し躊躇いはありますが……)とは、一味違っていたという点も大事でしょう。
それぞれの世界の不確かさというか不安定さを以て、「どっちが本当の世界なんだろうね?」と、問い掛けを残しつつ、その余韻を楽しませる、という作品が多いような気がしているのですが、本作はそのタイプではありません。

また、「従の世界」だと思っていた世界こそが実は「主の世界」だったのだ! みたいな『マトリックス』タイプとも違います。

もしかしたら、この物語には或る種の寓意があって、「選択する」ことの意味のようなものに焦点があるのかもしれませんね。流石にちょっと深読みかもですがw


というわけで、小粒ながらもちょっと考えさせられる良い作品でした。
余談ながら、私はこの作者さんの描く「女性キャラのクールな目元」が大好きですw 冷めた目をしつつも、そこに何かしらの情念のようなものが見え隠れするというか、そういう魅力がありますよね。

荘子やらパラレルワールドやらを知っていれば、より一層楽しめる、というか考える事が出来そうな作品です。尺は小粒ですから、気になった方は是非プレイしてみて下さい。



それでは、また。



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# by s-kuzumi | 2015-03-06 19:31 | 日々之雑記 | Comments(0)
2015年 03月 05日

フリーサウンドノベル関係の雑記 箸休めvol.69

道玄斎です、こんにちは。
年度末ということで、色々と処理しなければいけない事も多いんだけど、それも大分片付いてきたよ。
もう少しで、じっくりゲームに向き合えそうなそんな気がするね。

ゲーム界隈では、やっぱり新作は毎日のようにリリースされていて、中にはタイトルだけ見て「お!」と思うようなものがあったりするから、一応ダウンロードだけはしているんだ。
そうそう、ゲーム界隈というと大袈裟かもしれないけど、フリーのノベルゲーム仲間の嬉しい話なんかも、ちらっと風の噂で聞いたりしているから(おめでとうを伝えたいんだけど、なんか急にメールするのもなぁ、なんて思って尻込みしちゃってるんだ。心当たりのある方は是非連絡下さいw)、春に向けていい事も増えてきたね。


さてさて、前回の箸休めでお話した「ファンタジー系の作品を作ろうとしているヤツ」が、ちょこちょことシナリオを書いているようなんだけど、またしても疑問や問題点が出てきたらしいんだよ。
俺も、そうしたニーズ(?)に応えるべく、ファンタジーの古典たる『指輪物語』を読み直したりもしたんだ。ただ、今回の疑問は、『指輪物語』からじゃ回答出来ないようなものでねぇ……。



■その名はギルド

「やっと、第三話の執筆にとりかかれますよ!」

「それはおめでとう。全何話か分からないんだけど、三話となると今までと少し話のパターンを変えた方がいいかもな」

「そう! そこなんですよ! 今までのシナリオは洞窟に入って、化け物を倒してお宝を頂く、という鉄板ネタだったんですけど、ここらへんで、舞台を街に移そうと思うんです」

「つまりシティーアドベンチャーってヤツだよな。シティーアドベンチャーは化け物退治と違って、人間の思惑とかそういうのが絡んでくる事が多いから、より『ドラマ性のある』シナリオになるのが一般的だよ」

「わたしもファンタジーのラノベとか、ファンタジーのガイドブックとかを見て勉強したんですよ! 戦闘というより情報収集だったり、上手い立ち回りが大事なんですよね」

「一般的にはそうだよ。だからこそ、単純な殴り合いじゃ出せない深みがあるんだよ」

「ですから、戦士じゃなくむしろシーフ(盗賊)をフィーチャーしていこうかと思ってるんです」

「シティーアドベンチャーは或る意味、シーフの独壇場みたいなとこはあるよな。それにシーフって裏の世界に通じてるっていうか、ダーティなイメージもあるじゃない? だからそういう属性を絡めた渋めのシナリオが出来るな」

「渋めのシナリオいいですねぇ……。第三話は『渋さ』がコンセプトですし!」


ファンタジーと言っても、毎度毎度ダンジョンに潜る必要はないんだ。
ダンジョンだけじゃなく、街での冒険(シティアドベンチャー)や、ジャングル・森林・砂漠など野外での冒険(ウィルダネスアドベンチャー)を組み合わせていった方が、バリエーションがあって面白いよ。
シティーアドベンチャーなら、「渋さ」も出せるし、ウィルダネスアドベンチャーなら「自然の驚異」だったりの演出が出来る。

