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久住女中本舗

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2015年 03月 05日

フリーサウンドノベル関係の雑記 箸休めvol.69

道玄斎です、こんにちは。
年度末ということで、色々と処理しなければいけない事も多いんだけど、それも大分片付いてきたよ。
もう少しで、じっくりゲームに向き合えそうなそんな気がするね。

ゲーム界隈では、やっぱり新作は毎日のようにリリースされていて、中にはタイトルだけ見て「お!」と思うようなものがあったりするから、一応ダウンロードだけはしているんだ。
そうそう、ゲーム界隈というと大袈裟かもしれないけど、フリーのノベルゲーム仲間の嬉しい話なんかも、ちらっと風の噂で聞いたりしているから(おめでとうを伝えたいんだけど、なんか急にメールするのもなぁ、なんて思って尻込みしちゃってるんだ。心当たりのある方は是非連絡下さいw)、春に向けていい事も増えてきたね。


さてさて、前回の箸休めでお話した「ファンタジー系の作品を作ろうとしているヤツ」が、ちょこちょことシナリオを書いているようなんだけど、またしても疑問や問題点が出てきたらしいんだよ。
俺も、そうしたニーズ(?)に応えるべく、ファンタジーの古典たる『指輪物語』を読み直したりもしたんだ。ただ、今回の疑問は、『指輪物語』からじゃ回答出来ないようなものでねぇ……。



■その名はギルド

「やっと、第三話の執筆にとりかかれますよ!」

「それはおめでとう。全何話か分からないんだけど、三話となると今までと少し話のパターンを変えた方がいいかもな」

「そう! そこなんですよ! 今までのシナリオは洞窟に入って、化け物を倒してお宝を頂く、という鉄板ネタだったんですけど、ここらへんで、舞台を街に移そうと思うんです」

「つまりシティーアドベンチャーってヤツだよな。シティーアドベンチャーは化け物退治と違って、人間の思惑とかそういうのが絡んでくる事が多いから、より『ドラマ性のある』シナリオになるのが一般的だよ」

「わたしもファンタジーのラノベとか、ファンタジーのガイドブックとかを見て勉強したんですよ! 戦闘というより情報収集だったり、上手い立ち回りが大事なんですよね」

「一般的にはそうだよ。だからこそ、単純な殴り合いじゃ出せない深みがあるんだよ」

「ですから、戦士じゃなくむしろシーフ(盗賊)をフィーチャーしていこうかと思ってるんです」

「シティーアドベンチャーは或る意味、シーフの独壇場みたいなとこはあるよな。それにシーフって裏の世界に通じてるっていうか、ダーティなイメージもあるじゃない? だからそういう属性を絡めた渋めのシナリオが出来るな」

「渋めのシナリオいいですねぇ……。第三話は『渋さ』がコンセプトですし!」


ファンタジーと言っても、毎度毎度ダンジョンに潜る必要はないんだ。
ダンジョンだけじゃなく、街での冒険(シティアドベンチャー)や、ジャングル・森林・砂漠など野外での冒険(ウィルダネスアドベンチャー)を組み合わせていった方が、バリエーションがあって面白いよ。
シティーアドベンチャーなら、「渋さ」も出せるし、ウィルダネスアドベンチャーなら「自然の驚異」だったりの演出が出来る。

それに、冒険での報酬も、ダンジョンなら「怪物が隠し持っていたお宝」というケースが多いけど、例えばシティーアドベンチャーを上手く解決すれば、街の住人や有力者との「コネ」が手に入ったり、ウィルダネスアドベンチャーなら「自然の中で生き抜く知恵」とでも言えばいいかな? そういうものも手に入る。
目にはさやかに見えねども、こういう報酬もとっても大事なものなんだ。こうした報酬が、次のシナリオに繋がっていく事も多いしね。
それに、キャラクター達の意外な一面を描写する絶好の機会でもあるんだ。

ファンタジーと言えばダンジョン、というのも、まぁ間違いじゃないんだけど、冒険の舞台となる場所を上手く切り替えると、作品そのものにも深みが増すよ。


「ん? そこまで方向性が決まってるなら、何も迷う事ないじゃない。何が問題なのよ?」

「ああ、そうだった! 渋めのシナリオでシーフを活かすって方向性はあるんです。けど、そこでどうしても分からない事が出てきたんです」

「というと?」

「ええ、それは『ギルド』なんです」



■ギルドって何だ?

「ギルドねぇ……。シーフとなると『盗賊ギルド』のことだよな」

「ええ、まさにそれです。っていうか、そもそもギルドってのもなんかイメージしづらいんですよね」


ギルドっていうのは、ご存じの通り、「職能集団」というか「職能集団の互助組織」というか、そういうヤツだよ。社会科の教科書にも書いてあるよね。
けど、確かにイメージしづらいよねぇ。ファンタジーならではの「ギルド」なんてものもあるし、意外と一筋縄じゃいかない問題かもね。


「ファンタジーならではのギルド? それはどんなヤツです?」

「ああ、だから『盗賊ギルド』なんかもその一つだよ。あとは『冒険者ギルド』なんてのが設定されてる世界もあるよ」

「じゃあ、一般的なギルドは?」

「それこそ無限にあるよ。『靴ギルド』とか『家具ギルド』とか『鍛冶ギルド』とか。そういえば『石工ギルド』が秘密結社として有名な『フリーメーソン』の母体になったなんて話、聞いたことあるだろ?」

「ああ、そうですね。って、問題は盗賊ギルドですよ!」

「そうだった……。で、盗賊ギルドの何が分からないのよ?」

「なんていうか……何をやってる組織なのか、なんでそこにシーフがいくと情報が手に入るのか、犯罪組織なのに何で存在出来てるのか、とかいっぱいありますよ」


確かに、そこはファンタジーの大きな謎の一つだよね。
「ファンタジー世界にはとにもかくにも『盗賊ギルド』があるんだ!」という、お約束として処理してしまってもいいんだけど、少し突っ込んで考えていくことにしよう。


「よし、じゃあ、まずは、普通のギルドから考えていこうよ」

「お願いします」

「俺の持ってるファンタジーの解説本には、ギルドは『職能集団』だけじゃなくて『専門学校』的な側面もあるんだ、って書いてあるね」

「というと?」

「だって、例えばどのギルドでもそうなんだけど、親方がいて、弟子を育ててるわけでしょ? で、弟子が一人前になったら『卒業制作』をさせるんだよ。で、親方達がそれを審査して基準に達していたら、晴れて合格、君も独り立ちだ! って事になる」

「あっ、なるほど。確かに専門学校的ですね」


普段は親方の下っ端として、雑用をしたり、或る作業工程だけを延々とやらされてる弟子なんだけど、独り立ちの機会が与えられてて、それにパスして自分の店を持てるようになったりするんだ。
そして、そいつも年季が入ってくると親方として弟子をとっていく、というわけだよ。


「職人の世界ですねぇ」

「ああ、まさにそういう認識でいいんじゃないの? 職人の徒弟制度がギルドの一つの教育機関としての側面だよね」

「じゃあ、職能集団ってのは?」

「簡単に言うと、『値段の取り決め』をしたり、『よそ者の排除』を行ったりするんだ」

「んー、値段の取り決めは分かりますよ。組合が決めた値段でそれぞれのモノを販売するって事でしょ? けど、よそ者の排除っていうのは良く分からないなぁ」

「つまりさ、みんなで決めた値段があるわけだよね? けど、ある日違う町から、激安でしかもデザインも悪くない商品を作るヤツがやってきて、店を開いたら……?」

「あっ、それはマズイ」

「うん。だから、そういうよそ者に対して『俺たちのシマで仕事すんじゃねぇ!』ってな具合に、そいつを追っ払って、ギルドのメンバーの利益を守るんだ」

「なるほど。けど、なんか閉鎖的ですねぇ」

「それが中世的ファンタジーの基本的な商売の形態なんだよ」


値段の一定化、よそ者の排除によって、「自由競争」を妨げている、というのがギルドの一面でもあるんだ。
近代になるにつれ、ギルドは解体されていき、自由競争が始まり、それが現代まで続いているんだよ。



■盗賊ギルドに関する一考察

「一般的なギルドについて分かりました。じゃあ、盗賊ギルドは?」

「基本的な概念は同じだと思うな。つまり、幹部は他のギルドで言う所の『親方』なんだよ。それで、まだ未熟な『弟子』を育成するんだ。で、独り立ちした盗賊に関しては、仕事で得た金銭から一定額を徴収してギルド全体にそれを還元する。ギルドの貢献した盗賊は幹部となり、新たな弟子を育成する……そんなイメージじゃないかな」