それに、冒険での報酬も、ダンジョンなら「怪物が隠し持っていたお宝」というケースが多いけど、例えばシティーアドベンチャーを上手く解決すれば、街の住人や有力者との「コネ」が手に入ったり、ウィルダネスアドベンチャーなら「自然の中で生き抜く知恵」とでも言えばいいかな? そういうものも手に入る。
目にはさやかに見えねども、こういう報酬もとっても大事なものなんだ。こうした報酬が、次のシナリオに繋がっていく事も多いしね。
それに、キャラクター達の意外な一面を描写する絶好の機会でもあるんだ。

ファンタジーと言えばダンジョン、というのも、まぁ間違いじゃないんだけど、冒険の舞台となる場所を上手く切り替えると、作品そのものにも深みが増すよ。


「ん? そこまで方向性が決まってるなら、何も迷う事ないじゃない。何が問題なのよ?」

「ああ、そうだった! 渋めのシナリオでシーフを活かすって方向性はあるんです。けど、そこでどうしても分からない事が出てきたんです」

「というと?」

「ええ、それは『ギルド』なんです」



■ギルドって何だ?

「ギルドねぇ……。シーフとなると『盗賊ギルド』のことだよな」

「ええ、まさにそれです。っていうか、そもそもギルドってのもなんかイメージしづらいんですよね」


ギルドっていうのは、ご存じの通り、「職能集団」というか「職能集団の互助組織」というか、そういうヤツだよ。社会科の教科書にも書いてあるよね。
けど、確かにイメージしづらいよねぇ。ファンタジーならではの「ギルド」なんてものもあるし、意外と一筋縄じゃいかない問題かもね。


「ファンタジーならではのギルド? それはどんなヤツです?」

「ああ、だから『盗賊ギルド』なんかもその一つだよ。あとは『冒険者ギルド』なんてのが設定されてる世界もあるよ」

「じゃあ、一般的なギルドは?」

「それこそ無限にあるよ。『靴ギルド』とか『家具ギルド』とか『鍛冶ギルド』とか。そういえば『石工ギルド』が秘密結社として有名な『フリーメーソン』の母体になったなんて話、聞いたことあるだろ?」

「ああ、そうですね。って、問題は盗賊ギルドですよ!」

「そうだった……。で、盗賊ギルドの何が分からないのよ?」

「なんていうか……何をやってる組織なのか、なんでそこにシーフがいくと情報が手に入るのか、犯罪組織なのに何で存在出来てるのか、とかいっぱいありますよ」


確かに、そこはファンタジーの大きな謎の一つだよね。
「ファンタジー世界にはとにもかくにも『盗賊ギルド』があるんだ!」という、お約束として処理してしまってもいいんだけど、少し突っ込んで考えていくことにしよう。


「よし、じゃあ、まずは、普通のギルドから考えていこうよ」

「お願いします」

「俺の持ってるファンタジーの解説本には、ギルドは『職能集団』だけじゃなくて『専門学校』的な側面もあるんだ、って書いてあるね」

「というと?」

「だって、例えばどのギルドでもそうなんだけど、親方がいて、弟子を育ててるわけでしょ? で、弟子が一人前になったら『卒業制作』をさせるんだよ。で、親方達がそれを審査して基準に達していたら、晴れて合格、君も独り立ちだ! って事になる」

「あっ、なるほど。確かに専門学校的ですね」


普段は親方の下っ端として、雑用をしたり、或る作業工程だけを延々とやらされてる弟子なんだけど、独り立ちの機会が与えられてて、それにパスして自分の店を持てるようになったりするんだ。
そして、そいつも年季が入ってくると親方として弟子をとっていく、というわけだよ。


「職人の世界ですねぇ」

「ああ、まさにそういう認識でいいんじゃないの? 職人の徒弟制度がギルドの一つの教育機関としての側面だよね」

「じゃあ、職能集団ってのは?」

「簡単に言うと、『値段の取り決め』をしたり、『よそ者の排除』を行ったりするんだ」

「んー、値段の取り決めは分かりますよ。組合が決めた値段でそれぞれのモノを販売するって事でしょ? けど、よそ者の排除っていうのは良く分からないなぁ」

「つまりさ、みんなで決めた値段があるわけだよね? けど、ある日違う町から、激安でしかもデザインも悪くない商品を作るヤツがやってきて、店を開いたら……?」

「あっ、それはマズイ」

「うん。だから、そういうよそ者に対して『俺たちのシマで仕事すんじゃねぇ!』ってな具合に、そいつを追っ払って、ギルドのメンバーの利益を守るんだ」

「なるほど。けど、なんか閉鎖的ですねぇ」

「それが中世的ファンタジーの基本的な商売の形態なんだよ」


値段の一定化、よそ者の排除によって、「自由競争」を妨げている、というのがギルドの一面でもあるんだ。
近代になるにつれ、ギルドは解体されていき、自由競争が始まり、それが現代まで続いているんだよ。