「ああ、分かりやすいですね。あっ、じゃあ冒険者としてのシーフってのは、まだ弟子の段階なんですかね?」

「いや、『一応独り立ちした』盗賊なんじゃないかな。基礎的な技術は教えてもらって、あとは実践で腕を磨いていく、という段階じゃないかね。でなきゃ仕事も出来ないだろうし」

「社会人一年目みたいなイメージですかね」

「冒険したての頃はね。けど、数々の冒険を通して腕前もあがっていくと、ギルドの中堅どころになったり、あるいは幹部になったりもするんだろうね。そういうシチュエーションでもシナリオが出来るな」

「それも渋いシナリオだなぁ!」


蛇足かもしれないけど、シーフは盗賊ギルドに所属しているというのが一般的でしょ。俺は、シーフは冒険から帰ってきたらそこでの報酬を納めるのと同時に、自分が経験したトラップとか、鍵穴とか、或いは自分が行った街の情報なんかもギルドに提供してるんじゃないかな、って想像してるんだ。

そうした個々のシーフの貢献があって、ギルドの基部を支えているってイメージかな。そんな事を書いてあるファンタジーのラノベや、ガイドブックはないんだけど、ファンタジーだもの、そういう想像力を使ってもいいんじゃないかな。


「ギルドに貢献するわけですね」

「場合によっては新人教育を任される事もあるだろうし、自分自身も最新の技術をそこで学んだりもするんじゃないかねぇ」

「互助組織だっていうのがしっくりきますね。けど、まだ最大の疑問が……」

「ん?」

「盗みって非合法行為ですよね。普通のギルドは合法活動だから存在出来るのは分かりますよ。けど、盗賊ギルドみたいな非合法組織は、なんで取り締まられないんだろう……」

「ああ、それに関しては、俺は暴力団をイメージしてるんだ」

「え!? 暴力団?」

「だって、暴力団って○○組とか○○会とかって形で、みんな知ってるでしょ? 住所や電話番号まで分かる。で、よからぬ活動をしている事は間違いないわけなんだけど、警察は暴力団を解体しないじゃないか」

「確かに……」

「そりゃ、よっぽどハッキリとした悪事の証拠があったり、事件が起きたりしたら逮捕者が出たりするけど、基本的に暗にその存在を警察も認めてるんだよ」

「ふーむ……つまり、みんなその存在を知っていて、お上だって当然知っている。けど、共存しているというわけですね。確かに盗賊ギルド的だ……」

「勿論、細部は違うんだろうけど、その存在の全体的イメージとしては、かなり近いんじゃないかな」

「やっぱり、盗賊ギルドはダーティーな雰囲気がありますねぇ。こりゃ渋いシナリオになるぞ……!」

「ところで、君のシーフのキャラクターってどんなヤツなの?」

「よくぞ聞いてくれました! ハーフエルフの女の子で年齢は200歳。だけど見た目は15歳くらいにしか見えないんです。で、ちょっぴり露出度の高い革鎧を着てて、スカートは膝上20センチくらいですよ! 小首をかしげるのがクセで、無邪気な可愛さがあるんです!」

「…………それ、渋くなるかなぁ……」

「…………」

「…………」



というわけで、今回のお話はこれでおしまいだよ。
ファンタジーに突っ込んでいくのも面白いんだけど、そろそろノベルゲームの方もやらなくちゃ!
けど、たまにメールをもらうから、これからも不定期でこの手のシリーズもやっていくつもりだよ。


それじゃ、またね。

# by s-kuzumi | 2015-03-05 16:08 | 日々之雑記 | Comments(0)
2015年 02月 11日

なんてことない日々之雑記vol.392

道玄斎です、こんにちは。

またしても間が随分と空いてしまいました。
今日は、例によってお気楽雑記でお茶濁しです。



■年度末のラストスパート

というわけで、年末・年始が凄い忙しかったわけですけれども、その忙しさはもうちょっと続きそうです。
三月になれば、かなり楽になるので、そこまで頑張りたいですねぇ。

やっぱり、年度末というのは忙しくて、色んな行事とか、処理しなければいけない事が山積みです。私はヘタレなので、キャパオーバーになると「やってられるかーっ!」と、暴れる傾向があるんですけど、今年はそれも少なめw

上手くペースを配分したり、厭な気持ちを上手く誤魔化したり……歳を取るってそういうことなのかもしれませんw



■休日探検隊

以前、書いたような気もしますが、私はお休みの日になると「自然」が恋しくなってしまって、日帰りで行けるようなアウトドアに繰り出します。

休日アドベンチャーと称して、山に登ったり、遺跡を見に行ったり、森に分け入ったりするわけですけど、中々いいもんですよ。

特に、夕方の森、竹林なんかは、独特の雰囲気があって凄い好きです。
森や竹林ですから、基本的に薄暗いんです。けど、夕方になると柔らかい光がスッと入ってきて、いつまでも佇んでいたくなるような、なんかセンチメンタルな気持ちになってきます。

そこで、ボーッと佇んだり、座れるようなスペースがあれば、しばし腰を下ろして、その雰囲気をひたすら楽しむ。そんな事をしていると、心が穏やかになってきますねぇ……。

そして、名残を惜しみつつ森から出ると、やっぱり凄くリフレッシュされた感があって、単純に趣味として以上の効果というか、そういうのがある事をヒシヒシと感じます。

事前の調査で、割と人の手が入っているような所だと分かっているのならば、ナイフの類は持っていかない事が多いですね。
逆に、本当に「人が来ない森です」「誰も来ないけど竹林です」と言った所だと、ナイフは必須です。

要するに道があるようで無いわけですから、歩こうとすると前後左右から、尖った草なんかが身体に突き刺さってきますし、一番厄介なのは、顔にそれらがぶつかる、という事です。目に尖った草が入ったら一大事でしょ?

なので、そういう雑草を切り払うのに、小振りのナイフを一本持っていくようにしています。
あんまり大仰なナイフを持っていっても仕方ないですから、アウトドアに調和するような、そういうものを選択しています。

本当にアウトドアでは、刃物が一本あると便利ですよ。
くだものの皮を剥いたり、邪魔な木や草を払ったり、魚をさばいたり、焚き火をする時(近年、地面に直に焚き火をするのは禁止な所が増えてきましたが)にも役立ちます。


あー、そうそう。
世に流布しているナイフについて、一つ不満があったんだった。

刃とかね、そういうのはあまり気にならないんですけど、「鞘」が気になるケースが多いです。
何が良くないのかっていうと、例えば、左腰にナイフをぶらさげるとしますよね。するとストラップの位置によって「太刀を佩く」スタイルになっちゃうんです。

つまり、刃が下を向く形で収納されちゃうんですよね。
それ、凄い使いにくくないですか?

私の理想は、「左腰にナイフをぶら下げると、刃が上向き、つまり『打ち刀』スタイルになる」そういう鞘です。
そっちの方がナイフを取り出しやすいし、日本人には合ってるんじゃないかなって思います。

国内のナイフメーカーも、そこらへんで日本人にとっての使いやすさを追求して欲しいなぁ、なんて。
まぁ、レザークラフトなんかが出来れば、自分の理想の鞘も作れるんでしょうけど、私、不器用なのでw



……と、軽い近況報告とどうでもいい雑記でしたw
けど、ホント、近所の裏山みたいな所でもいいですから、精神的に疲れた時にでも、是非行ってみて下さい。癒されること請け合いですよ!!



それでは、また。

# by s-kuzumi | 2015-02-11 14:25 | 日々之雑記 | Comments(2)
2015年 01月 10日

フリーサウンドノベルレビュー 『チャイルドポルノ・パンデミック』

フリーサウンドノベルレビュー 『チャイルドポルノ・パンデミック』_b0110969_15455584.jpg

今日の副題 「よく、ふりーむの審査を通ったなぁ……」

ジャンル:チャイルドポルノノベル(?)
プレイ時間:40分程度。
その他:選択肢なし、一本道。15禁。
システム:NScripter

制作年:2014/12/27
容量(圧縮時):95.2MB




道玄斎です、こんにちは。
年末年始の忙しさが、何とか一段落した今日この頃ですが、年末にまんざら知らない仲でもないガムベースさんが、新作をお出しになった、という話を聞きまして、恐る恐るプレイしてみた、というわけです。
というわけで、今回は「チクル妄想工房」さんの『チャイルドポルノ・パンデミック』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・「熱量」をヒシヒシと感じる。