■盗賊ギルドに関する一考察

「一般的なギルドについて分かりました。じゃあ、盗賊ギルドは?」

「基本的な概念は同じだと思うな。つまり、幹部は他のギルドで言う所の『親方』なんだよ。それで、まだ未熟な『弟子』を育成するんだ。で、独り立ちした盗賊に関しては、仕事で得た金銭から一定額を徴収してギルド全体にそれを還元する。ギルドの貢献した盗賊は幹部となり、新たな弟子を育成する……そんなイメージじゃないかな」

「ああ、分かりやすいですね。あっ、じゃあ冒険者としてのシーフってのは、まだ弟子の段階なんですかね?」

「いや、『一応独り立ちした』盗賊なんじゃないかな。基礎的な技術は教えてもらって、あとは実践で腕を磨いていく、という段階じゃないかね。でなきゃ仕事も出来ないだろうし」

「社会人一年目みたいなイメージですかね」

「冒険したての頃はね。けど、数々の冒険を通して腕前もあがっていくと、ギルドの中堅どころになったり、あるいは幹部になったりもするんだろうね。そういうシチュエーションでもシナリオが出来るな」

「それも渋いシナリオだなぁ!」


蛇足かもしれないけど、シーフは盗賊ギルドに所属しているというのが一般的でしょ。俺は、シーフは冒険から帰ってきたらそこでの報酬を納めるのと同時に、自分が経験したトラップとか、鍵穴とか、或いは自分が行った街の情報なんかもギルドに提供してるんじゃないかな、って想像してるんだ。

そうした個々のシーフの貢献があって、ギルドの基部を支えているってイメージかな。そんな事を書いてあるファンタジーのラノベや、ガイドブックはないんだけど、ファンタジーだもの、そういう想像力を使ってもいいんじゃないかな。


「ギルドに貢献するわけですね」

「場合によっては新人教育を任される事もあるだろうし、自分自身も最新の技術をそこで学んだりもするんじゃないかねぇ」

「互助組織だっていうのがしっくりきますね。けど、まだ最大の疑問が……」

「ん?」

「盗みって非合法行為ですよね。普通のギルドは合法活動だから存在出来るのは分かりますよ。けど、盗賊ギルドみたいな非合法組織は、なんで取り締まられないんだろう……」

「ああ、それに関しては、俺は暴力団をイメージしてるんだ」

「え!? 暴力団?」

「だって、暴力団って○○組とか○○会とかって形で、みんな知ってるでしょ? 住所や電話番号まで分かる。で、よからぬ活動をしている事は間違いないわけなんだけど、警察は暴力団を解体しないじゃないか」

「確かに……」

「そりゃ、よっぽどハッキリとした悪事の証拠があったり、事件が起きたりしたら逮捕者が出たりするけど、基本的に暗にその存在を警察も認めてるんだよ」

「ふーむ……つまり、みんなその存在を知っていて、お上だって当然知っている。けど、共存しているというわけですね。確かに盗賊ギルド的だ……」

「勿論、細部は違うんだろうけど、その存在の全体的イメージとしては、かなり近いんじゃないかな」

「やっぱり、盗賊ギルドはダーティーな雰囲気がありますねぇ。こりゃ渋いシナリオになるぞ……!」

「ところで、君のシーフのキャラクターってどんなヤツなの?」

「よくぞ聞いてくれました! ハーフエルフの女の子で年齢は200歳。だけど見た目は15歳くらいにしか見えないんです。で、ちょっぴり露出度の高い革鎧を着てて、スカートは膝上20センチくらいですよ! 小首をかしげるのがクセで、無邪気な可愛さがあるんです!」