・絵が上手くなくてもモザイクを掛ける事で、立派な「イラスト」にしてしまうなど、工夫アリ。


気になった点

・読了しても、オチの部分が分かりにくく、伝わってくるものが少ない。

ストーリーは、ふりーむの方から引用しておきましょう。
妹と暮らす男が児童ポルノの世界に生きようとする物語です。
選択肢はありません。
プレイ時間は30分~1時間です。
1作目『よみがえる思い出』から続く話です。
なので『よみがえる思い出』を先にプレイされていると、細かい所がわかりやすいかもしれません。
性描写があるので年齢制限は15歳以上。

こんな感じ。
一応、処女作『よみがえる思い出』との連続性があることが書かれているのですが、前作のプレイが「必須」かと云われれば、そんな事はないだろうな、と思います(エピソードが再生産されたり、とか見所はあるんですが)。処女作で敢えて語られなかった「結末」部分が、本作の発端部になっている、という構造ですね。
尤も、『よみがえる思い出』だけではなく、『やがて僕の訪れる公園』との微かな関連性も、亦感じる事が出来るのではないかと思います。


にしても……よくまぁ、ふりーむの審査を通ったなぁ……という気がしますw
直接的な性行描写みたいなものはないのですが、かなり際どいところまで描かれており、人を選ぶ作品である、という事はほぼ間違いなく云えると思います。

それはさておき、昨年末くらいから、創作物に対して「熱量」という言葉を以て、評価する流れがあるな、と何となく感じています。
つまり、その作品なりの巧拙ではなく、そこに込めた作者の「情熱」というか、力の入り具合を一つの評価軸にする、という潮流です。

ちょっと堅めの文学理論なんかでは、「作者」というものを考慮しない、というのが一般的だと思うのですが、「熱量」という概念は、どうしたって作者と結びついてしまいます。
作者というものの存在抜きには、「そこに込めた情熱」=「熱量」は語れないからです。

文学の研究では、作者は死んでいるか、或いは、自分達とは距離のある所にいるわけですから、作者を考慮しない、という策が採れる一方で、フリーのノベルゲームの場合、作者とプレイヤーの垣根が非常に低いんですよね。
作者自らが、サイトやブログ、或いは近年ではツイッターなどで作品について、自身の口からそのテーマを述べたり、という事は良くあります。
私なんかも経験があるのですが、或る作品についてレビューを書いた後で、「あの作者さんは、ブログで○○って云ってたから、あれは違うんじゃない?」と教えて貰ったり、或いは、作者さんその人から、「実はあそこの部分は○○で」とメールを頂く事も屡々あるわけです。

この、作り手と受け手の距離が極端に近い、というのが、フリーのノベルゲームの大きな特徴の一つだと思います。受け手としてゲームを楽しんでいた人が、ある日発奮して作り手に回る、という事もよくありますしね。
ともあれ、本作『チャイルドポルノ・パンデミック』では、作者ガムベースさんの熱量が、厭という程伝わってきます。

この作品が、何をテーマにしているのか? 何を訴えたいのか? そういう事は良く分からないにしても、です。
「良く分からないけど、なんか凄い力が入ってる……」
それが、私の、本作をプレイしての感想でした。文章は読みやすく、ストーリーの流れも一応追っていける。しかし、ラストシーンが何だか腑に落ちない、というか、良く分からない。けど、強烈なインパクトがそこにはあり、独特の引力も存在している、と思うのです。


ちなみに、作中で主人公が展開する思考は、所謂「抑止論」です。
つまり、「チャイルドポルノを供給し、欲望の捌け口を作ってやる事で、『実際の犯罪』を抑止しているんだ」という考えです。

冷静に考えれば、これには問題があります。
「確かに、チャイルドポルノの供給により、実際の犯罪は抑止出来るかもしれない。しかし、そのチャイルドポルノの被写体の女の子は、みんなの犠牲になるって事なんじゃないの?」というような、問題点です。

救われる人数が多ければ、多少の犠牲は無視しても構わない、という事なのか、それとも、主人公自身が、こうした議論の可能性を考慮出来ない程、何か追い詰められているという状況なのか……決定的な答えは出せないのですが、読んだ人間に対して、何かモヤモヤっとさせる、そういう作りになっている事は確かでしょう。


掲示板なのかツイッターなのか定かではないのですが、主人公が自身の行動や考えを表明する場があり、それに対して、レスをつける人がいる、という場面が何度か出てきます。
そのレスというのが、また困った事に、「妹を無理やり犯して屈服させちまえ!」というようなものでしてw
で、現実の掲示板とかでも、そういう事を書く人っていますよね。けど、それって「ギャグ」で書いてるんじゃないでしょうか? それに対して、「妹にんな事できねーよwww」みたいな、そういうレスが来る事を折り込み済みで、謂わば「遊び」としてのやり取り、だと思うんです。

しかし、本作の主人公は、そこで、そういうレスに対して、一々真面目に受け取り、考え込んじゃうんですよ。
ギャグとしての発話に対し、シリアスに受け止めていく……こういう認識のズレが、作品の(ギャグ的な)面白さであると同時に、主人公の性格的というか内的な問題をあぶり出しているような、そんな気がしました。


色々気に掛かる部分はあるんです。
例えば、主人公の妹「ありさ」は、小学五年生、六年生でありながら、その発話はかなり大人びたものですし、小学生じゃ使わない(使えない)ような言葉もポンポン使って、兄貴を罵倒します。
こういう部分から、妹ありさの存在に、何かを見いだそうとするのも一つの作品の楽しみ方だとは思うのですが、私の手には余るので、深入りは避けましょうw


もしかすると、「チャイルドポルノ」は表象というか、いくらでも付け替え可能な「服」みたいなもので、根本に、チャイルドポルノも包含する、何か「本当に描きたいもの」「本当に主張したい何か」があるのかな? なんて事は考えましたね。


云ってしまえば、良く分からない作品です。
そして、強烈に人を選ぶ作品でもあります。
けれども、他にあまり類を見ない、熱量と、インパクトを持った作品でもあります。

本当に、「一般的な評価」を下しにくい作品で、読者がそれぞれ、感じたものが、それぞれの評価になる、という、ちょっと逃げを打って、本稿を〆たいと思いますw



それでは、また。



/* 以下、宣伝

私達が運営している、ノベルゲーム制作支援サイト(素材ポータルサイト)、Novelers' Materialなんてものがあるので、良かったら、利用してやって下さいませ~ 素材作者さんも大募集です!

http://novelersmaterial.slyip.com/index.php

リニューアルも完了し、より使いやすい素材ポータルサイトになっております。

以上、宣伝 */

# by s-kuzumi | 2015-01-10 15:46 | サウンドノベル | Comments(4)
2015年 01月 01日

謹賀新年

道玄斎です、こんばんは。
お正月とはいえ、ちょっと忙しくて更新がこんな時間になってしまいました。



■謹賀新年

改めまして……。

明けましておめでとうございます。
旧年中は大変お世話になりました。本年も何卒宜しくお願い申し上げます。


旧年中は、色々公私に渉り忙しく、中々自分のやりたい事に時間を割けない状態が長く続いていました。
ノベルゲームのプレイもその一つです。

しかし、コメントを下さる方、メールを送って下さる方に励まされ、まぁ、物凄く低調ではありますが、少しづつでもゲームを遊ぶ事が出来たのは、嬉しい事でした。

ゲームのプレイこそ、あまりはかばかしく無かったのですが、旧年は、私が手すさびで作ったBGMを使って下さっている作品(或いは私にオーダーして下さった作者さんにも!)にちょこちょこ出会えたのも、嬉しい出来事です。
メロディアスで、一曲の中にキチンとアップダウンがあり、完成度の高いもの……を作りたい、という欲望はあるのですが、腕前(知識?)が今ひとつだということ、自分の好みが、あまり主張せず、縁の下の力持ち的に作品を支える、まさに「BGM」にあるということにより、そんな感じのものを旧年中は作っていました。

大晦日にも、一曲アップしたのですが、「いつもと同じじゃねーか!」という声が聞こえてくる中で、自分なりの拘りというか、そういうものも込めたものを作ったつもりですw


BGM制作のお話のついでに、私達の運営している、参加型素材ポータルサイト、Novelers' Materialについても、ちょこちょこっと。

先年のリニューアルが好評で、ホッと胸をなで下ろしているのですが、今年は、更に便利に、面白く且つ役に立つ機能も盛り込む計画が水面下で進んでいます。
どうぞ、本年もちょこっとNovelers' Materialにもご注目下されば、と思います。