「…………それ、渋くなるかなぁ……」

「…………」

「…………」



というわけで、今回のお話はこれでおしまいだよ。
ファンタジーに突っ込んでいくのも面白いんだけど、そろそろノベルゲームの方もやらなくちゃ!
けど、たまにメールをもらうから、これからも不定期でこの手のシリーズもやっていくつもりだよ。


それじゃ、またね。

# by s-kuzumi | 2015-03-05 16:08 | 日々之雑記 | Comments(0)
2015年 02月 11日

なんてことない日々之雑記vol.392

道玄斎です、こんにちは。

またしても間が随分と空いてしまいました。
今日は、例によってお気楽雑記でお茶濁しです。



■年度末のラストスパート

というわけで、年末・年始が凄い忙しかったわけですけれども、その忙しさはもうちょっと続きそうです。
三月になれば、かなり楽になるので、そこまで頑張りたいですねぇ。

やっぱり、年度末というのは忙しくて、色んな行事とか、処理しなければいけない事が山積みです。私はヘタレなので、キャパオーバーになると「やってられるかーっ!」と、暴れる傾向があるんですけど、今年はそれも少なめw

上手くペースを配分したり、厭な気持ちを上手く誤魔化したり……歳を取るってそういうことなのかもしれませんw



■休日探検隊

以前、書いたような気もしますが、私はお休みの日になると「自然」が恋しくなってしまって、日帰りで行けるようなアウトドアに繰り出します。

休日アドベンチャーと称して、山に登ったり、遺跡を見に行ったり、森に分け入ったりするわけですけど、中々いいもんですよ。

特に、夕方の森、竹林なんかは、独特の雰囲気があって凄い好きです。
森や竹林ですから、基本的に薄暗いんです。けど、夕方になると柔らかい光がスッと入ってきて、いつまでも佇んでいたくなるような、なんかセンチメンタルな気持ちになってきます。

そこで、ボーッと佇んだり、座れるようなスペースがあれば、しばし腰を下ろして、その雰囲気をひたすら楽しむ。そんな事をしていると、心が穏やかになってきますねぇ……。

そして、名残を惜しみつつ森から出ると、やっぱり凄くリフレッシュされた感があって、単純に趣味として以上の効果というか、そういうのがある事をヒシヒシと感じます。

事前の調査で、割と人の手が入っているような所だと分かっているのならば、ナイフの類は持っていかない事が多いですね。
逆に、本当に「人が来ない森です」「誰も来ないけど竹林です」と言った所だと、ナイフは必須です。

要するに道があるようで無いわけですから、歩こうとすると前後左右から、尖った草なんかが身体に突き刺さってきますし、一番厄介なのは、顔にそれらがぶつかる、という事です。目に尖った草が入ったら一大事でしょ?

なので、そういう雑草を切り払うのに、小振りのナイフを一本持っていくようにしています。
あんまり大仰なナイフを持っていっても仕方ないですから、アウトドアに調和するような、そういうものを選択しています。

本当にアウトドアでは、刃物が一本あると便利ですよ。
くだものの皮を剥いたり、邪魔な木や草を払ったり、魚をさばいたり、焚き火をする時(近年、地面に直に焚き火をするのは禁止な所が増えてきましたが)にも役立ちます。


あー、そうそう。
世に流布しているナイフについて、一つ不満があったんだった。

刃とかね、そういうのはあまり気にならないんですけど、「鞘」が気になるケースが多いです。
何が良くないのかっていうと、例えば、左腰にナイフをぶらさげるとしますよね。するとストラップの位置によって「太刀を佩く」スタイルになっちゃうんです。

つまり、刃が下を向く形で収納されちゃうんですよね。
それ、凄い使いにくくないですか?

私の理想は、「左腰にナイフをぶら下げると、刃が上向き、つまり『打ち刀』スタイルになる」そういう鞘です。
そっちの方がナイフを取り出しやすいし、日本人には合ってるんじゃないかなって思います。

国内のナイフメーカーも、そこらへんで日本人にとっての使いやすさを追求して欲しいなぁ、なんて。
まぁ、レザークラフトなんかが出来れば、自分の理想の鞘も作れるんでしょうけど、私、不器用なのでw



……と、軽い近況報告とどうでもいい雑記でしたw
けど、ホント、近所の裏山みたいな所でもいいですから、精神的に疲れた時にでも、是非行ってみて下さい。癒されること請け合いですよ!!



それでは、また。

# by s-kuzumi | 2015-02-11 14:25 | 日々之雑記 | Comments(2)