さてさて、大分色々書いてしまったのですが……簡単に云うと、「本年もどうぞ宜しくお願いします!」ということですw

今年は、少しのんびりとゲームを楽しむ余裕くらいはあればいいなぁ、と願いつつ、筆を擱かせて頂きます。



それでは、また。


皇紀二六七五年 正月 
         道玄斎敬白

# by s-kuzumi | 2015-01-01 20:07 | 日々之雑記 | Comments(2)
2014年 12月 19日

フリーサウンドノベルレビュー 『ウェザーウィッチ 気象魔女の夏』

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今日の副題 「魔女は飛ぶものです!」

ジャンル:ファンタジックADV
プレイ時間:初回は20分程度。トータルで1時間くらい。
その他:選択肢アリ(但し、実質一本道みたいなもの)
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2011/5/14(Ver.1.00、本レビューはVer.2.02にて)
容量(圧縮時):59.0MB




道玄斎です、こんばんは。
忙しさがピークに達している今日この頃ですが、ノベルゲームに飢えて飢えて仕方ないので、ついに遊んじゃいました。たまたま、物凄くテンポの良い作品に出会えて、しかも、ちょっと優しい気持ちになれるような、そういう作品だったので、ご紹介致します。
というわけで、今日は「藍恋工廠」さんの『ウェザーウィッチ 気象魔女の夏』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・気持ちよくプレイ出来る抜群のテンポ感。

・しかし、意外にも重層的な物語の構造。


気になった点

・Extraのストーリーは、上手く本編に織り込んでも良かったのかも。

・テンポの良さと裏返しに、やや情緒的な面が足りない部分も。

ストーリーは、ふりーむから引用しておきましょう。
気象を司る魔女が、気象制御中、事故で落下し、地上人に姿をさらしてしまう。
そのことが原因で左遷されるのだが、その先でまた、同じような事故が起こり……

クリア後に有効になる選択肢により、物語は二つに分岐します。
プレイ時間は全部で1時間半程度です。

こんな感じ。



さて、以前ご紹介した事がある『娘子隊皓旗』の作者さんの作品です。
ちょっとファンタジックで、心温まるような、そういう作品でした。

あとがきを読むと分かるのですが、「気象+魔女」という組み合わせの面白さを発見し、それを物語として作っていった、という事のようです。

確かに、巷に溢れる「魔女」というのは、かなりステレオタイプでして、攻撃的な超自然的な力を行使でき、退廃的だったり、妙にミステリアスな造型だったり……という事が多いのですが、本作に出てくる「気象魔女」、フィレルは明るい「女の子」というような感じですし、一般にイメージされる「魔女もの」とは一味違う作品になっている、と云えるでしょう。

この「気象魔女」が、本作のオリジナリティの柱だと思うのですが、実は「天候魔女」と呼ばれる存在は「実在」していました。
……と、この事を突き詰めていく為に、少しだけ久しぶりに脱線させて頂きますw


そもそも、魔女ってなんでしょう?
史実との接点、という所では、やはり「魔女狩り」で摘発された人々、というのが第一にイメージされてきますが、ご存じの通り、「魔女狩り」で摘発され、結果処刑されてしまった人々の中には、男もいますし、実際には冤罪だらけだったわけです(当たり前ですね)。

ただ、その初期の段階では、「こいつは、どうも魔女じゃないか?」と思われるような、疑わしい女性が摘発され、それが「魔女狩り」という大きなムーブメントになっていったわけです。
つまり、「魔“女”」ですから、最初は「女性」が魔女と目され、その後、概念が拡大していったのです。

問題は、どんな女性が魔女とされたのか、という所なんですが、これには二つの系統があります。
一つは、「薬草などの知識が豊富で、占いなども行う女性」の系統です。独自に伝承された医学的・薬学的な知識を持ち、占いなどの神秘的な分野に通じていた人々ですね。

例えば、『魔女の宅急便』の映画を見ると、キキのお母さん(彼女も亦魔女なのです)が、薬を調合しているシーンが描かれています。これは、まさに第一のタイプの魔女の姿です。

もう一方のタイプの魔女は、、「共同体の中での嫌われ者や、社会的な弱者」の系統です。
前者と比較して、「神秘=魔的」な力こそ、あまり感じさせないものの、或るコンテクストに於いて、「有害」と見なされていた人々、と云えましょう。

この二者を比較すると、私達が一般に思い浮かべる魔女は、やはり前者の魔女の系統、という事になりましょうか。


さて、肝心の天候魔女、なんですが、どうも、やはりそれも前者の系統なんじゃないかな、と思います。
本作に於ける気象魔女というのは、「自然現象」として私達が受け止めている、降雨や嵐、或いは快晴、虹などを管理する存在です。そこに「善悪」の概念は存在せず、基本としては、予定表に従い、粛々と気象を管理していく、というのがその姿のようです。
しかしながら、自分達の気象管理によって困る人々がいる、という部分で、主人公フィレル等が悩むシーンもあり、気象魔女のあり方そのものに一歩踏み込む描写もある、とお伝えしておきましょう。

それはさておき、「実在」の天候魔女とは、ズバリ、「悪天候を呼び寄せ、作物の実りを悪くしたりする存在」です。つまり、「天候魔女」という事で告発され、処刑された人もいた、という事です。
この天候魔女は、やはり天候を操る、という神秘的な力を持っている為、私は一番目のパターンの魔女のヴァリアントだと思いますよ。

長々と説明してきましたが、実は天候・気象を操るとされる「魔女」がいた、というのは事実なんですね。
ただ、まぁ、説明した通り、本作の「気象魔女」というのは、そこに「善悪」の基準や指針があって、天候を操っているわけではなく、「仕事」として天候の管理をしている、という造型で、それ故、自らの引き起こした天候によって苦しむ人々を見て、心を痛める事もあるわけです。


物語は、前述の通り、淀みなく、流れるように進んでいきます。
本当にテンポ良く、気持ちよくプレイ出来る、というのは物凄い高ポイントなんですが、一方で、「ここはもうちょいじっくりと描写しても良かったかな」と思える所もあるのです。

その一つが、今お話した、「気象を操る事によって、人々を苦しめる事がある」という問題です。
気象魔女の存在そのものに関わる重大な問題だと思うのですが、その悩みは、フィレル達の感情を揺さぶり、行動の発端にはなるんです。
けど、その問題に対して、フィレル達は何か自分なりの結論を出す、という事はないんですよね。云うなれば、その問題は、サラリと流れて行ってしまうわけです。

気象魔女というオリジナリティと、そのオリジナリティ故に生じる悩みなので、もうちょっと掘り下げて描写されても良かったかな、と。
また、悲しさなら悲しさ、嬉しさなら嬉しさを、もっとジックリと表現する部分、つまり情緒的な表現が少し物足りなかったかな。


一方で、作品は相当重層的に出来ています。
そこの厚みに関しては大いに評価したい所。
ネタバレになりそうなので、少し自粛しながら話すと、気象魔女達が積み上げてきた「物語」が、物語前史としてあって、その上に、本作の一番の主人公という立ち位置のフィレルの物語が載っかっている、という作りです。

勿論、その物語前史は、ちょくちょくと顔を出し、或いは仄めかされたりして、フィレルの物語を楽しみながら、自然と、その深さを感じられるようになっています。
で、取り敢えず本編を読了すると、Extraの一つとして、物語前史そのものを読む事が出来るようになっていました。

まさにExtraに入るに相応しいお話なんですが、私は、何となくのレベルで、「これ、本編に上手いこと溶け込ませちゃった方がグッときたかも」と思ってしまったんですよね。

本編があって、そこでの物語に決着が着く。
その本編を補完するようなExtraがある。
Extraを見ると、本編の内容が良く分かる。

って事なんですが、それだったら、最初っから本編に、Extraの内容を織り込んでしまえば、本編のラストでもっとガツンとインパクトがあったんじゃないかな、と。


私はこうやってお気楽に書き飛ばしてますけど、実際にやろうと思ったら結構大変だというのも分かりますw
だって、時間軸が違うわけですから、場面を上手く変えてやる必要があり、また主人公も違うわけで、視点の管理も必要になってきます。

上手く出来れば、効果的かもしれませんが、実際に上手く出来るかどうか、は分からない。
まぁ、何となく私が感じたこと、って事でご容赦下さいませ。


イラストはついていませんが、そこが却ってプレイヤーのイマジネーションを掻き立てますねぇ。
最近は、スマホ向けのノベルゲームなんてのも良く目にするのですが、「イラストがない」とか「イラストが綺麗じゃない」とか、そこのビジュアル部分が評価軸になっている、そうしたレビューを良く見かけます。
そうした意見だって当然あるとは思いますが、そこがそのレビューの主軸になっちゃうってのはなぁ……と、常々思っています。

優しい気持ちになれるような、そして同時にスピード感のある作品を探している方は、是非プレイしてみて下さい。


今日は脱線多めでしたけど、こんなところで。
それでは、また。



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# by s-kuzumi | 2014-12-19 20:19 | サウンドノベル | Comments(2)